<JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ 最終日◇24日◇宮崎カントリークラブ◇6497ヤード・パー72>
スタート時にあった3打の貯金は1打にまで目減りした。一瞬だったが、首位の座も明け渡した。でも、勝った。2021年6月の最終プロテストに合格し、9月にツアーデビュー。111試合目で桑木志帆が国内メジャーを初めて制した。しかも、初日からの首位を守り切る完全Vでの栄冠だった。
「まだ実感はないけど、すごくうれしい。最高です」
序盤は重たい空気が流れた。1番で2打目をグリーン奥のラフにこぼし、3番もパーオンを逃して、ボギーを重ねた。「緊張はしなかったけど、思い通りのゴルフができなかった。すごく苦しかった」。
険しかった顔つきがパッと明るくなったのは、7番のティショットを打ったあとだった。ほぼ90度に曲がる左ドッグレッグのパー4。フェードが持ち球の桑木には左サイドの松林が厄介なホールだったが、ドライバーを気持ちよく振り抜くと、トレードマークともいえるイエローの球はフェアウェイ真ん中に着弾した。
「わかった!」。打った直後に何度もコンビを組んできた門田実キャディの方を振り向いた。短い会話の間に何度も笑いながら、大きくうなずいた。「3日目からショットの調子が悪く、きょうの朝の練習も手ごたえが良くなかった。でも、7番のティショットで気がついたことがあったんです。あれから自信を持って打てるようになりました」。
途中からは2組前で回る小祝さくらとのマッチレースの様相を呈したV争いも、6番からの3連続バーディで単独首位の座を奪い返し、そのまま通算3勝目のゴールに飛び込んだ。
最終組で一緒に回った年間女王の竹田麗央は、来季から主戦場を米ツアーに移す。昨季まで2年連続女王の山下美夢有、明愛と千怜の岩井ツインズ、国内メジャー3勝の原英莉花の4人は、12月に行われる米ツアー最終予選会に挑む。
ツアー8勝の竹田、13勝の山下、7勝の千怜、6勝の明愛、そして5勝の原。これらの実力者が全員最終予選会を突破となれば、日本ツアーの主役たちがごっそりと抜けることになる。それでなくとも、古江彩佳、渋野日向子、畑岡奈紗、西村優菜、勝みなみ、西郷真央、笹生優花らスター選手がすでに海外へ流出。ツアー関係者の多くは危機感を募らせている。
「また来年も日本ツアーで頑張るので、初戦からしっかり飛ばしていきたいと思います」
優勝インタビューでギャラリーに誓った21歳は、優勝会見でも力強かった。「今季は3勝もできたし、来年は自分が引っ張っていきたいと思います。調子が悪いなかでもトップ10に入れた積み重ねで、悪いなかでも優勝できると思えるようになった。それが今回の結果です」。米ツアーの草刈り場ともいえる状況になりつつある日本ツアーだが、大きく成長したプロ4年目は新たなエースとなることを宣言した。
今回の優勝で3年シードを獲得した。世界ランキングは現在の75位からジャンプアップすることは確実で、初めての海外メジャー挑戦への道も開けてきた。「来年は海外メジャーに出られるように頑張りたい」。近い将来、本格的な海外進出は頭にあるが、当面は日本が中心。年間女王の有力候補に躍り出た桑木が、来季の日本ツアーをけん引していく。(文・臼杵孝志)