<関西オープン 最終日◇17日◇茨木カンツリー倶楽部 東コース(大阪府)◇6734ヤード・パー70>
12年216日ぶりの優勝でも、“ビリケンさん”の目に涙はなかった。「ほんまに実感がないというか、そんなに感動することもなく冷静です」。
大阪で幸運の神様として親しまれる“ビリケンさん”に似ているといわれる36歳・藤本佳則が、逆転でツアー3勝目を挙げた。12年216日ぶりの優勝は、長谷川勝治(13年82日)、横田真一(13年19日)に次ぐ、史上3番目のブランク優勝記録となった。
ラウンド中も冷静さを失わなかった。首位と1打差の4位で迎えた最終日。「自分のできることをしっかりやろう」とスタートし、2番3番の連続バーディで出だしからスコアを伸ばす。
4番パー3では、同組の大堀裕次郎がホールインワンを達成して、一気に首位に浮上した。「ヤッバ、きてる。流れ全部持っていかれる。絶対持っていかれると思っていました」と大堀の派手なゴルフに気を取られたが、心中は穏やかだった。「勝負はバックナイン。そこまでにどれだけ体力を温存できるかの勝負ですからね」。久しぶりの優勝争いを感じさせないメンタルだった。
自分の出来ることを淡々と続けると、13番を終えて単独首位に立った。17番パー4でラフからの2打目を「上手いこと打ちました」と5メートルにつけてバーディ。2打のリードで18番を迎えた。
このホールはフェアウェイ左サイドに池が広がり、この日は左からの風。フェードヒッターの藤本は「池に近い方に打ち出さないといけないから、めっちゃ難しいです」。それでも自分を信じてドライバーを振り抜き、フェアウェイをとらえた。「18番のティショットがウィニングショットですね。緊張した場面でもフェアウェイにいったのは成長したと思いましたね」。バーディ、ボギーで並ばれる可能性のある場面だったが、自画自賛の一打で優勝を決定づけた。
ルーキーイヤーの2012年に「日本ゴルフツアー選手権」で初優勝を遂げると、翌年も優勝を挙げる。その後、何度も優勝のチャンスはあったが、競り負けることが多かった。2020年には左肩に大量に水がたまって痛みが出たり、左手首を負傷したり、まともな感覚でスイングできない時期があった。デビュー当時の勢いは徐々に失われ、20-21年シーズンは21試合中、すべて予選落ちでシード落ちの憂き目に合った。
「自分自身はそんなに苦しいと思わないんですけど、基本的に成績が出ていないときの選手は、しんどいメンタルになります。いろいろ思うことはあったけど、本当に諦めずにやってこられたのは、ゴルフが好きという気持ちがあったから」
不調に陥ってもトレーニングは欠かさず、大学時代から師事する阿河徹コーチとの二人三脚の歩みは止めなかった。いまは「クラブを遅らせ、上体を先行させて左に振り抜く、みたいな感じ」で逆球が出ないフェード一辺倒のゴルフを確立した。
今大会はグリーンが硬く仕上げられ、狭いフェアウェイから攻めることが攻略の糸口。4日間のフェアウェイキープ率は64.286%で2位タイの数字を残した。「たまたまでしょうね。みんな真っすぐ打つ練習をして、フェアウェイを狙っているので。行く日もあれば行かない日もあるので、きょうはたまたま運が良かっただけ」と話したが、18番のウィニングショットを筆頭に、この数字は今後の自信にもつながるはずだ。
昨季の下部ツアーポイントランキング上位の資格で前半戦に出場している。レギュラーと下部のかけもちでスケジュールを組み、シード復活が大きな目標だった。2戦前の「前澤杯」で7年ぶりのトップ10フィニッシュとなる3位に入ると、今度は13年ぶりの優勝。「次の目標は、まだ分からないです」と笑って話す。
ルーキーイヤーに賞金ランキング5位。15年は未勝利ながら同4位に入り、賞金王候補の呼び声も高い時期があった。この日の優勝争いでは、難度の高いコースでも相手にスキを見せないゴルフを披露し、強い藤本を印象付けた。シード復帰元年に年間王者も夢ではない。(文・小高拓)
