これまで多くの名勝負、名場面が生まれた国内女子ツアー。それらのシーンを当時の写真とともに振り返る。今回は「NEC軽井沢72ゴルフ」の2014年大会をプレーバック。
避暑地・軽井沢で熱戦が繰り広げられた。その主役を演じたのは、当時25歳のイ・ボミ(韓国)だ。
単独トップで最終日に入ったものの、1番でボギーを喫するなど、序盤は劣勢だった。伸ばしあぐねている間に、菊地絵理香、大山志保に首位を奪われた。だが、後半でようやくエンジンがかかり、3つのバーディを奪取。優勝の行方は菊地、大山との三つ巴プレーオフへと持ち込まれた。
この展開は名参謀・清水重憲キャディにしてみれば“計算通り”。前半で苦しむボミに「大崩れしなければバックナインで勝負できる」と背中を押した。トップタイで迎えた最終ホールでは「ボミはプレーオフ強いから」と安全策を提言。きっちりとパーをセーブして延長戦に突入した。
清水キャディの見立て通り、プレーオフ3戦3勝のボミは強かった。1ホール目の2打目をピン3メートルにつけると、バーディパットをしっかりと沈めて勝負あり。シーズン3勝目を挙げた。
この勝利で生涯獲得賞金は3億円を突破。86試合目での到達はアン・ソンジュ(韓国、55試合)、宮里藍(57試合)に続く史上3番目のスピード記録だった(当時)。
この記録に「すごくうれしいです」としながらも、「賞金よりも、私は韓国人なのに日本の方たちがたくさん応援してくれることのほうがうれしい」と日本のファンに感謝を述べた。「どこに行っても“ボミちゃん”と言われるようになったので、私を知ってくれている人も増えたなと思います」。抜群の人気を誇る“スマイル・キャンディ”。表彰式で持ち前の笑顔が弾けた。
同年は賞金ランキング3位に入ると、翌2015年に大ブレークした。シーズン7勝を挙げて、史上初の年間2億円を突破。最強の賞金女王となった“スマイル・キャンディ”は全国区となり、2023年に日本ツアーを引退した後も多くのファンに愛されている。