<三井住友VISA太平洋マスターズ 最終日◇10日◇太平洋クラブ 御殿場コース(静岡県)◇7262ヤード・パー70>
1打差の2位タイで最終組から出た石川遼が、5バーディ・2ボギーの「67」で回って今季2勝目、節目となる通算20勝に到達した。2010年、12年、22年大会でも最終日最終組で回り、いずれも優勝。得意の御殿場で“不敗神話”を守り、大会最多の4勝目を挙げた。
前半の3番パー5ではセカンドをバンカーに入れながらも、3打目を寄せてバーディ。ピンそばにつけるスーパーショットを披露した7番パー3からは3連続バーディを奪取し、単独首位に浮上した。
終われる立場として後半を迎えたが、そこからスローダウンした。11番で花道からのアプローチを寄せきれずに初のボギーを喫すると、13番パー3でもグリーン右奥のバンカーに入れてボギー。2組前で同じく通算20勝目を狙う谷原秀人に首位を譲る時間帯もあった。
その後はパーを重ねながら1打差で追う状況が続いたが、最終18番で谷原が3打目をグリーン上段に乗せるも、まさかの3パットでボギー。石川、谷原、河本力の3人がトータル10アンダーで首位に並んだ。
多くのギャラリーに見守られながら18番に入った石川は、果敢に2オンを狙い、約7メートルのイーグルチャンスにつける。この一打にギャラリーから大きな歓声が沸き起こった。イーグル締めとはならなかったが、バーディで勝利が決定。雨が降り始める中、空からの“ウォーターシャワー”を浴びながらグリーンを後にした。
「今までの優勝と違うと感じている。今週は、もったいない部分は2日目の後半だけで、ショットが全体的に良かった」。今季初Vを挙げた6月の「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品」はミスをウェッジでカバーして挙げた優勝だったが、今回は異なる手応えを得られる、満足のいく勝利となった。
1973年のツアー制施行後の記録によると、石川はツアー20勝達成の年少記録で5番目の若さ。最年少記録は中島常幸の30歳260日で、石川は33歳54日でランクインした。節目の勝利に「強い思い入れはない」としながらも、「この勝利自体が素直にうれしい。難しいコースで悪い流れを断ち切って、いい流れで続けられたことが収穫」。20勝はあくまで通過点。今後もどん欲に勝利を積み重ねていくつもりだ。
同一大会で4勝以上を挙げたのはツアー史上11人目。2016年の「マイナビABCチャンピオンオンシップ」で片山晋呉が達成して以来、8年ぶりの快挙となった。ちなみに、尾崎将司は11大会、青木功が6大会、中嶋常幸が3大会で4勝以上を挙げている。
土曜日は今季最多の10048、最終日も8549人のギャラリーが御殿場に訪れた。石川の勝利を待ちわびた多くのギャラリーにとってもうれしい勝利。大会アンバサダーとしての大きな期待に応えた。(文・齊藤啓介)