<三井住友VISA太平洋マスターズ 事前情報◇6日◇太平洋クラブ 御殿場コース(静岡県)◇7262ヤード・パー70>
昨年、2007年から守り続けてきたシードを手放し、今季は生涯獲得賞金25位以内の資格で参戦している小田孔明。「なんとか復活したいと思っている」。インタビューでそう述べてから、約1年が経った。
再起をかけて挑んだシーズンは、ここまで17試合に出場。トップ10入りどころか「~全英への道~ミズノオープン」の25位が最高位と厳しい戦いを強いられている。賞金ランキング上位65人に入ればシード復帰となるが、現在の同ランキングは93位(392万9703円)。来季の職場について考える時期が、再びやってきた。
だが、この結果とは裏腹にドライビングレンジではリラックスした表情で球を打ち込む小田の姿があった。関係者たちに笑いながら、「やばかったんだよ」と何やら話し込んでいる。気になり直接聞いてみると、先々週に痛風が発症し「3日間くらい歩けなかった」と明かしてくれた。だいぶ良くなったと話すが「靴が当たるとやっぱり痛い(笑)」。
「もう年ってことですよ」と明るく振る舞う46歳だが、少しシリアスな事も教えてくれた。痛風とは別に「心臓の右心房に血液が流れていないらしいんですよ」と、心臓に問題を抱えているという。
今年の4月に病院で検査をした際に発覚。痛みであったり、直接的な体への影響は今のところ無いが、医師からは負担をかけすぎないようにと警告を受けた。そうは言っても、職業はプロゴルファー。体にムチを打ってでも試合に出るのが常であり、精神的なプレッシャーなど心臓に負担がかかることばかり。大きなけがや骨折も無いと話すが、「体の外は強いのに、中は弱い(笑)」。最後は笑い飛ばす。
体調と相談しながらゴルフを続けていることもあり、「開き直れた」とここまでの成績は受け入れている。生涯獲得賞金25位以内の資格行使は一度きりということで、来季に向けて「とりあえずQTは受ける」と割り切っており、表情は明るい。「『推薦がもらえるから出ます』ということはしたくない」と自力での試合出場にもこだわる。
また、今後は「無理しない程度に試合に出てシニアにいければ」と、見据える先はシニアツアーだ。50歳まであと4年。それまでに心臓に負担がかからないよう、体調を整えていくことを優先していきたいとも話す。今大会はウェイティング1番手ということもあり、会場で待機はしていたものの出場はかなわず。そして来週の「ダンロップフェニックス」もウェイティングということで、次戦は2週後の「カシオワールドオープン」となる可能性もある。シード返り咲きへのチャンスはわずかしかないが、来季以降の“職場”については達観している。
ここで、来季の職場の話とは逸れるが、小田と会話をしていく中で使用するドライバーにある“細工”をしてあると教えてくれた。キャロウェイのドライバー『Ai SMOKE ♦♦♦MAX』の8.5度を使用しているが、特殊なスリーブが装着されている。
もともと同社のドライバーは、構えた時に右に向いて見えることがあったという。フェースアングルが真っすぐ見えるように、市販にはない『HL』と刻印がされた特別なスリーブを使用している。クラブ担当者によると、このスリーブにするだけでハーフロフト程度、寝かせることができ、スクエアに見せる効果をもたらすという。
このスリーブによって若干ロフトが“寝る”分を計算し、あえて8.5度とロフトが立ったものを使用することもうなずける。元賞金王の興味深いセッティングであった。(文・齊藤啓介)