2024年でツアーから撤退した上田桃子や25年プロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花が在籍している「チーム辻村」を率いるプロコーチの辻村明志氏。今回は昨年メジャー優勝した山下美夢有のスイングについて聞いた。
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今回は山下プロの強さについて、少し解説してみたいと思います。まず終始スイングも顔色も変えずに戦い続けたメンタルの強さ。これが、どんな状況でも自分のリズムを崩すことのない、安定したゴルフにつながっています。リズムはバランスと並ぶ、スイングにおける基本中の基本です。これは読者の見習うべき点ではないでしょうか。
日本人選手の中でもショットの正確性では群を抜く山下プロですが、その技術を支えているのは胸の回転とクラブスピードの同調だと考えています。わかりやすく言うと、常にクラブが体の真正面にある。それが山下プロのスイングの最大の特徴と言っても過言ではありません。
逆に考えるとアマチュアの方の多くは、体の回転とクラブのスピードが合っていません。胸が開けばフェースも開きますから、その時点でフェースの管理が困難になります。まったく体が回転しないのに、腕だけを振ろうとする手打ちにもなる。それが山下プロの場合、腕の振り、シャフトやヘッドの動きまで胸の回転スピードと合っているのです。あたかも肩から先がクラブであるかのような理想的な動き。身長150cmと出場選手の中でひときわ小さな体の彼女ですが、胸とクラブの動きが同調したスイングで世界と戦っているのです。これもまた方向性に悩むアマチュアには、見習うべき点ではないでしょうか。
胸とクラブスピードを同調させる具体的な練習方法としては、胸とヘッドスピードがそろうようにゆっくり素振りするのがオススメ。練習場のカゴなど四角いモノを持って素振りするのもいいでしょう。目をつぶって振れば、より体の回転と腕やクラブのスピードが実感できるはずです。
思えば2020年にプロ入りした当時から弾道計測器を持ち込んで、コーチであるお父さんと練習してきたのが山下プロでした。今はそうした機器が設置された練習場も少なくありません。スイング作りに大事なのは、ヘッド軌道とフェース角、入射角の3つです。おそらく世界でこれを一番管理できているゴルファーが山下プロではないでしょうか。自分の感覚と弾道計測器が示す数値を擦り合わせ、自分の目指すスイングを作り上げてきました。同時にそれは体が小さくても世界に通用することを証明しました。
アマチュアの皆さんにも、単に飛距離アップを追求するのではなく、胸とクラブの同調性を磨いてこの3つの安定を求めて欲しいものです。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。2025年は千田萌花と藤本愛菜をプロテスト合格に導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』921号より抜粋し、加筆・修正しています
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