PING契約のラスムス・ニールガード=ピーターセン、マチュー・パボン、マッケンジー・ヒューズ、テイラー・ムーアらが、PGAツアーでPING製の未発表ミニドラ『プロトタイプ ミニ ドライバー』を使用している。テーラーメイドやキャロウェイなど、競合他社が先行して市場形成したこのカテゴリに対し、PINGは追随するのか。本国でプロダクトデザインのディレクターを務める、ライアン・ストッケ氏に開発意図を聞く機会を得た。
これまで「カーボン複合」構造や「軟鉄鍛造マッスルバック」、「アイアンのソケット採用」などで“業界最後発”が多く、独自のブレない開発姿勢を貫いてきたPING。他社では当たり前だとしても、安易にトレンドに乗ることのない同社が、なぜ今、ミニドラなのか。流行りだした3年前に「出さないのか?」と聞くも、当時同社は即座に作る可能性すら否定していた。
■データ分析から見えた「3W」の実態
ストッケ氏は、ミニドラ開発のきっかけが他社の動向ではなく、PINGがパートナーシップを結ぶ、クラブに装着するGPS付きデータ記録・学習センサー『Arccos(アーコス)』の膨大なデータセットにあったことを明かした。
「我々のミニドライバーへの導入とテストについては、アーコスとの提携によって得られた数万~数十万件規模のメジャーなデータセットを分析した結果に基づいています。それによると、ヘッドスピードの速い中・上級者は、伝統的にティショットでしか、3Wを打っていないことが示唆されました」(ストッケ氏)
多くの熟練者が3Wを所有していても、フェアウェイから打つことは稀。また、米国のハードヒッターはドライバーで飛びすぎて突き抜けるリスクを避け、3Wを持つことが多い。ところが、3Wですら飛びすぎや曲がるリスクもあり「もっとコントロールできるクラブ」開発の必要性を見出した。
「3Wは本来、フェアウェイから打つための形状や条件に合わせて設計・調整されています。しかし、データはHSの速い中・上級者がそのようには道具を使っていないことを示していました。事実上、これは『解決すべき問題』が変わったことを意味しています」
■「ティショット専用」としての最適解
PINGはこの「HSの速い中・上級者が3Wを地面から打たない」という実態に基づき、ティショットにおけるコントロール性と一貫性を最大化するためのクラブとして、ミニドライバーの可能性を見出した。バック部にはドロー/フェードを調節するウェイトも確認でき、他社のミニドラより投影が大きくシャローに見える。
「もし、ティショットでドライバー以外のロフトの低いクラブを打つことに特化して考えるならば、通常のドライバーよりも小ぶりでシャローなフェース、そして短いシャフト長を持つクラブが、飛距離と分散(バラつき)制御の最高のバランスを提供してくれるはずです」
マッケンジー・ヒューズだけでなく、他の選手もフェアウェイから『プロトタイプ ミニ ドライバー』を直打ちするシーンも見かけるが、現在、ツアー選手と協力して行っている検証作業についてストッケ氏は自信をのぞかせる。
「プロトタイプは、中・上級者がどのように道具を使用しているかをより深く理解した上で、彼らのユースケースを満たし始めています。アーコスのデータを使用して、将来的に市場に投入する可能性のあるクラブデザインについて、情報を得た上での決断を下せることは素晴らしいこと。
ただ、ヘッドスピードの遅い人たちもテストして本当に大きな性能か?というのもまだ分かりません。そうしたところもまだテスト段階で、常に開発の中でプロトタイプというのがあり、テストは継続的に行っています。世の中に出すか出さないかというのはまだ全く分からない状況ですね」
流行を追うのではなく、あくまでゴルファーの「現実のプレー」をデータで突き詰め、そこにある課題を解決する。PINGのミニドラ開発の裏には、ブランドの徹底した「好奇心」と、実利に基づいた合理的な理由が存在していた。(編集部M・K)
