<全米プロ 最終日◇17日◇アロニミンクGC(ペンシルベニア州)◇7394ヤード・パー70>
アーロン・ライ(イングランド)が歴史的な優勝を飾った。メジャー13度目の挑戦で全米プロ初制覇。ローリー・マキロイ(北アイルランド)、ジョン・ラーム(スペイン)、スコッティ・シェフラー(米国)らビッグネームが並ぶ優勝争いのなかから抜け出し、31歳が新たなメジャーチャンピオンに名を刻んだ。
勝利までの過程もまた歴史的だった。ライは今大会を「70」「69」「67」「65」でプレー。ラウンドを重ねるごとにスコアを伸ばし、全米プロ史上初めて4日間連続でスコアを伸ばし優勝した選手となった。メジャー全体でも1998年「マスターズ」を制したマーク・オメーラ(米国)以来となる快挙だ。
さらに1919年に大会を制したジム・バーンズ以来、107年ぶりとなるイングランド勢の全米プロ制覇にもなった。
「きのう、ここで聞くまで知らなかった。でも、本当に誇りに思う」。優勝会見では、歴史的記録について問われると笑みを浮かべた。「この100年以上の間に素晴らしいイングランドの選手たちが数多くいた。その中で自分が達成できたことは、とても特別なこと」。
最終日は前半にスコアを落として一時後退したが、後半に猛チャージ。9番パー5でイーグルを奪うと、11、13、16、17番でバーディを重ね、ラスト10ホールを6アンダーで駆け抜けた。混戦だったリーダーボードから一気に抜け出し、ラーム、アレックス・スモーリー(米国)に3打差をつけた。
大混戦の優勝争いのなかでも冷静さを保てた理由については、「コースがそうさせた」と語った。「少しでも集中を切らしたらすぐに罰を受けるセッティングだった。だから目の前のショットに集中するしかなかった」。
その落ち着きは、幼少期から築かれていた。ライはインド系の父とケニア系の母のもと、イングランドで生まれ育った。父はライのために仕事を辞め、幼い頃から練習に付き添った。母は複数の仕事を掛け持ちしながら家計を支えた。
「父は毎日練習に付き添ってくれたし、母も長時間働いて支えてくれた。言葉では表せない」
両手にグローブをつけ、アイアンカバーを使用する独特なスタイルでも知られるが、それらも父がきっかけだ。2枚のグローブは、あるメーカーから送られたもので、子どもの頃からずっと着用している。ある日、父親が1枚を忘れてしまったところ、片手だけではうまく打てなかったという。
「グリップの感覚がまったく違った。それ以来、ずっと2枚です」
アイアンカバーも父の教えから生まれた。高価なクラブを買ってもらった7歳の頃、「道具を大切にしなさい」と教え込まれた。使用後にはクラブを丁寧に拭き、ベビーオイルで磨いてサビを防ぎ、カバーをつけていた。
ベビーオイルはやめたが、アイアンカバーだけは今も残っている。「自分のやる理由を理解しているし、信じている。だから変える理由がなかった」。
タイガー・ウッズ(米国)のVHS映像を週に2~3回見続けていた少年は、いまメジャーチャンピオンになった。「まだ実感はありません」。そう語った31歳が、新たな歴史の扉を開いた。
