先週行われた日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の最終プロテストでは、新たに26人のルーキーが誕生した。うれし泣き、悔し泣き、さまざまな思いがこもった涙が入り混じる会場で印象に残った、合格までのストーリーを紹介する。
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日本女子プロゴルフ協会の最終プロテストでは今年も多くの選手が涙とともに合格を喜んだ。3度目の最終プロテストだった24歳の山口すず夏もその一人。ただ他の選手と違うのは、彼女がすでに米国女子ツアーでプロとしてのキャリアをスタートさせていることだ。
山口は古江彩佳らとおなじプラチナ世代。最終プロテストの直前でツアー優勝を果たした古江を含め、西村優菜、安田祐香ら、他の同世代が2019年秋に行われたプロテストに向かったのとは違い、18年末のQシリーズを経て、19年シーズンから米国に渡った。目指したのは結果的には1年延期された2020年東京五輪出場。日本のプロテストからでは到底間に合わないが、19年の開幕から約1年半、米女子ツアーで大活躍すれば、日本代表になれる可能性はあった。
しかし、待っていたのは厳しい現実だった。ルーキーイヤーは開幕から出場7試合で5度の予選通過を果たしたものの、以降の12試合はすべて予選落ち。20、21年は合計で18試合に出場し、予選通過は1度だけだった。
米国から撤退し、日本に戻ってからも苦しい時期が続いた。21年は最終プロテストで3打及ばず不合格。「プロテストを受け始めてからテストがすべてみたいになって、プレッシャーがすごくて、辞めたいと思ったこともありました」。声を詰まらせながら、ここまでを振り返った。2次で敗退した22年は最も辛かった時期。「イップスとまではいかないですけど、ずっと調子が悪くて、テストも半分無理だなという気持ちで受けていました」。どん底でも踏ん張り続けられたのは、信じて応援してくれる家族の支えがあったからこそだった。
今秋は日本のプロテストに合格したのと同時に、米女子ツアーのQスクールでも12月のファイナル進出が決定済み。日本のQTと合わせて、来季の主戦場を決める大事な戦いが残っている。「アメリカの試合で勝ちたいというのが一番なので、プロテスト合格は通過点にしたい。Qスクールとプロテストが続いたので、日本のQTに向けて休養を取って、飛距離が落ちているのでトレーニングも頑張りたいです」。大きな目標に向かって挑戦する姿勢は高校3年生のころと変わっていない。
ルーキーの中では圧倒的な経験の持ち主。「見えないところで日本のプロテストを受けておけば良かったのにと言われることもあったけど、世界最高峰の舞台でプレーしたことは無駄ではないし、今回にもつながっているなと思っています」。主戦場が日本になるのか、米国になるのかは分からないが、苦しんだ6年間の経験は今後に必ず生きるくるはずだ。(文・田中宏治)