<ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 最終日◇10日◇茨城GC西コース(茨城県)◇6718ヤード・パー72>
新たにメジャー優勝者のひとりに名を連ねた河本結は、緊迫の優勝争い中も静かに自分のゴルフに集中した。13番、14番でボギーを叩き、トップに並ばれたことを把握したのは15番グリーン。だがここも、「愛さんが(同じスコアに並んで)フィニッシュしてるのを見ましたけど、特に(心境は)変わらなかった」と、涼し気に振り返る。そこに、デビューした頃の“面影”はない。
「戦い方を覚えました。昔はファイターみたいにいけいけドンドンで、それで痛い目にも遭ったし、いいこともあった。でも今は冷静に。いいことばかりだけでなく、いろいろと想定できるようになりました」
2018年のプロテストに合格すると、同年には下部のステップ・アップ・ツアーで4勝を挙げ、賞金ランク1位に輝いた。19年には「アクサレディス」でレギュラーツアー初優勝。さらに翌年には米国ツアーにも参戦した。とんとん拍子にキャリアを積んでいたこの時の河本は、“勝ちたい”という気持ちを前面に出し、敗れれば悔し涙。まさにファイターだった。
しかし、今は「メジャーに勝った実感はなく、目の前の一打に集中してプレーしていた」「(勝ちたい気持ちは)全然出てこなくて、やるべくことをやれば勝てると思っていた」など“大人のコメント”が並ぶ。その転換期について聞かれると、こう振り返る。
「アメリカに行って、すごくつらい時期を過ごした。記憶がないくらい。23年に、成績が出なくて(シーズン途中で)ステップに格下げになったりした時の経験が、底力になったと思ってます。今の自分につながっている。大人になれたし、冷静に勝負に挑めるようになりました」
この23年にはメンタルトレーニングを取り入れ、その効果は「ゴルフとすごく向き合えている」という今につながる。同年はレギュラーツアー31試合に出場しながら、特に春先から夏場にかけ予選落ちの文字が目立ち、決勝を戦ったのはわずか12試合。ステップ・アップ・ツアーにも5試合出ている。「ステップの時はメンタルも上がってきていたけど、その手前頃、アメリカから帰ってきて、予選も通れない時期はやばかったですね」。苦い経験が糧になっている。
今もメンタルトレーニングを続け、読書で知識を蓄えながら、心を整える。試合中の食事はアスリートフードマイスターの資格を持つマネジャーが作ったものを食べる。「軸を意識して」歩き方にも気を使う。「準備が大事。トップ選手はみんなトレーニングも練習もするし、食事にも気を使う。それ以上のことをやるとすれば日常生活のことしかない。ゴルフ以外のところでゴルフはうまくなれるし、強くなれる」。この信念のもと、節制を続けている。
技術面では、100ヤード以内のショットを「生命線」とし、時間を割く。その他、「スイングがフェードというより、ほぼスライスだったので、つかまえた球、左ピンに対してしっかり打てる球に取り組んできた」とショットの質にもこだわる。持ち球はフェードだが、左ピンに対してはドローで狙い、チャンスへの最適解を導き出す。
この日、再び単独首位に並んだ17番の3打目は、残り86ヤードを58度で左に切られたピン30センチにつけるスーパーショットになり、手ごたえを覚えた。さらに無理にグリーン近くを狙わなかった2打目を「すごく大人になった」と評価する。「何年もやってきたことが、身になってるんだなと思えた。成長を感じられたのがうれしかったですね」。
静かな口調で語られる目標は「年間女王」になること。そこに到達するために逆算したものが、今の「ゴルフに向き合う」日々を形作っている。ただ、ストイックに突き進む姿勢は、当時となんら変わりはない。メジャー優勝はあくまでも通過点。ファイターから大人へ。27歳になった河本結は、これからも凛とした表情で歩みを進めていく。(文・間宮輝憲)
