<Sansan KBCオーガスタ 2日目◇23日◇芥屋ゴルフ倶楽部(福岡県)◇7274ヤード・パー72>
「久しぶりすぎて緊張します(笑)」。報道陣の前に立った35歳の片岡大育は、照れくさそうに笑った。初日に5アンダー・6位タイで滑り出し、2日目は7バーディ・1ボギーの「66」をマークしてトータル11アンダー。2017年「カシオワールドオープン」の第1ラウンド以来、7年ぶりの単独トップに立った。
先週のオープンウィークで念入りにスイング調整を行い、復調のきっかけをつかんだ。「ショットが一気に調子良くなって。初日は恐る恐るだったんですけど、(2日目は)自分のイメージ通りの球筋で打てている。すごくいい組み立てができています」と試行錯誤しながらスイングを修正し、持ち球のフェードが輝きを取り戻した。
最後の優勝は2017年「アジアパシフィックダイヤモンドカップ」までさかのぼる。そこから長く苦しい時間を過ごしてきた。「ずっと調子がめちゃくちゃ悪かった。もう、本当に…。イップスかと思うぐらい」。
2013年から維持していたシード権は2019年に失った。同年あたりから持ち球のフェードが打てなくなり、「左にフックしてしまうショットが多くて。本当にゴルフにならなかった。いいスコアが出てもたまたま。気持ち悪かった」。これまでは“再現性”とはほど遠いプレーだっただけに、今季初の2日連続60台は大きな自信になる。
今週の相棒は63歳の父・和人さんが務める。「僕がデビューしたての頃にキャディをしてもらったことがあって。今年久しぶりにツアー選手権で」と、今年5月に約15年ぶりの親子タッグを結成。それまではロープの外から息子を見守っていた和人さんだが、「どうせ見に来るんやったら、キャディしたらええやんって感じで。車の運転もしてくれる。めちゃくちゃ楽やなと思います」(片岡)と支えになっている。
「オーマイガーって感じだね」とおだやかな笑顔を見せたのは和人さん。これまで苦しむ息子の姿を見てきたからこそ、この2日間の結果に復活の気配を感じている。「どうしても本人が落ち込んで、キッカケをつかめずにいたもんで。自分で取り戻したと思います。とてもいい調子になってきた。やっと戻ってきました」と目を細めた。
和人さんは甲子園ベスト8まで進んだこともある元高校球児。チーム内で声がけをしていた高校時代のクセがつい出てしまうことも。「クセでどうしても声をかけて、いらんことを言っちゃう。『うるさい』とかって言われますよ。そういう時は流したりして。『冗談や』ってね」。親子ならではのかけあいで、明るいムードを作っている。
今季はこれまで10試合に出場し、予選通過は1度だけ。賞金ランキング115位、リランキングは41位にとどまっている。次週の「フジサンケイクラシック」終了時にリランキングが行われるとあって、今回のチャンスは絶対にモノにしたい。
シード復帰、そして7年ぶりVへ。片岡親子が道を切り開いていく。(文・高木彩音)