<ソニー 日本女子プロゴルフ選手権 2日目◇6日◇かねひで喜瀬カントリークラブ(沖縄県)◇6670ヤード・パー72>
8月6日に行われた予選会(関東会場)を突破し、今大会で唯一「ティーチングプロフェッショナル資格 A級」の肩書で出場する選手がいる。古家翔香は見事なカムバックで予選通過ラインをクリアした。
スタートホールの1番パー4では、いきなりビッグプレーが生まれた。フェアウェイから残り136ヤードの2打目を8番アイアンで振り抜くと、グリーンから“カラン”という乾いた音が聞こえてくる。「見えなかったんですけど、ボランティアの方たちが『入った』と言ってくれたので、入ったのかな~という感じでした」。手前のカラー付近に着弾したボールは6ヤードほど転がりカップイン。このショット・イン・イーグルには「まさか入るとは思わなかった」と、目を丸くするしかなかった。
するとこれが号砲になったかのように、そこから3つのバーディを追加。さらにボギーフリーのラウンドで「67」を記録した。初日の2オーバー・95位タイから、トータル3アンダー・29位タイまで飛躍。「きょうは3メートルくらいのパッティングや、1.2~1.5メートルのパッティングが決まってくれました」と、耐える場面は耐えての急浮上だった。
1999年生まれの24歳は、もともとツアープロ志望。東京・代々木高校出身で、2018年から日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のプロテストを受けている。ただ昨年も5度目となる最終テストで不合格になるなど、ここまでに6度、涙をのんできた。
それと同時並行で、2度目のテスト後からティーチング資格取得にも乗り出し、約3年の時間をかけ昨年ついに会員になった。そして上位15人にQT1次の出場権が与えられる昨年の「JLPGAティーチングプロ競技会」で1位になり、QTランク180位で今季のツアーにも出場している。
「あまり下手なことをすると“ティーチングの人”って言われてしまう。周りはいい方たちばかりなので、そう思って欲しくない。だからちゃんとしないと」
そんな気持ちを胸に、ツアープロの舞台で戦っている。ティーチングプロの仲間たちからの応援の言葉もその背中を押す要因だ。『ティーチングプロとしての知識が自分のラウンド中の修正で役に立つことは?』と聞かれると、「“欲をかく自分”と“冷静な自分”で対話をしよう、というのは意識するんですけど、まだティーチング活動もあまりしていないので、その視点で見ることはないですね」と苦笑い。コースで戦っている時は、あくまでも“ひとりのプレーヤー”だ。
今季はここまでステップ・アップ・ツアー8試合に出場し、すべてで予選を通過。「フンドーキンレディース」3位などの成績を残している。そして今年もプロテストの季節がやってきた。昨年、最終まで進んでいるため、来週10日から静ヒルズカントリークラブ (茨城県)で行われる第2次予選(A地区)からの参加。この試合を4日間戦ったうえで、今年最初のテストに臨めることも「いろんな試合を今年は経験できている。一日(競技)の試合ばかり出ていた去年とは違うし、試合の流れが作りやすいです」とプラスに働きそうだ。
「おばあちゃんになっても、ゴルフはずっとできる。その年齢に合わせてレッスンができるし、プレーヤーでやっていくことで、いろんな人の気持ちも分かる。そういう意味で生きてきますね」。今はツアープロになるため全力を注いでいるが、ティーチングの資格ももちろん大事にしていく。
アマチュア資格を放棄した選手は、原則JLPGA会員にならなければ試合に出られないのが現在の規定。いわばティーチングプロになったことで開いた、メジャーの扉でもある。「楽しみたいのが一番。ここでプレーできているのが私的にはすごくうれしい。幸せな気持ちを噛みしめながら、いいスコアであがれれば。ここにいられることが、すごくうれしいんです」。ツアープロ最高峰の舞台を、さらなる飛翔へのステップにする。(文・間宮輝憲)