先週の「Sky RKBレディスクラシック」で、今年も恒例イベントが開催された。ギャラリー投票で決まる「ベストスマイル賞」には小祝さくら、「ベストドレッサー賞」には河本結が選ばれた。
いつも穏やかな笑みを絶やさない小祝は、同じ北海道出身で今大会7位だった政田夢乃に52票差をつけ、3年連続の受賞。ウエアに合わせたリボンがトレードマークの河本は、吉田鈴に115票差をつけて2年連続の受賞となった。
「ほけんの窓口レディース」時代の2013年に始まった同賞も今回で13回目(20年は大会中止)、これだけ回数を重ねると、こういう人気投票も時代を映し出す貴重なデータになってくる。SNSなどを利用しない人たちの声も反映されるアナログ感は嫌いではない。会場まで足を運んでくれるゴルフファンのリアルな支持率には説得力もある。
第1回の13年はベストスマイル賞に横峯さくら、ベストドレッサー賞に木戸愛が選ばれた。当時を思い出せば納得のふたりだ。14年のベストスマイル賞には、来日4年目のイ・ボミ(韓国)が初選出。15年からは5年連続で2冠に輝き、14、15年には大会連覇も達成。“スマイルキャンディ”の人気は絶大で、絶対的に強かった。
21年大会を途中棄権したのが最後の出場となったボミは、23年シーズン限りで現役を退いた。その後は西村優奈、原英莉花、吉田優利が票を集めた。この3人が主戦場を米国に移したあとは、小祝、河本が支持されているわけだが、ファンは見た目だけで選んでいない。きちんと実績を加味しての人気投票。だから、これからが気になる。
ボミは稀有な“つよかわ”だった。日本語を一生懸命に覚えて、通訳なしで取材対応できるまでさほど時間はかからなかった。人懐っこい性格で、いつも笑顔。ファンを大切にし、誰からも愛された。
ある試合を取材したときの電車で、隣り合わせたご婦人2人の会話が耳に入ってきた。「昨日、ボミちゃんと目があって手を振ったら、『お久しぶりです』と笑ってくれたのよ。うれしかった。でも、本当に私のこと覚えていたのかしら」。
熱心なファンで、この日も早朝からトーナメント会場に向かっていたのだろう。話を聞いていたお仲間も半信半疑の様子だったが、そんな2人にこう言ってあげたかった。「間違いなく覚えていたと思いますよ」と。
こんな話もある。久しぶりに女子ツアーの取材に来た某スポーツ紙記者にボミはこうを言った。「お久しぶりです。あれ、メガネが変わりましたね」。当たりだった。その記者の心がわしづかみにされたのは、言わずもがなである。
そういうエピソードはいくつもある。ツアー通算21勝。15年には国内女子ツアーで史上初の年間獲得賞金2億円を突破し、初の賞金女王に輝いた。5勝した16年も女王の座を守った。
強く、愛らしく、フレンドリーな性格。無欠のヒロインは間違いなく、女子ツアーの隆盛を築いた功労者の一人だ。
第2のボミは現れるのだろうか…。すべての試合が有観客となった“アフターコロナ”の22年以降、シーズンの1試合平均観客数は1万1000人前後で推移している。宮里藍、渋野日向子、ボミらの活躍で沸いたころは1万5000~1万7000人を動員したシーズンもあったが、今は客足が戻る気配も要素もないのが現状だ。
00年以降、ラウンド別最多観客は、05年「日本女子オープン」最終日の2万1018人。次いで09年「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」最終日の1万6672人。05年は初日から首位に立った宮里が完全優勝、09年は横峯さくらと賞金女王を争った諸見里しのぶが2週連続優勝した試合だった。
22年以降、1ラウンドで観客が1万人を超えた試合は、「ワールドレディスサロンパスカップ」だけ。23年大会初日と24年大会2日目の2度しかない。
ジリ貧の横ばい状態をどうやったら右肩上がりにすることができるのか。ベストスマイル賞やベストドレッサー賞のようなイベントをバージョンアップさせて集客につなげたり、入場チケットの値下げや無料化があってもいい。でも、問題を根本的に解決できるのは、ツアーの主役である選手たちの奮起しかない。
小粒感が否めない現在のツアーで、現状を打破できそうな候補はかなり限られる。ただ、選手は見られることで強くなり、輝いていく。ゴルフに限らず、そういうアスリートたちは何人もいたし、その過程を見ていくのも楽しい。
求む、ネクストヒロインー。百花繚乱もいいが、他を圧倒する大輪の花が咲く瞬間を、もう一度見てみたい。(文・臼杵孝志)
