男子ツアーの国内開幕戦は、石坂友宏の初優勝で幕を閉じた。悪天候の影響により54ホールの短縮競技となったが、初日のリーダーボードにはフレッシュな顔ぶれが並んだ。言い方は悪いが、決して広く知られているとは言えない選手たちだ。この開幕戦は、そんな彼らを知ってもらう格好の機会となった。同時に、スター選手に頼りがちな我々メディアの在り方を見つめ直す一週間でもあった。
初日は意外な名前が上位に並んだ。2位には今季ホールインワン第1号となった水田竜昇(たつあき)、4位には青木尉(じょう)、山本大雅、玉城海伍、三島泰哉ら、レギュラーツアーでの経験が浅い選手たちが食い込んだ。
青木は今大会がレギュラーツアー3試合目(アマチュア含む)。前回出場は2021年の「日本プロゴルフ選手権」までさかのぼる。水田に至ってはツアーメンバー入りの経験もなく、JGTOのホームページに選手プロフィールの掲載がなかった。
初日の取材では、我々報道陣の関心は自然と彼らのバックグラウンドに向かった。生い立ちやこれまでの歩みを掘り下げていく。
話を聞くと実に面白い。ボクシング経験はゼロだが、「あしたのジョー」に由来して名付けられたという青木。元WBC世界バンタム級王者で「浪速のジョー」こと辰吉丈一郎にあやかりたかったというが、「名字と合わない」という理由で“じょう”に落ち着いたという。
愛知県出身で“準地元”の今大会で優勝争いを演じた水田は、埼玉栄高出身。同期には女子プロゴルファーの菅沼菜々がいる。ドライバーの飛距離は310〜320ヤードを誇り、ヘッドスピードは「53m/sくらい」というハードヒッターだ。シャフトも驚くべきハードスペックだった。ホールインワンで注目を集めたが、魅力はその圧倒的な飛距離にあった。
QTでは一度もファイナルに進めず、昨季もサードで敗退。それでも単独首位で最終ラウンドを迎え、優勝争いに食い込んできた。こうした背景を知れば、同じ試合観戦でも見え方はまるで違ってくる。スコアだけでは伝わらない選手のストーリーがそこにはある。
短縮競技となったことで番狂わせもあるか…と思ったが、彼らは最終ラウンドまでに力尽き、水田は31位タイ、青木は56位タイに終わった。最終的には石坂が初優勝を飾ったものの、稲森佑貴やマイケル・ヘンドリー(ニュージーランド)といった実績ある選手が上位に並び、地力の差を示す結果となった。
それでも、何度も国内男子ツアーを取材してきた身として、今大会はフレッシュな選手を追いかける面白さをあらためて実感する場となった。男子ツアーの人気低迷が叫ばれるなか、無名選手の知られざる一面を伝えることは、その魅力に気づいてもらう入口になるはずだ。
3月、JGTOは日系投資ファンドの日本産業推進機構(以下:NSSK)の支援を受け、ツアー運営や事業展開を担う営利団体「株式会社ジャパン・プロゴルフツアー」設立を発表した。
27年には日本男子ツアーの大改革に乗り出すが、その新会社設立会見で、NSSK代表取締役社長の津坂純氏はこう語った。「スターは作ることが目的ではなく、スターは結果です」と。
「全員が“知られていないスター”。そのトップはスーパースターですよね。どうやってこの知名度、人気度を上げるかっていうと、やっぱり露出ですよね」
この言葉を借りるなら、初日に上位に並んだ選手たちもまた、紛れもなくスターの原石だ。当たり前のように、高度な技術を持ち合わせている。
彼らを“知られていないまま”にしておくのか、それとも届けていくのか。こうしたフレッシュな選手たちを継続的に発信していくことこそ、男子ツアーの価値を広げる一助になる。メディアの在り方が問われていることを、強く実感させられた。(文・齊藤啓介)
