ゴルファーなら一度は経験があるだろうゴルフ場での忘れ物。クラブ、ボストンバッグ、スマートフォン、レインウェア――ラウンド後の慌ただしさの中で、つい置き忘れてしまうケースは少なくない。だが、その裏側では、ゴルフ場が粛々と対応を続けている。千葉県市原市にある千葉セントラルゴルフクラブで忘れ物の実情を聞いた。
■名前のない忘れ物は遺失物法に沿って処分
「ロッカー内に携帯があった、手荷物を忘れた、カート内で名前がついている忘れ物があった――そういった場合には必ず当日にお電話を差し上げています」と支配人は語る。名前や連絡先が分かるものは即日連絡。だが問題は“持ち主不明”のケースだ。
「名前のないボストンバッグや、カート内で誰のものか分からないものは一旦お預かりし、3か月間保管しています」
同クラブでは原則3か月保管。大半は持ち主の元に戻っているが、それでも期限を過ぎたものは、遺失物法の考え方に沿って処分される。クラブは不燃ゴミ、衣類は可燃ゴミへ。一方でスマートフォンや時計、アクセサリーなどは総務の金庫で厳重に管理される。本人から連絡がない場合、最終的に高価なものは所轄の警察に遺失物として届けるという。
名前のない忘れ物は、問い合わせがあった場合も慎重だ。「こちらから特徴は言いません。お客様に細かく特徴をお聞きして確認します」と話す。渡し間違い防止のためだ。
■最も多い忘れ物は“単品クラブ”
忘れ物で最も多いのは単品クラブ。コース内で置き忘れ、後続組やコース管理スタッフが拾得するケースが目立つ。次いで多いのがボストンバッグやシューズケースだ。キャディバッグを車に積み忘れてそのまま帰宅するケースもあるという。
「黒いボストンバッグで名前なし、というのが一番困ります」
雨天後は乾燥室のレインウェアも頻出だ。風呂上がりの爽快感と引き換えに、干したことを忘れて帰る。男性はバッグ類、女性は化粧品やアクセサリーが多いという傾向もある。また、過去には貴重品ロッカーに香典袋が残されていたこともあったという。
■“物”だけじゃない! “者”を忘れる珍事件
忘れ物は“物”だけとは限らない。筆者自身、コンペで貸し切りバスを利用した際の苦い経験がある。幹事が「全員乗っていますね」と確認し、ゴルフ場を出発。しかし1名がトイレに入っており、乗せ忘れたままバスは発車。ほどなく本人から電話が入り、慌てて引き返す事態となった。“忘れ物”というより“忘れ者”である。
実は、こうした話は珍しくない。ゴルフ場関係者の間では「車を忘れて帰った」という逸話も語られる。仲間の車に同乗して帰宅し、自分の車が駐車場に残っていたことに翌日気づくケースだ。コンペ賞品をそのまま置き忘れる例もある。戦利品を受け取りながら、帰路ではその存在をすっかり忘れてしまう。さらには、空になったキャディバッグが残されていたという話や、ロッカーに入れ歯が置き忘れられていたというエピソードもある。
千葉セントラルGCでは「人を忘れた」例はないというが、「皆さん意外と忘れます。ゴルフは荷物が多いですから」と支配人は苦笑する。
■ゴルフ場の忘れ物の保管期間は概ね3か月
忘れ物は法律上「遺失物」にあたる。遺失物法では、警察に届けられた拾得物は原則3か月保管され、持ち主が現れなければ拾得者や施設占有者に権利が移る。
駅や百貨店などは特例施設占有者として短期間で処理できる場合もあるが、ゴルフ場では概ね3か月保管が一般的だ。これは大手運営会社も対応を明示している。太平洋クラブ、PGM、アコーディア・ゴルフはいずれも公式サイトで忘れ物の保管期間や問い合わせ方法を掲示している。いずれも「一定期間保管→問い合わせ待ち→期限後処理」という流れは共通している。
■平均1日1件程度は発生するゴルファーの忘れ物
千葉セントラルGCでは平均すると1日1件程度、繁忙期は複数件発生するという。高額アクセサリーが届けられたこともあるが、紛失や盗難トラブルはない。
忘れ物対応はゴルフ場の信用に直結する。誠実な保管と適切な処理が、施設の品質を支えている。とはいえ、保管には期限があるのも事実。半年後の問い合わせでは対応できないこともある。
プレー終了後は、ロッカーや乾燥室の確認、バッグ積み込み時の最終チェックを念入りに行うべきだろう。プレー後の数分間が、3か月後の後悔を防ぐ。ゴルフ場は誠実に対応している。そして忘れ物は、誰にでも起きる。だが、人だけは忘れないようにしたいものである。(取材・文/嶋崎平人)
