2024年でツアーから撤退した上田桃子や25年プロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花が在籍している「チーム辻村」を率いるプロコーチの辻村明志氏。今回は最強とも謳われるスコッティ・シェフラーのスイングについて聞いた。
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昨年の米ツアーでは、世界ランキング1位に君臨するシェフラーを中心に展開しました。全米プロ、全英オープンのメジャー2勝を含むシーズン6勝。その強さはツアーで圧倒していました。
さて、アマチュアの皆さんに、その独特なスイングを真似ろ、とは言いません。というより、シェフラーのスイングは、強靭な肉体とスイングスピードがあってこそのものです。アマチュアが真似をしようにもできないでしょう。
ただ、アマチュアにも参考にすべき点が何点かあります。今回はそれを紹介したいと思います。2024年マスターズを観戦する機会をいただきました。シェフラーが2度目の優勝を果たしたあの大会です。実はオーガスタでボクは、最後の師匠でもある故・荒川博先生の言葉を思い出していました。
「インコースのボールを引っ張ってライト線のポール上に上がった王のボールは、切れることなくライトスタンドに吸い込まれていったものだ」
王さんとは、言うまでもなく世界のホームラン王、王貞治さん。王さんは左打ちですから、ライトのポールより右に曲がらずホームランになった、というわけです。
「プロでも多くの選手はだいたいファウルにしかならないもんだ」
スイング的にいうと、インサイドに下りてきたバットを、手ではなく体の回転によってインサイドに振り抜く、ということでしょう。アウトサイド・インの軌道のスライサーのアマチュアは、これまでインサイド・アウトの軌道とドローボールを手に入れようと頑張ってきました。しかし王さんの場合、イン・トゥ・イン軌道で振ります。
カット軌道になると当然右に曲がってしまいファウルになってしまう。無理やりインサイド・アウト軌道に振ると、手元が体から離れてしまい強くボールを叩けません。しかし、王さんもシェフラーも両手を体の近くに置いた状態を保って、イン・トゥ・イン軌道で振るから、弾道が曲がらないのです(王さんはファウルにならないのでしょう)。
ボクがアマチュアに真似して欲しいのは、シェフラーの右足を引く独特なフットワークではありません。繰り返しますが、真似ろといっても不可能でしょう。特に下半身がしっかりしていないアマチュアが形だけを真似れば、前傾角が崩れ、ボールに当たらなくなるのが関の山です。
ボクがアマチュアに推奨するのは、シェフラーのボール位置です。結論を急げば、とにかくボールに近いのです。ティアップしたドライバーは、やや長いので少し懐に余裕を持たせますが、アイアンはもとよりFWやUTもボールの近くに立つのです。地面にあるボールは近くに立つ方が得策と言えます。
先ほどの荒川先生の言葉を思い出してください。曰く、「インコースのボールを引っ張った……」。つまりシェフラーは意図的にボールの近くに立って、野球でいう『インコースの球を打つ状態』を作っている、とボクには映りました。
転じてアマチュアの方を見ていると、とにかく遠くに構えるアマチュアの多いこと。少しでも遠くに飛ばそう、という意識がそうさせるのでしょうか。そもそも当たらないところにボールをセットすれば、力みも生まれれば、体の無駄な動きも誘発、ドアスイングにもなるでしょう。ボールを近くにセットすれば、当然、腕やクラブは体の近くを通ります。
シェフラーのフットワークを真似することはできないにせよ、少しだけ意識して練習に取り入れることはできます。ボクのチームでも実際にやっている練習を紹介しましょう。用意するのはペットボトル。それをアドレスした右足の親指のツマ先前にセットします。この状態でスイングしてみましょう。クラブが外回りするのは、右ヒザが外回りするから。ペットボトルが倒れるようなスイングをしていれば、ダウンで右肩が前に出るアウトサイド・イン軌道の証拠です。
そこでこのペットボトルを倒さないよう振ってみましょう。シェフラーのように右足を引く必要はありません。ペットボトルを倒さないだけで十分です。フィニッシュで両太モモがピッタリ付くようになれば、右ヒザが外回転していない証明でもあるし、両手と体を一体化させたイン・トゥ・イン軌道でも振りやすくなるはずです。
これまで緩いスイングをしてきた人には、少しキツイかもしれません。しかし、この見えないところでの頑張りが、ゴルフで頑張るべきところなのです。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。2025年は千田萌花と藤本愛菜をプロテスト合格に導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』922号より抜粋し、加筆・修正しています
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