【バケモノたちの使用ギア】手を離せるのも凄い才能!?松山英樹の“指先”感覚
PGAツアーデータ・ドリブンシリーズとして、さまざまな公式データからギアとバケモノの相関関係をひも解いていく企画。今回は海外メディアも首を傾げる松山の「手を離すショット」の謎について。
配信日時: 2017年7月19日 08時46分
プロ野球から転身した師匠を持つ筒康博に言わせると「手を離す=指先が呼吸していること」
アマチュア的な目線で見ると、「ショットの途中で手を離すなんて、すごく調子が悪そう」と思うだろう。ところが、「オーバーラッピングならまだしも、インターロッキングで握っているのに、簡単に右手を離せるなんてバケモノの証明だ」と語るのは、スイングコーチでフィッター兼クラフトマンの筒康博。
「松山選手のバケモノぶりは、グリップの選び方にも見てとれます。現在使う硬度の高い(+5)の限定バージョンは、緩みのないスイングとグリップと密接に関係しているはず。ただ柔らかく握るだけでは、ラフやプレッシャーのかかる中ではナイスショットが難しくなります。かといって、強く握り過ぎても腕や肩周りのリキミに繋がり危険。
松山選手自身はメディアのインタビューで“肩や腕のリキミをいかに抜くか”“自分はグリッププレッシャーが強い方”と語っており、緩みなくプレッシャーやハードライに対応出来る【強く柔らかいグリッププレッシャー】をイオミックの『Xグリップ(+5)』で再現出来るのだと思います。そして、引っかかり過ぎずしっかりしたものを指先でしっかり目に握っているからこそ、嫌なフィーリングの時にサッと離せるのではないのかなと。
例えば野球のキャッチボールを想像してほしいのですが、腕や肩がリキんで指先までガチガチだといいボールは投げられない。かといって、手の指まで完全ゆるゆるだとボールはすっぽ抜けてコントロール出来ません。肩や腕はリラックスしていながら、きちんと指先のコントロール感がなければ、理想的な位置でボールを離す感覚は出せないはずです。
それと同じで、松山選手のあの手を離す仕草は単なる左手リードの類ではなく、指先までしっかり自らの意思でコントロールしている証拠だと思いますね。ましてや彼はインターロッキンググリップ。普通ならあのスピードで振って手を離すなんて出来ない芸当ですよ。彼がキャッチボールをよくするのも、気分転換意外に大切な指先感覚を磨いているのではと想像しますね」(筒)
筒はジャンボ尾崎や中嶋常幸を指導した元祖プロコーチの後藤修に師事しており、プロ野球から転身した後藤の元、指先感覚を磨くことの重要性を叩き込まれてきたという。
「アマチュア的には“たかがグリップ”と感じるかも知れませんが、“イチロー選手は他の誰よりも中学生時代から小まめにバットを交換してカラダにフィットするものを選んできた”とチチローさんが後藤先生との対談で告白しています。松山選手のグリップ選びは、イチロー選手ばりにフィーリングにこだわった結果じゃないでしょうか」(筒)
では、イオミックに巡り合う前の中学時代の松山英樹のグリップは? その原点を聞くため、ジュニア時代の彼のグリップ交換をしていた人物に話を聞いた。同郷・愛媛県松山市で地クラブメーカー兼クラブ工房『MIRAI GOLF』を営む菅野崇さんだ。
「私が松山選手のグリップ交換をしていたのは、彼がまだ150cmほどの身長だった中学生時代から、ツアーデビューしてから暫くの間です。他の人とはまったく異なるグリップ調整をしていましたね。ゴルフプライド『ツアーベルベットラバー』を1インチも伸ばして装着することで、やや柔らかいグリップエンド部分に硬さを出す工夫をしていました。
松山選手は口数が元々少ない子だったので、持論を長々と話すことはしませんが、理想のグリッププレッシャーを再現するグリップ硬さを本能的に探していたのだと思います。現在のイオミック『Xグリップ(+5)』を使って替える気がないというのもすごく納得ですね。体は成長しますが、クラブとの接点やフィーリングを大事にしているから、指先の感覚が変わるグリップ変更にはかなり慎重だと思います」(菅野さん)
最後に、全英オープンを見据えて筒が「チャンスだと感じます」とコメントをくれた。
「樹脂系グリップのイオミックは、水分を弾いて表面に浮くため、“滑る”と誤解するアマチュアが多いのですが、大きな勘違いです。しっかり拭き取れば、重さもフィーリングも変わらず、最も天候に左右されにくいグリップだと言えます。ラバーと違って水分が浸透しませんからね。
また、ラバーグリップは気温が下がると硬く感じて指先感覚の鋭い人には多少の影響がありますが、樹脂系グリップはラバーよりはるかに影響が少ない。今週の天候がどうなるかは分かりませんが、メジャーの中で、最も荒天の影響を受けやすいのが全英オープン。その意味で、他の選手より指先感覚が変わらないグリップを挿しているのが松山選手。期待しましょう」(筒)
Text/Mikiro Nagaoka
「松山選手のバケモノぶりは、グリップの選び方にも見てとれます。現在使う硬度の高い(+5)の限定バージョンは、緩みのないスイングとグリップと密接に関係しているはず。ただ柔らかく握るだけでは、ラフやプレッシャーのかかる中ではナイスショットが難しくなります。かといって、強く握り過ぎても腕や肩周りのリキミに繋がり危険。
松山選手自身はメディアのインタビューで“肩や腕のリキミをいかに抜くか”“自分はグリッププレッシャーが強い方”と語っており、緩みなくプレッシャーやハードライに対応出来る【強く柔らかいグリッププレッシャー】をイオミックの『Xグリップ(+5)』で再現出来るのだと思います。そして、引っかかり過ぎずしっかりしたものを指先でしっかり目に握っているからこそ、嫌なフィーリングの時にサッと離せるのではないのかなと。
例えば野球のキャッチボールを想像してほしいのですが、腕や肩がリキんで指先までガチガチだといいボールは投げられない。かといって、手の指まで完全ゆるゆるだとボールはすっぽ抜けてコントロール出来ません。肩や腕はリラックスしていながら、きちんと指先のコントロール感がなければ、理想的な位置でボールを離す感覚は出せないはずです。
それと同じで、松山選手のあの手を離す仕草は単なる左手リードの類ではなく、指先までしっかり自らの意思でコントロールしている証拠だと思いますね。ましてや彼はインターロッキンググリップ。普通ならあのスピードで振って手を離すなんて出来ない芸当ですよ。彼がキャッチボールをよくするのも、気分転換意外に大切な指先感覚を磨いているのではと想像しますね」(筒)
筒はジャンボ尾崎や中嶋常幸を指導した元祖プロコーチの後藤修に師事しており、プロ野球から転身した後藤の元、指先感覚を磨くことの重要性を叩き込まれてきたという。
「アマチュア的には“たかがグリップ”と感じるかも知れませんが、“イチロー選手は他の誰よりも中学生時代から小まめにバットを交換してカラダにフィットするものを選んできた”とチチローさんが後藤先生との対談で告白しています。松山選手のグリップ選びは、イチロー選手ばりにフィーリングにこだわった結果じゃないでしょうか」(筒)
では、イオミックに巡り合う前の中学時代の松山英樹のグリップは? その原点を聞くため、ジュニア時代の彼のグリップ交換をしていた人物に話を聞いた。同郷・愛媛県松山市で地クラブメーカー兼クラブ工房『MIRAI GOLF』を営む菅野崇さんだ。
「私が松山選手のグリップ交換をしていたのは、彼がまだ150cmほどの身長だった中学生時代から、ツアーデビューしてから暫くの間です。他の人とはまったく異なるグリップ調整をしていましたね。ゴルフプライド『ツアーベルベットラバー』を1インチも伸ばして装着することで、やや柔らかいグリップエンド部分に硬さを出す工夫をしていました。
松山選手は口数が元々少ない子だったので、持論を長々と話すことはしませんが、理想のグリッププレッシャーを再現するグリップ硬さを本能的に探していたのだと思います。現在のイオミック『Xグリップ(+5)』を使って替える気がないというのもすごく納得ですね。体は成長しますが、クラブとの接点やフィーリングを大事にしているから、指先の感覚が変わるグリップ変更にはかなり慎重だと思います」(菅野さん)
最後に、全英オープンを見据えて筒が「チャンスだと感じます」とコメントをくれた。
「樹脂系グリップのイオミックは、水分を弾いて表面に浮くため、“滑る”と誤解するアマチュアが多いのですが、大きな勘違いです。しっかり拭き取れば、重さもフィーリングも変わらず、最も天候に左右されにくいグリップだと言えます。ラバーと違って水分が浸透しませんからね。
また、ラバーグリップは気温が下がると硬く感じて指先感覚の鋭い人には多少の影響がありますが、樹脂系グリップはラバーよりはるかに影響が少ない。今週の天候がどうなるかは分かりませんが、メジャーの中で、最も荒天の影響を受けやすいのが全英オープン。その意味で、他の選手より指先感覚が変わらないグリップを挿しているのが松山選手。期待しましょう」(筒)
Text/Mikiro Nagaoka