<伊藤園レディス 2日目◇9日◇グレートアイランド倶楽部(千葉県)◇6769ヤード・パー72>
「夏の調子のままだと、どうなっちゃうんだろうって感じでした。最悪QTに行くことも考えているので、そこに照準を合わせればいい。もちろんチャンスが来たら勝てるのが一番なんですけどね」
現在メルセデス・ランキング73位と、昨年手にしたシード死守の崖っぷちに立たされている山内日菜子だが、その視線はしっかりと前を向いている。そして、“チャンス”が千葉県で訪れた。
2日目は6つのバーディを奪い、ボギーはなし。会心の「66」で首位と1打差のトータル9アンダー・4位タイで通算2勝目を狙える位置にいる。初日は16番を終えた時点で、やはりボギーフリーの6アンダーだったが、17番でダブルボギー、続く18番でボギーの悔しいあがりに。それもあって「安定感はきのうよりもあったけど、あがりに近づくにつれドキドキはしました。きょうは無事に回れてよかった」と、ちょっぴりバツが悪そうに笑う。
昨年3月の「アクサレディス」で初優勝。地元・宮崎県でQTランク181位からの“下克上V”を成し遂げると、一躍、その名を轟かせた。しかし今年は春から夏ごろにかけて予選落ちが続いた。それでも「ゴルフ5レディス」で2位になるなど、秋にさしかかるにつれ状態は落ち着いてきている。
転機は、今年それまで自分で考えていたクラブ構成を、以前のように父・克則さんに任せたこと。試しては替えて、結果が出なければ抜いてまた試す。そんな日々が迷走につながっていたと今は振り返る。「自分で考えてやっていたので客観的に相談してなかったんですよね。それで父がしびれを切らせて。『1回言うことを聞いてみて』って言われたので聞きました」。するとゴルフ5レディスでの躍進につながった。「そっち(クラブ)は任せていいんだって思えたので、すごく楽になりました」。
そんな山内のクラブを見るとこんな特徴がある。ウッドは1番、3番、7番を投入しており、そのシャフトには藤倉コンポジットの『スピーダー NX グリーン』が装着されているのだが、そのうち1番、3番は“40S”という軽くて、ハードなものを使用している。女子ツアーでも40グラム台を使う選手は決して多くはなく、山内も「ずっと50グラム台でした」と話す。同社のツアー担当者に聞いても、「うちの製品を使ってくれている選手で40グラム台なのは、山内プロと西村優菜プロくらいですね」と明かすほどだ。
この意図や効果について山内は、「自分のなかで振れてるつもりが、客観的に見るとあまり振れていなかったんです。父が『軽いほうが操作しやすい』という案を出してくれて、実際に操作しやすくなりました」という。18ホールを3日間、ないしは4日間続けるプロにとって、楽に再現性高いスイングを継続できるなら、それに越したことはない。シャフトもいろいろ試してきたが、やはりゴルフ5レディス以降、この戦略で落ち着いている。
そしてこういった試行錯誤が、大事な終盤戦につながった。今季優勝者やランキング上位者40人が出場する最終戦の「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」は出身地の宮崎県で行われることもあり、「意識はめちゃくちゃしています」とも。ただ、「どっちに転がっても、いい方向には行くと思う。前向きに」という気持ちもあり、とにかく自信を取り戻せたことが大きな意味を持つ。
ちなみに、山内はこの「軽カタ」のシャフト戦略が、アマチュアにも効果ありと太鼓判を押す。「もっと簡単にゴルフができるよ~って言いたいですね。今回、軽めを使ってみてこんなに楽なんだって、私も痛感しました」。7番は同モデルの“50S”を使用し、流れを作っている。
藤倉の担当者も「アマチュアも50S、60Sを1つのベースにする方が多いと思いますが、軽くてハード目というスペックは操作性が高まるので、ひとつの考え方としておススメです。硬めのものを使えば、軽くても“どこにシャフトがあるかを感じられない”ということは避けられます」とその説を後押し。プロが調子を取り戻すきっかけになったひとつの取り組み、ぜひ試してみるのはいかが?(文・間宮輝憲)