栄光と挫折の果てにあった、タイガー・ウッズのマスターズ制覇
text by Kazuhiro Koyama/Photo GettyImages
配信日時: 2019年4月19日 10時10分
卓越したゲームプランとスピンコントロール
最終日のプレーは、タイガーがマスターズのために準備してきたことが集約されていた。
今年のオーガスタナショナルGCはウェットなコンディションで、例年に比べると、“ガラスのグリーン”はいくぶん遅く、止まりやすくなっていた。それだけに、スピンがかかりすぎて戻ったり、傾斜に大きく流されたりしないように、いかに思ったところにボールを止めるか、そのショットの正確性とスピンのコントロールが求められていた。
それを着実かつロジカルに遂行したのがタイガーだ。
7番パー4では、8番アイアンで打った軽いフェードボールのセカンドショットを、ピン奥からバックスピンで戻し、傾斜を利用してスルスルと寄せて、イージーバーディーを奪った。
今年のオーガスタナショナルGCはウェットなコンディションで、例年に比べると、“ガラスのグリーン”はいくぶん遅く、止まりやすくなっていた。それだけに、スピンがかかりすぎて戻ったり、傾斜に大きく流されたりしないように、いかに思ったところにボールを止めるか、そのショットの正確性とスピンのコントロールが求められていた。
それを着実かつロジカルに遂行したのがタイガーだ。
7番パー4では、8番アイアンで打った軽いフェードボールのセカンドショットを、ピン奥からバックスピンで戻し、傾斜を利用してスルスルと寄せて、イージーバーディーを奪った。
8番パー5では、奥にこぼれた位置からのサードショットを、スピンを抑えた手前から転がすアプローチで連続バーディー。
圧巻だったのは9番ホールのファーストパット。20メートル以上はある、3段グリーンの強烈な下り傾斜のあるロングパットを驚くほど繊細なタッチで、カップの縁まで寄せた。止まりそうになりながらも、コロコロと静かにカップに向かうボールを、息が止まるような思いで見ていたファンも多いはずだ。
勝負のカギになったのは、アーメンコーナーの12番だ。例年のように右奥にピンが切ってあった最終日、わずか155ヤードしかないパー3で、トニー・フィナウ、ブルックス・ケプカ、イアン・ポールター、そしてトーナメントリーダーのフランチェスコ・モリナリと、優勝争いをしていた選手が、次々と手前のレイズクリークに入れた。
そんな中、タイガーは9番アイアンを持って、ピンの左15メートルに乗せてパーセーブした。ショートアイアンを持ったら、常人の想像を超える精度でピンを狙い撃ち出来るこのレベルの選手が、ピンのはるか左を狙ったのだ。セーフティにいくと決めたら、徹底して安全策を取ったタイガー。これが、数手先のチェックメイトを導き出すための凄みのある布石だった。
タイガーは、最初から左に打つプランだったとコメントしているが、この12番ホールでつけた差が、バーディーマストの15番パー5で、モリナリの池ポチャを誘ったといっていい。タイガーは13番、15番の2つのパー5で2オンを成功して2パットのバーディー。16番は傾斜を利用して30センチにつけタップインでバーディーを奪った。12番が布石なら、16番のショットが事実上のチェックメイトだ。技術と経験、そして勝負感に裏打ちされた戦略が、勝利を引き寄せた場面だった。
マスターズの大逆転といえば、“Jack is Back”で有名な86年のジャック・ニクラウスの勝利が思い出される。ニクラウスはイーグルを奪い、何度も長いパットを決めて、サンデーバックナインを「30」で回った。スーパープレーの連続で、今見ても神がかった逆転劇だ。
タイガーは、最初から左に打つプランだったとコメントしているが、この12番ホールでつけた差が、バーディーマストの15番パー5で、モリナリの池ポチャを誘ったといっていい。タイガーは13番、15番の2つのパー5で2オンを成功して2パットのバーディー。16番は傾斜を利用して30センチにつけタップインでバーディーを奪った。12番が布石なら、16番のショットが事実上のチェックメイトだ。技術と経験、そして勝負感に裏打ちされた戦略が、勝利を引き寄せた場面だった。
マスターズの大逆転といえば、“Jack is Back”で有名な86年のジャック・ニクラウスの勝利が思い出される。ニクラウスはイーグルを奪い、何度も長いパットを決めて、サンデーバックナインを「30」で回った。スーパープレーの連続で、今見ても神がかった逆転劇だ。
86年のニクラウスの最年長優勝に匹敵するほどの復活劇を果たしたタイガーだが、ニクラウスのときのようなスーパープレーはほとんどなく、ゲームプランを粛々と遂行し、終わってみれば盤石の横綱相撲だった。不確定な要素を排除した極めてロジカルな勝利だったと言っていい。