衝撃的だったヤマハのゴルフ事業撤退のニュース。数々のヒット作を世に送り出してきたヤマハがなぜ? と考えたゴルファーも多いだろう。これも停滞する日本経済の影響なのだろうか? 四六時中ゴルフ漬けのロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が語る。
その瞬間、ゴルフ業界に、ホッとした安堵の風が吹きました。3月30日、『ヤマハレディースオープン』の前夜祭で、トーナメントは来年以降も継続されることが大会関係者より公表されたのです。
「6月をもってゴルフ用品事業から撤退する」とヤマハがプレスリリースしたのが2月。トーナメントはどうなのか? 心配している声をよく耳にしていましたが、ファンもツアープロも関係者もひと安心です。
ちなみに、ヤマハのゴルフ用品からの撤退は寝耳に水でした。昨年10月にメインブランドのクラブを試打して、その出来の良さを賞賛したばかりでしたし、知り合いの契約プロもヤマハの社員にも聞きましたがリリースで撤退を知ったと聞いて、本当に驚いたのです。
ヤマハのゴルフ用具は契約プロが賞金王になったり、毎年のようにトーナメントで勝者のクラブになったりすることを持ち出すまでもなく、本当に優秀です。特に本業の楽器や発動機で蓄積した金属加工の技術を使ったクラブは素晴らしい性能を発揮していました。
しかし、残念ながら現在のゴルフ市場は、良いものが売れるという真っ当な仕組みにはなっていません。思うように売り上げが伸びないことがヤマハの撤退理由です。
個人的には、悔しいというのが撤退を知った瞬間の第一印象でした。良いものなのにヒットしないゴルフ用品市場をイライラして見つめることがよくあるからです。
「ゴルフ用品を作っているメーカーがなくなったらどうしよう?」今から10年前にナイキがゴルフ用具のクラブやボールの開発と販売から撤退したときも、そういう心配をした人たちがいました。
実際に、大手のゴルフメーカーの中には身売りする噂が絶えないところも複数あります。大ファンのメーカーやブランドが新製品を出さなくなる未来は、絶対に来ないとは言えません。
ゴルフ用具は、そもそも、欧州の武器職人が貴族のリクエストで作っていたものです。大量生産されるようになったのは20世紀になってからで、この100年の間だけでも、初代3大メーカーであったマグレガー、スポルディング、ウィルソンは、オーナーが変わったり、名称が消えてしまったり、実質的に名義貸しになっていたりで、盛者必衰の平家物語のようです。
大量生産するものではなく、職人が腕を発揮するようなゴルフ用具の時代に戻るというロマンチックな展開は夢物語ですが、小さな工房で自分専用のオーダークラブを作って、唯一無二のゴルフを楽しんでいる人もいますので、需要はあるのだと思われます。
ゴルフクラブを購入する際に、使用していたクラブを下取りに出して、新たな購入の足しにするという購買方法が定着した21世紀も四半世紀を超えています。ゴルフ市場で中古販売店が出現したのは20世紀末のことでしたから、本当に時代は一気に変わるのです。
さてさて、ゴルフ用具の未来はどんなことになっていくのか? より遠く、より正確に、より入るというゴルフの欲望を叶えるクラブやボールの出現を待ちつつ、良いものが売れる理想が当たり前になることを願い続けて、しっかりと監視したいと思っています。(文・篠原嗣典)
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年東京都文京区生まれ。中学1年でゴルフコースデビューと初デートを経験しゴルフと恋愛のために生きると決意。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。ベストスコア「67」、ハンディキャップ「0」。
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