ゴルフのトーナメント会場は“ネタの宝庫”。ただ、そのすべてを伝えることはなかなか困難なこと…。そこで現場記者がコースを歩くなか“見た”、“聞いた”もののなかからちょっと気になった1つのテーマ、すなわち“ヒトネタ”をご紹介! 今回は国内男子ツアー「前澤杯」が行われている、MZ GOLF CLUB(千葉県)から。
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ツアーの国内戦は今季自身初戦。そんな蟬川泰果のキャディバッグには、ソフトボール用品として知られるティゴラ(TIGORA)のバットが入っていた。金属製ながら比較的軽く短いこのバットは、練習前に行う素振り用の一本だ。
目的は「体の軸を整えるためで、軸がぶれないようにするため」。ブレない動きを身につけるため、トレーナーの勧めでこのオフから取り入れているウォーミングアップの一つ。
では、なぜ軽いものを振るのか?「重たいものを振りすぎると、逆にスピードが上がらなくなる可能性もあるんです。重いものを振ろうとすると、体幹を固めていないと体が揺れてしまう。それを防ぐために取り入れています」。重い器具は、その負荷によって体のバランス軸が縦横にブレやすく、そのブレに耐えようとすることで、無意識に力みを生む要因にもなる。
だからこそ、あえて軽いものを使う。理想とする動きで素振りを行い、軸の安定したスイングを体に染み込ませる狙いがある。回数も特徴的で、「基本的に(右で)3回、(左で)3回。振りすぎないことが一番大事」と、わずか6スイングで動きの確認を行う。
バット型の練習器具といえば重いイメージがあるが、この一本は女性でも扱えるほどの軽さ。無駄な力みが抜け、スムーズなスイングにつながる。さらに重さに引っ張られないことで、理想の軌道を意識しやすい。
昨年はケガの影響で思うようにトレーニングができなかったが、このオフは量を大幅に増やした。さらに、JGAナショナルチーム時代にサポートを受けていたメンタルコーチ・菅生貴之氏の指導も「2年ぶりぐらい」に再開している。「オフのトレーニングだったり、メンタルのコーチもつけたり、今年は変えたことがいっぱいある。オフに取り組んできたことが明日からの4日間でいい結果を出せるんじゃないかなと思っています」。そう語る表情は清々しい。
今季の目標はもちろん、日本男子ゴルフ界の頂点に立つこと。そのためにも「もちろん優勝したい」。そのうえで「年間王者になることを考えると毎試合トップ10を外せないのもあったりするんですけど、まずは自分の18ホール、(4日間で)72ホールですかね。自分が思ったまま、思いっきり自信を持って、プレーをまずはしたい」と力強く語った。
新たな取り組みとともに迎えるシーズン。その一つである“軽いバット”が、好スタートを後押しするかもしれない。(文・高木彩音)
