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“苦労人の涙”と“グッドルーザー”を目の当たりにした現場 耳に残った「2位は…」という言葉【記者の目】

“苦労人の涙”と“グッドルーザー”を目の当たりにした現場 耳に残った「2位は…」という言葉【記者の目】

配信日時:2018年10月30日 19時19分

言い訳もせず、潔く負けを認める敗者。ラグビーの試合終了時に使われる『ノーサイド』が、戦いを終えた後は敵・味方の区別をなくすという精神にもとづいた言葉であるのは有名だが、試合後にお互いを讃える姿はスポーツの醍醐味(だいごみ)の一つといえる。

大会期間中、深堀圭一郎に話を聞く機会があったのだが、彼もまたこの「マイナビABCチャンピオンシップ」の“グッドルーザー”の一人だ。2008年大会を2位で終えた深堀。この年優勝したのは、当時17歳の石川遼だった。石川が最終日の18番でウォーターショットを披露し、プロ転向後初勝利を挙げたあの大会だ。

この時の深堀は3年ぶりとなるツアー9勝目に向けて、最終日を単独トップで迎えていた。石川と同じ最終組でラウンドし、最終的に逆転負けを喫したあの日のことは、「ほかにも負けた試合の悔しさはたくさんあるけれど、ゴルフ界が大きく変わった一つの試合だと思って、はっきり覚えている」といまも頭を離れることはないという。

この時、深堀は、石川のウォーターショットの後、8mのバーディパットを決め、最後までプレッシャーをかけ続けた。「あれは、僕のなかにまだ闘志が残っていたあらわれだと思う。『簡単にプロは勝たせるもんじゃない 』 。“僕”というよりも“プロゴルファー”の意地みたいなものでしたね」と話したこのプレーが、優勝が決まる瞬間まで大会に緊張感をもたらした。そして、試合後、当時40歳だった深堀は、涙にむせぶ17歳の青年に対して「これが実力だから、自信を持ちなさい」という言葉を贈った。

「いまはシャレで『あの遼の優勝は僕も演出しました』と言っているんだけどね」と冗談めかして笑った深堀。そして当時の状況や心境を、まるで昨日のできごとかのように事細かに話してくれたのだが、その途中ポツリとつぶいたこんな言葉が耳に残った。

「2位は忘れ去られるものだからね」
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