<前澤杯 初日◇23日◇MZ GOLF CLUB(千葉県)◇6652ヤード・パー72>
「練習通りできた」。ツアー未勝利の中西直人が清々しい表情を浮かべた。QTランク122位で今季は下部ツアーが主戦場となる37歳は、今大会に推薦で出場している。雨の中行われたこの日、ボギーなしの9バーディを奪い「63」。ツアーでの自己ベストスコアを記録し、9アンダー・単独首位発進で滑り出した。
“練習通り”とは。「1年間を通してやろうとしている課題が3つあって、それができた感じです」と明かす。その3つとは、ショットを打つ前に左右の手を5センチほど離して握るスプリットハンドの素振り、右手、左手の片手打ちだ。スプリットハンドの素振りは、ラウンド中もショットをする前に必ず行っている。
この3つを行っている理由。2022年にシード権を手放したあと、3年前から師事している堀尾研仁コーチとスイング改造を行ってきた。その3年間を振り返ると「地獄ですよ」と苦笑いするように、好感触を得られるのは「10あるうちの1」。それ以外は思うようにいかない時間が続いた。それでも浮き沈みの激しい期間を乗り越え、ゴールに向けてブレずに取り組んできた。
そして「去年の12月で全部終わった」とスイング改造が一区切りを迎えた際、「じゃあ、やることはあと何だろう」と考えた時に、堀尾コーチから提示されたのがスプリットハンドだった。スイングにおいて左右の手にはそれぞれ「役目が必ずある」と考える中で、「僕の場合はヘッドをうまく使うことが、いつの間にか下手になっていた」と振り返る。
これまでヘッドを走らせる動きや球筋の操作は「体でやっていた」というが、「結局、球に当たるのはヘッド」。その原点に立ち返り、試行錯誤の末にたどり着いたのがスプリットハンドだ。
両手を離して握ることで、ヘッドの軌道やフェース向き、ダウンスイングでのリリースのタイミングが明確になる。さらに左右の片手打ちも取り入れ、改造したスイングの土台を崩さないよう、基礎練習を徹底してきた。
プレーを見ていると、ティショットではスイングをコンパクトにして打つライン出しのショットをする姿も見られた。放たれる強い弾道は飛距離も十分。「片手打ちとスプリットハンドをやったらライン出しもできます。ホントに“アマチュアの鏡”みたいな感じでいきたいなと思っています」と冗談交じりに話すが、それだけ基礎の重要性が証明された形だ。
こういった基礎練習を続けてきたことで、ヘッドスピードにも大きな変化があったという。「いつの間にか、いまは人生で1番飛んでいるんですよ。ヘッドスピードが人生で1番速い」と、昨年11月の「三井住友VISA太平洋マスターズ」では45m/sだったが、今では「めちゃくちゃ振っている」というも52m/sまで上がったという。さらに「ボールスピードも出たことのない78m/sとか出たりしている」と胸を張る。
この大きな変化については「クラブもそうですし、コーチだけではなく、自分のゴルフを客観視してくれるチームがいる。その人に恵まれているなって思いますね」と周りのサポートへの感謝の気持ちを表した。
首位発進は2022年の「三井住友VISA太平洋マスターズ」以来、4年ぶりとなる。「ギャグはよく滑るんですけどね、スタートの滑り出しなんてなかなかない。あしたもいい滑り出しができるように頑張ります――うまくなかった?(笑)」と、持ち前の高い“ギャグセン”でその場を笑いに包んだ。あすもいい滑りを――。冗談ではなく、初優勝に向け、“いい滑り”を継続していきたい。(文・高木彩音)
