■キャディという仕事の喜び
湯本氏は選手に夢を託して全力でサポートをすることに生きがい、喜びを感じる。他のキャディの声も聞いた。
帯同キャディが1週間で得る収入は、基本給で12万~15万円。これに加え、選手が予選通過を果たした場合には、獲得賞金の10%前後がインセンティブとして支払われる。選手によっては月曜や火曜から会場入りし、練習にも帯同するため、勤務は実質6~7日間に及ぶ。
優勝賞金4000万円であれば、400万円のインセンティブを受け取れるが年間に何勝もできるのはほんの一握り。逆に予選落ちならばインセンティブはなし。また試合が続けば休みも少ないのが実情だ。それでもこの仕事を続けられるのは、報酬以上の価値がそこにあるからだった。
その価値について伊与氏は「優勝したときです。それに尽きると思います」と即答。昨年も「伊藤園レディス」で脇元の初優勝をサポートしている。「選手ではないけれど、一番近い立場として、ほぼ一緒の喜びを味わえる。その瞬間は本当に良かったなと思います。年間で何試合優勝できるかは分からないですけど、その瞬間に立ち会わせてもらえてありがたい。しばらくは続けていきたいです」。過去2度の優勝を経験し、大きな達成感を味わってきた。
桑島氏は「旅行感覚でいろいろな場所に行けることも魅力」と話す。「試合先でおいしいものも食べられますし、優勝の喜びもありますけど、普段はなかなか行かない県に足を運べるのは大きいなと思います」。選手とともに全国を巡ることができる点も、この仕事ならではのメリットだと感じている。
一方、サラリーマン経験のある小藪氏は、異なる角度から魅力を語る。「サラリーマンは同じ場所に行って、同じ人たちと仕事をする“ルーティンワーク”。キャディは毎週違う場所に行き、いろんな人に出会える。試合の緊張感も、社会人になってからはなかなか味わえないものです」。前職との違いは達成感にも表れる。
「どれだけいい契約を取っても、正直そこまでうれしくなかった。最初の1、2年は上司に喜んでもらえるのがうれしかったけど、契約を重ねるうちにその喜びも薄れていきました。仕事自体は楽しいけど、やりがいが足りないと感じていました」。しかしキャディは違う。「予選を通ればめちゃくちゃうれしいし、トップ10でもうれしい。優勝したら脳汁が出まくる。その刺激が大きいんです」と目を輝かせた。
競技ゴルファー時代は「本当に下手だった」と振り返るからこそ、「上のレベルの選手と話す立場ではなかった」とも語る。それがキャディになることで、「対等ではないですけど、選手とすごく近い存在になれる」と実感。憧れていた存在のすぐそばで戦えること――。それもまた、キャディという仕事の大きな魅力の一つだ。
