■選手をサポートするうえで意識している“心得”
プロキャディの役割は、バッグを担ぐだけではない。風向きやグリーンの傾斜、マネジメントなど選手にアドバイスを送ったり、時には心の支えにもなるだろう。実際にはどんなことが求められるのだろうか。
キャディ業務の基本として湯本氏は「まず、1つ目に“立ち位置の把握”です」と話す。「僕の選手だけでなく、同じ組のプレーヤーの気が散るようなことはしないようにします。打つときは絶対に動かない。クラブを落とさない。周りに迷惑をかけないことは、気を付けています」。まずは選手のプレー環境を整えることだという。
伊与は「選手が回りやすい雰囲気づくり」を意識する。帯同選手が“中心”になれる空気をつくり、居心地よくプレーできるようつとめる。ボギーなどスコアを落としたときは「1年間で何百回もラウンドする中の1打」と前向きな声をかける。
一方で桑島は、選手の感情が落ち込んだときは基本的に「黙っています」と気持ちが落ち着くまで、そっとしておくタイプだ。落ち込んだ選手に余計な言葉はかけずに「少し離れて歩いたりして、あまり話さないです。選手のペースを優先にしています」と話した。
小藪も基本は待つ姿勢。「10年以上やっている選手に僕が何か言うのは失礼だと思うので、基本は落ち着くまで待ちます」とベテラン選手に無理に助言はしない。「本当に怒っているときはそっとします。落ち着いたタイミングで冗談を挟んだりして和らげていきます」と選手の表情を見て言葉をかけるなど、“寄り添う”スタイルだ。
2つ目に、湯本は「“1歩1ヤード”。これは本当に大事です」と挙げた。選手の残り距離を測るときに、メモをしている位置から歩測するが、「その一歩が10センチでもズレていたら、10歩で1ヤードも変わってしまう」と一歩の幅は、選手の一打に大きな影響を及ぼすという。「これはキャディの基礎」と話すように、自宅やホテルで1ヤード(約90センチ)を測って、常に“選手の大事な一打”を左右する一歩の感覚を体に染みつけるようにしている。
3つ目に「暗算のスピード力」(湯本)が大事になるという。エッジまでの距離、エッジからピンまでの距離、高低差、風をその場で把握し、計算する。「選手のリズムを崩さないためにも計算スピードを早くし、それを伝えて、クラブを選べるようにします」と選手のペースに合わせてスムーズにクラブを渡すように意識している。
最後は、「こまめに天気予報の確認と把握。風向きは1時間ごとに把握しておくこと」(湯本)と話した。スタート前に1時間ごとの風向き、気温、天候の変化などをチェックし、メモしておく。プロには随時、毎ホールの状況を伝えるようにしているという。
「この4つはキャディ業務としての基本で、18ホール選手と戦ううえで、かなり大切なことだと思っています。あとは、間違えたらすぐに謝ること。それも大事にしています。選手に負担を負わせたくないですし、気持ちを下げてほしくない。気まずいままだとプレーに害を及ぼしてしまうので」
日に日に変わるグリーンのコンディション、アドレス前と打つときに変化してしまうことがある風向きなど、想定外なことが起きるときもある。それによってミスが出たときはすぐに謝ることを意識し、選手のメンタルケアも徹底している。
こうした姿勢は、丸山茂樹らのキャディを務め、師匠としてあがめる杉澤伸章氏から学んだ。「コースマネジメント以外のことも考えていて、メンタルサポートのことも含めて、本当にすごいと思います」と讃える。
岩﨑が優勝した23年の「日本オープン」では、初日が終わってから毎日30〜40分ぐらい杉澤氏と電話で話し、『今こういう感じか、じゃあこうしたほうがいいよ』とアドバイスを受けた。「多分まだ10分の1ぐらいしか教えてもらってないと思いますが…」と今後も学びを惜しまない。
