<中国新聞ちゅーピーレディース 最終日◇21日◇芸南カントリークラブ(広島県)◇6530ヤード・パー72>
「やっぱり4打差だと周囲も私が勝つものだと思うでしょうし、自分も勝ちたいと思い始めたら緊張してきました」。勝って当たり前。そんな雰囲気にのまれそうになりながらも、権藤可恋はメンタルコントロールを徹底して今季2勝目を果たした。
まずは朝の練習場。スイングリズムに気をつけてボールを打ち、精神を落ち着かせた。2日目には自己ベストの「64」をマークしたが、そのときのイメージ通りの弾道を確認できた。
スタート後は「緊張するのは当たり前なんだ」と自分に言い聞かせた。優勝争いにあたって、8年前に父の一夫さんから手渡された『フローゴルフへの道』を読み返した。米国男子ツアーで活躍するメンタルコーチの著書だ。
「ミスを完全に防ぐことはできない。自分にやれるだけのことをやって、どんなことがあっても最後まであきらめずに立て直して、精一杯頑張れたらいいなと思いました」
ミスは起きなかった。最終日は3バーディ・ボギーなしの「69」。後続に一度も追いつかれることなく、トータル15アンダーで大会記録を2打更新した。3打差をつけての快勝だった。
この勝利で賞金ランキングは1位に浮上。シーズン終了時点で2位以内なら来季のレギュラーツアー前半出場権が手に入るが、権藤は並々ならぬ思いでこの枠を死守するつもりだ。
「実は7月に父が急逝したんです。闘病中は自分が弱音なんて吐いていられない気持ちで頑張っていましたが、亡くなった後は悲しすぎて、バーディを取ってもボギーを叩いても、何も感じない状態でした」
3年前からコーチに師事をしているが、初めてクラブを握った10歳のときから、権藤にゴルフになんたるかを教えたのは父・一夫さんだった。「こうしてプロゴルファーとしてプレーできるのも父のお陰。感謝しかありません」。
もう一度シード権を獲得し、レギュラーツアー優勝を父に捧げたい。“亡き師”への思いが28歳の原動力になっている。今季は残り8試合。最大の目標を達成するために、まずはステップ・アップ・ツアーで頂点を取りにいく。