PGAツアーがこれまでより大幅にスリム化されることが、ほぼ決まりつつある。
10月末に選手たちに配布された17ページにおよぶメモには、フィールド縮小のための提案がずらりと羅列されており、11月8日の理事会で承認されれば、2026年シーズンから実施される。そもそも選手会から提出された縮小案ゆえ、理事会で承認されることは、ほぼ確実である。
提案された主な内容は、いわゆるシード選手を上位125名から100名に減らすこと、各大会の出場選手数も減らし、現在は最大156名のところを120名~132名、最大でも144名までに抑えること。スポンサー推薦やマンデー予選からの出場枠を現行の4名前後から1~2名あるいはゼロとすること。
また下部ツアーのコーンフェリーツアーからPGAツアーへ昇格できる人数も、現行のトップ30からトップ20へ一気に減らされ、Qスクール(予選会)からの昇格も、現行の上位5位タイが上位5名のみに抑えられる。
近年、PGAツアーはLIVゴルフにスター選手を多数奪われ、ただでさえ試合会場の華やぎは減りつつある。そんな折り、出場選手の人数が減れば、試合会場の賑わいも物理的・必然的に減り、淋しさが漂うことは、人数が限定されている少数精鋭のプレーオフ・シリーズなどの例を見れば明らかである。
それなのに、なぜPGAツアーはフィールドを縮小しようとしているのか。選手たちに配布されたメモによれば、「フィールドを理想的なサイズにするため」とのこと。その意味は、今季、全試合のうち28%の大会が最低1日以上、日没サスペンデッドになった現実を踏まえ、試合進行を早めて各4日間が日々きっちり完結されることを目指すということのようだ。
ローリー・マキロイは「人数は少ないほどいい」と語り、この縮小案には大賛成の様子。米メディアの調べによると、フェデックスカップ・ランキングのトップ50圏内にいる選手であれば、今回のフィールド縮小案が実施されても「考えられる悪影響は、ほぼ無い」。そして、人数が減ればプレーの進行は早まり、スムーズに試合を終えられるため、トッププレーヤーであればあるほど、この案は「ウエルカム」ということなのだろう。
一方、PGAツアーのトップ50以下の選手、そしてPGAツアーを目指している下部ツアーなどの選手にとっては、突然、チャンスや間口が大幅に狭められることになり、夢の舞台への扉は一層、遠く、重くなる。
現状では、オープン競技のほぼすべての大会にマンデー予選からの出場枠が4枠ほど設けられている。それを突破して試合に出場し、優勝した選手は、実を言えば、わずか5名しかいない。しかし、その5名は、マンデー予選があったからこそ、夢を成し遂げることができ、その素晴らしいドラマを目にして「いつかは自分も」と目を輝かせたゴルファーは少なくなかったはずである。
スポンサー推薦を得て試合に出場し、上位入りを重ねることでPGAツアーのメンバーシップを獲得した例は、これまでいくつもあり、丸山茂樹も松山英樹もスポンサー推薦によるスポット参戦からスペシャル・テンポラリー・メンバーへ、正式メンバーへと進んでいった。
ジョーダン・スピースも、まさに同じ道を駆け上り、史上稀なるスピード出世を披露。上を目指す若いゴルファーたちの間では「ジョーダン・スピースする」という新たな動詞が口ずさまれる現象も巻き起こった。しかし、マンデー予選やスポンサー推薦が大幅に減らされ、ましてや皆無になれば、そうした劇的なドラマも今後は見られなくなる。
米メディアの多くも「この縮小案には、いい面、悪い面の両方がある」と見ており、「夢がなくなる」「ドラマがなくなる」ことは何よりのデメリットだという意見が多数聞かれる。そして私も、夢やドラマがなくなるPGAツアーは味気なくなってしまうのではないかと不安さえ感じている。
この縮小案が理事会で否定されることや撤回されることは、もはや無いと思われるが、「その代わり」に、ドリーム・カム・トゥルーのドラマが生まれそうな新たな施策がPGAツアーによって考案され、実施されることを願いたい。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)