賞金女王を決めた瞬間の稲見と奥嶋氏
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シーズン9勝、東京五輪の銀メダル獲得、そして賞金女王。激動の一年を過ごした稲見萌寧は、宮崎の地で頂点に輝いたとき大粒の涙を流した。だが、そこに至るまでに22歳は今年何度もほほを濡らしていた。
最初に公の場で見せたのはうれし涙だった。2021年の2試合目、高知で行われた「明治安田生命レディス ヨコハマタイヤゴルフトーナメント」。2位に3打差をつけて首位でスタートした最終日。これまで見せていた安定感がウソのようにスコアを落として永井花奈に追いつかれてしまい、プレーオフへと突入する。
難ホール18番で行われ戦いは3ホールに渡るサドンデスとなったが、祖父から受け継いだ座右の銘に掲げる『忍耐』の通り我慢を重ねてパーで相手を退けた。その直後に行われた優勝インタビューで「つらかった」と胸のうちを明かしたときに思いがあふれた。