ブランド立ち上げから3年 満を持して登場した軽量モデルの「中調子」
『Diamana™』や『TENSEI™』など、アスリート系シャフトで高い支持を受けてきた三菱ケミカルが、総力を結集して作り上げた“超精密軽量ブランド”が『VANQUISH™(ヴァンキッシュ)』だ。2022年に先調子系シャフトの初代『VANQUISH™』が発売されると、軽量化によるスピードアップとそれを効率良く初速に変換する最適設計によって“飛距離が伸びる”と大きな話題を呼んだ。
そして今回、初代『VANQUISH™』の発売から3年が経ち、満を持して発表された最新モデルが「中調子」設計の『VANQUISH™VV(ヴィヴィ)』だ。高弾性素材をふんだんに使い、しなやかなしなり戻りと強烈な弾きを生む最適設計を採用。前作に引き続き、「±1」の超精密設計で製造され、30グラム台から50グラム台までの重量帯でさまざまなフレックスのシャフトをラインナップしている。さらに今回注目なのが、より幅広いゴルファーが性能を実感できる「中調子」に仕上げられていることだ。
一般的に中調子のシャフトは、先調子に比べて振り心地にクセがなく、幅広いゴルファーにフィットするモデルが多いと言われるが、“超精密軽量シャフト”の最新モデル『VANQUISH™VV』とはどんなシャフトに仕上がっているのか。今回は発表に先立ち、プロトタイプシャフトの入手に成功したので、2人のアスリートゴルファーに最新モデルの性能をチェックしてもらった。
中島「クセがなくて振りやすいし、助けてくれる性能もある」
最初に試打を行ったのは“マイネク選手”の中島。平均飛距離250ヤードオーバーの飛ばし屋で、現在、9度のヘッドに中調子系シャフトの“5S”を装着して使用している。左のミスを避けるためにしっかりしたシャフトを選択したものの、ヘッドが戻り切らずに右プッシュのミスが出ることが最近の悩みだという。
まずはマイクラブのスペックに近い『VANQUISH™VV』の“5S”を試してもらった。
「すごくシャフトの動きが安定していて、振りやすいです。クセがないので切り返しでタイミングを取りやすいですし、それでいてヘッドがしっかり戻って来てくれる感覚もありました。ヘッドがしっかり付いてきてくれて、離れても行かないので、今まで感じたことのない扱いやすさがあります。操作性が高いのに、助けてくれる性能があるのは不思議な感覚です。ミスをしたときでもボールの曲がりが小さく、ほぼストレートに近い弾道で飛んでくれたのは驚きでした」(中島)
「最近はずっと上手くヘッドを戻せていなくて、スイングに細工を加えて打つような状態でした。なんとか曲がりを抑えても、持ち球とは違うボールが出ていて不満でしたが、『VANQUISH™VV』を使うと、何も考えずにスイングして、ストレートに近いドローが出てくれました。振り方をあれこれ考えずに、打ち出しだけに集中できるので、コースで心強い武器になってくれそうです」(中島)
“5S”に続いて試したのはより軽量な“4S”だ。
「“4S”はヘッドスピードが出ますし、もっと飛ばせそうな気がしますね。過去にも40グラム台のシャフトを試したことがありますが、頼りない印象で使用には至りませんでしたが、『VANQUISH™VV』の“4S”は弾道のバラツキがないし、しっかり叩いていけます。軽い分、スイング中の腕のポジションがキープしやすくなって、より方向が安定する印象さえあります」(中島)
今回の試打では弾道計測に「GCクワッド」を使用。中島のマイクラブでは260ヤードに届かなかったものの、『VANQUISH™VV』の“5S”では262ヤード、“4S”ではなんと272ヤードをマークした。軽量化によるスピードアップでボール初速が62.3m/sまで伸びたことに加えて、スピン量が2,009rpmと少なく抑えられたことが圧倒的な飛距離アップをもたらした要因だった。
「『VANQUISH™VV』はヘッドを感じながらスイングできて、スムーズに振り抜いていけます。ボールの曲がりもフェアウェイの幅にしっかり収まってくれますし、飛距離も出てくれました。これだけ結果が出ると“4S”を使うのもアリに感じますね。試合でそのまま使えそうな完成度でした」(中島)
海老原「軽量なのにバラツキがないのは今までにない感覚」
続いて試打を行った海老原は平均飛距離290ヤードの飛ばし屋で、マイクラブでは元調子系シャフトの“6X”を使用している。50グラム台以下の重量帯になる『VANQUISH™VV』は本来、選択肢に入ってこないカテゴリだと言える。しかし、“5S”のシャフトを装着して弾道計測を行った海老原はその驚愕の数値に驚きを隠せない。
「軽量帯のシャフトと聞いて、8割程度のパワーで打ってみました。でも、『GCクワッド』で測った数値を見ると、普段マイクラブで思い切り振った時と遜色ないデータが出ています。特にボール初速が明らかに速いです。軽量帯のシャフトなのに再現性の高さも感じられる不思議なシャフトですね」(海老原)
「通常、軽量帯のシャフトはスピードを出しやすい一方で、思い切り振るとヘッドが付いてこない感覚がありました。しかし、『VANQUISH™VV』は強く振ってもシャフトのネジレが少ないですし、スピードを上げながらフェースをコントロールすることができます。正直、今までにない感覚で驚いています。スピンも少なく抑えられて、吹け上がることもありませんし、楽に飛距離を稼げるシャフトですね」(海老原)
試しに、海老原に全力で『VANQUISH™VV』の“5S”を振ってもらうと、ボール初速73m/s、打ち出し角14.5度、スピン量2,398rpmで飛距離314ヤードという驚異的な数値をマークした。
「マイクラブで出したことのない数値が出ました。正直、軽量帯のシャフトは選択肢として考えていませんでしたが、これだけ飛距離が出て、安定感もあるとなると、コースで試したい気持ちになってきますね。今までレッスンをしている中で、お客さんにシャフトの相談をされた際に軽量帯のものはあまり勧めてきませんでした。どうしても軽量帯のシャフトに頼りない印象があり、シャフトにはある程度の重さと硬さが必要と考えていたからです。でも、『VANQUISH™VV』は軽量でもしっかりしていて、スピードを上げながら強く叩いていくことができます。もっと飛ばしたいと考える人は試す価値のあるシャフトだと思います」(海老原)
前作の『VANQUISH™』は先調子系シャフトで、鋭いしなり戻りでボールをつかまえつつも、高弾性素材と最適設計で弾道の安定性の高さを備えたモデルだった。最新モデルの『VANQUISH™VV』はスピードアップ効果で飛距離を伸ばしつつ、スクエアなインパクトを作りやすい再現性を重視したモデルへと進化を遂げている。従来の軽量シャフトにあった「頼りない」、「曲がる」といったネガティブなイメージを覆す革新なシャフトだと言えるだろう。現代の高慣性モーメントなドライバーとの相性も抜群に良いので、飛距離と方向性を両立したい欲張りなゴルファーにはぜひ『VANQUISH™VV』を試してみてほしい。
取材協力/GOLF & FITNESS POINT 芝浦
撮影、構成/田辺直喜