そんなワトソンが、過去3勝を挙げたトラベラーズ選手権で4度目の勝利ににじり寄った姿を見て、彼の温かい人柄を知るすべてのファンが3年ぶりの復活優勝を願っていたのだと思う。
しかし、たった1打の心の動揺から彼のゴルフは乱れ、勝利を逃した。成績不振に陥っても、大会への寄付を一度も欠かさず行なってきたワトソンが、あからさまに大崩れしていく姿は悲痛だった。だが、それが勝負の世界の厳しさなのだろう。
72ホール目に8メートルのバーディパットをねじ込んだハリス・イングリッシュ(米国)。ピン2メートルにピタリと付け、バーディパットを沈めてサドンデス・プレーオフに持ち込んだクレイマー・ヒコック(米国)。どちらも力強いガッツポーズを見せたが、こういう精神力と勢いを維持できない限り、米ツアーの熾烈な競争を勝ち抜くことはできない。
31歳のイングリッシュは米ツアー通算3勝で世界ランキングは19位。29歳のヒコックは米ツアー未勝利で世界ランキングは331位。実績ではイングリッシュが格段に上だが、それでも2人がまったく互角のプレーぶりを見せ、米ツアー史上2番目に長い8ホールものプレーオフを戦ったことは、戦いの大詰めでモノを言うのは過去の実績より何より、強靭な精神力であることを物語っていた。
最後は8ホール目でバーディパットを沈めたイングリッシュが勝利し、今季2勝目、通算4勝目を挙げたが、2人の勝敗は、まさに紙一重であり、TPCリバーハイランドの大観衆は勝者にも敗者にも大きく温かい拍手を送っていた。