昨今、値上がりの激しい海外メーカー製ドライバー。今年も新作を購入して「合わなかった」人も少なくないはずだが、それを防ごうとする量販店がある。ヴィクトリアゴルフを中心とした『VGFS』設置店だ。クラブに精通したフィッターで、人材教育担当でもある藍川朋久氏に話を聞いた。
『VGFS』とはVictoria Golf Fitting Systemの略で、クラブにセンサーを付けて試打するフィッティングシステムのこと。ゴルファーの【日替わりの調子】に左右されず、一人ひとりの振り方のクセを可視化し、合うヘッドとシャフトを推奨するスグレモノだ。ヘッドもシャフトも物性を捉えた膨大なデータベースを持ち、そこからヘッド・シャフト・スイングのマッチ度を総合的に「%」で表示する仕組みだという。
前回のテーラーメイド『Qi4D』やキャロウェイ『クアンタムMAX』に続き、6月11日には世界中のツアーでも使用者が増えているタイトリストの最新作『GTS』シリーズが発売される。
タイトリストといえば「アスリート向けだから、下手な自分には難しい」というイメージを持つゴルファーも少なくないはずだが、藍川氏は「今回のGTSはいい意味でそういった先入観を裏切ってくれます。むしろ、誰もが使える間口の広いモデルになっていますよ」と胸を張る。VGFSの計測データを交えながら、その進化した中身について詳しく訊いた。
■ PGA選手がこぞって『GTS2』を選ぶ納得の理由
今回の『GTS』シリーズの大きな進化は、ヘッドの前後にのみに金属を残し、それ以外をポリマーで覆った新構造にある。軽いポリマーで金属を置き換え、設計自由度が飛躍的に高まり、MOIも増加。詳細にヘッドを計測したデータにも顕著な変化が現れているという。
「まず一番の注目株である『GTS2』ですが、前作のGT2と比べて【重心角】が4.5度も小さくなっているんです。通常、セミアスリート向けからハードヒッター向けモデルに移行するときでも2~3度程度の変化ですから、4.5度差はかなり大きい。つまり、『2』でありながら“良くも悪くもつかまりすぎない”特性を持っています。PGAツアー選手がこぞって『2』にスイッチするのも、このデータを見れば納得です」(藍川氏)
さらに重心深度は気持ち浅めになり、お尻が落ちるような挙動が消えたことで、前に強く押し出す圧倒的な飛距離性能を獲得している。
「前に飛ばしやすいのは【初期設定】だけの話。重心が浅くなったといっても心配はいりません。今作は後方の可変ウェイトの種類が豊富で、フィッティング次第でいくらでも重心を深くさせられます。少し球が右に出てしまうと思ったら、ウェイト可変でジャストに合わせられる。VGFSの腕の見せ所というか、ご自身のスイングのクセを全てデータで可視化できますので、ぜひ『GTS』の細かなフィッティングに活用してほしいですね」(藍川氏)
■ タイトリスト史上初!? 460ccのロースピン怪物『GTS4』
一方で、これまでの歴史を覆すような変化を遂げたのが、低スピンモデルの『GTS4』だ。伝統的な小ぶりヘッドから、今作では『TSi3』の美しい顔を踏襲しつつ、体積が大きくなった。
「体積は大きくなりましたが、驚くべきは【重心距離】の差がほぼないことです。前作GT4が38.6mmに対し、今作『GTS4』は39.0mm。つまり、ある程度の操作感をキープしたまま、体積とMOIを大きくして打点のブレに劇的に強くしているんです。
今までの『4』は、スピンを抑えたくてもヘッドの小ささからくるシビアさがあり、構えてピリッとする人が多く、ミスヒットが多い人は使えませんでした(笑)。しかし今作は、操作を邪魔をせず、シンプルに“スピン量が多い人”なら誰もが恩恵を受けられる、新たな選択肢になりました。アスリート向けという枠をいい方向に外してきていますね」(藍川氏)
また、王道の『GTS3』も重心距離が前作『GT3』の37.4mm➡40.5mmへと一気に伸び、『2』の38mm台よりも長くなった。これにより「左へのミスを完全に消しつつ、圧倒的な直進性を手に入れました」と藍川氏。さらに今作は『2』『3』ともに重心がやや高めに設計され、可変ウェイトもフィッティングしやすく時短できるよう、いい方向に変更されたという。
「最近の低スピンすぎるドライバーで、球がドロップしてしまうアマチュアの方は本当に多いんです。かといって、心理的に【ロフト11度以上は使いたくない】という人もいます(笑)。今作は絶妙に重心を低くし過ぎず適正なスピン量を確保しているので、しっかりキャリーで飛ばせるツアーユースの仕様になっています」(藍川氏)
■ テーラーメイドは「シャフト軸」、タイトリストは「ヘッド軸」
前回紹介したテーラーメイドは2年周期の発売になることが発表され、今回のタイトリストと奇しくも偶数年の発売で被ることになる。2026年初夏に激突するアスリートブランドの2大巨頭だが、VGFSの視点から見ると、そのフィッティング戦略には明確な違いがあるという。
「テーラーメイドは純正シャフトに3つのローテーション指標(LR/MR/HR)を設け、VGFSのデータとも連動してバチッと合わせにいける点が大きいです。対してタイトリストは、伝統の『シュアフィット』システムを継承して変えないため、既存のユーザーがすでに『自分のエースシャフト』を持っていて、ヘッドだけ入れ替えるような方も多いですよね。
そのため、今作は『2』『3』『4』どれを選んでもウェイト可変量や重心距離の動かし方を同じにして、完全に『ヘッドの特性』だけで選べて微調整もできるようになっています。テーラーメイドが“真ん中のコアモデル『Qi4D』だけが異常に万能でフィッタブル”なのに対し、タイトリストは『2』『3』『4』すべてがフラットな横並び。拡張して考えると、まるで【3つのコアモデル】が存在するような状態です」(藍川氏)
ここで藍川氏は、VGFS流のクラブ選びにおいて、もっとも大切なキーワードを口にした。
「よく『タイトリストは難しい』とか、『●●はやさしいクラブ』などと、実しやかに言われますが、最近のクラブ作りを見ると、その定義に疑問を感じます。合っていないから“難しい”と感じるだけで、本当のやさしさとは【自分にとって振りやすいかどうか】。人によって打ち方が違うので、大雑把なイメージで決め付けると本質を見失ってもったいない。今回の『GTS』では特に今までの先入観を捨てて欲しいですね」(藍川氏)
■ FWは「アタックアングル(入射角)」で一発解決
その「モデルの難易度で選ばない」という思想は、同時に発売されるFWにも色濃く反映されている。今作はフェース面がシルバーになり視認性が向上。投影面積が大きくなった『GTS2』と、ディープな『GTS3』の2タイプがラインナップされたが、これもVGFSなら明確な基準で推奨が出せるという。
「結論から言うと、FWはVGFSで測る【アタックアングル(入射角)】で完全に仕分けができます。レベル(払い打ち)に打つ方は『2』、上から打ち込む方は重心がやや高めの『3』。VGFSではアタックアングルを正確に定義しているので、迷う必要がありません」(藍川氏)
さらに面白いのが、今回のFWは『2』も『3』もウェイトの重さが変わらず、配置も後方ではなく「前寄り」に設定されている点だ。
「FWに求められるのは、単なるつかまりだけでなく、地面から打つときの操作性と安定感。モデルによって差をつけすぎず、完全に“打ち方(入射角)”によって選べるよう設計されています。例えば、ティショットでの使用が大半な方なら、3Wだけ『3』にして、地面から拾いたい7Wは『2』にする、といった組み合わせも、VGFSで打ち方を分析して瞬時に導き出せます。良くも悪くも大きな差をつけず、安定感を出すのが最近のトレンドで、あまりローテーションせずに振るスイングにもしっかりマッチするFWですね」(藍川氏)
シリーズ全体として、やや重心距離を伸ばしてMOIを高めて安定感を高め、圧倒的にフィッティングしやすい性能も高めてきたタイトリスト『GTS』。これから始まる長~い夏に向け、OBの怖さを忘れさせてくれる相棒を、VGFSで見つけてほしい。
◎取材協力/ヴィクトリアゴルフ御茶ノ水店