2024年限りでツアーから撤退した上田桃子や、2025年のプロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花らが所属する「チーム辻村」。そのチームを率いるプロコーチ・辻村明志氏は、「山下美夢有プロなどトッププロのスイングは体重移動でなく重心移動を行う」と語る。その真相についてじっくり話を聞いた。
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かつてゴルフのレッスンでは、「体重移動」という言葉が頻繁に使われていました。バックスイングで右足に乗った体重が、切り返しをきっかけにダウンスイングで左足へ移動していくという考え方です。今でも「体重移動」という言葉を使うレッスンは少なくありません。
ただ、ボクは以前から、この「体重移動」という言葉に懐疑的でした。というのも、物理には質量保存の法則(化学反応が起きても質量は変わらないこと)があり、スイング中にゴルファーの体重(質量)が変化するはずがないからです。妄信的に使われてきたこの「体重移動」という考え方が、アマチュアがなかなか上達しない原因になっている可能性があります。
かつては「体重移動」という言葉が、軸の過剰な移動や喪失を招きました。いわゆるダウンスイングでの突っ込みは軸の過剰な移動ですし、一方、スエーやオーバースイングは軸の喪失と言っていいでしょう。
最近ではクラブやボールの進化により、スイング理論では体重移動よりも体の回転が重要視されるようになってきました。ボクも回転の重要性は否定しません。ただ、その一方で「体重移動」を軽視し過ぎると、手打ちやリズムのないスイング、飛ばない弱々しいスイングの原因になることも事実です。
結論を言えば、スイング中に体重そのものは変化しません。しかし、重心と圧力は確実に変化しています。ダウンスイングでは重心が少し下がりながら右から左へ移動し、それに伴って圧力も変化します。
これは左右それぞれの足を体重計に乗せてスイングすれば分かります。体重80kgの人なら、アドレスでは左右40kgずつを示すはずです。バックスイングでは右足側、ダウンスイングでは左足側の数値が増えますが、左右の合計はほとんど変わりません。ただ、切り返しやインパクトでは、一瞬だけ数値が大きく跳ね上がります。これは体重が増えたのではなく、圧力が増えたからです。プロレスラーがロープから飛び降りると体重以上の衝撃を生み出すのと同じ理屈で、一時流行した「地面反力」も、この圧力変化を利用したものです。
ボクは、体重移動を意識し過ぎることは、スイングにおいて百害あって一利なしだと考えています。しかし、体重は動かなくても、スイング中に移動するものがあります。それが重心です。実は、この重心の移動が圧力と回転を生み、そのエネルギーとスピードが飛距離につながっている。たとえ1軸スイングでも重心は移動しています。体重ではなく重心を意識するだけで、多くのアマチュアは上達する――そう考えています。山下美夢有プロなどトッププロは、体重移動でなく重心移動を上手く行っているから、飛距離と方向性を両立させられるのだとも言えるでしょう。
この重心を意識し、ボールに最大の圧力を伝えるスイングを体感できるのがペットボトルを使ったドリルです。用意するのは、ヒモを付けた水入りのペットボトル。最近はスマホを肩から掛ける人も多いですが、そのように首から真正面へ垂らしても構いません。
ペットボトルは、おヘソ付近に来る長さにします。アドレス時の重心はおヘソ下の丹田にあり、スイング中もそこを中心に移動するため、この位置が重心を意識するのに最適です。
まずは両手を後ろで組み、シャドースイングをしてみましょう。ペットボトルが大きく揺れるはずです。丹田にある重心は、バックスイングで右、ダウンスイングで左へ移動します。その動きによってペットボトルが揺れ、エネルギーやスピードが生まれていることを体感できます。無理にペットボトルを動かそうとしなくても、自然と大きく揺れるはずです。
次の段階では、そのペットボトルの動きに腕を同調させます。このときはヒモを長めにして、腕とペットボトルが絡まないように工夫してください。
スイングで難しいとされるテークバックの始動や切り返しも、重心がわずかに動くだけで自然とタイミングが身に付きます。逆に、この動きから腕が外れるのが、手上げや手打ち、スエーなどの原因であり、上達を妨げる大きな要因です。
1軸スイングでも重心移動は起きています。それもごくわずかですが、その絶妙なリズムとタイミングが飛距離と曲がらない強いボールを生み出しているのです。
このドリルが効果を発揮するのは、プレーンから外れる人、フェースが開く人、ダウンスイングで腰が抜けたり早く開いたりする人、そしてボールにパワーが伝わらない人。つまり、ほとんどのアマチュアゴルファーに効果が期待できるドリルなのです。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも指導。2025年は千田萌花、藤本愛菜をプロテスト合格へ導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフ指導に取り入れている。元ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』937号より抜粋し、加筆・修正しています