24日、グラファイトデザインがメディアや識者向けに、2027年モデルの新作『TOUR AD EK』(以下、EK)の発表&試打会を開催。6月の「ツアー選手権」から既にツアー供給され実績多数の同作が、これまでのシャフトの常識とは異なる興味深い進化を遂げていたため、長くなるが詳細にレポートしていきたい。
今回の『EK』は、『GC』や『FI』など芯金を太く一新した流れを踏襲しつつも、スピード感と適度なつかまりを追求した“新世代の走り系中調子”だという。「走る=つかまりすぎて叩けない、左のチーピンが怖い」とのイメージを抱きがちだが、試したプロ・アマ・識者から従来の走り系の常識を覆す驚きの声が相次いだ。
■手元のネジレ防止はフジクラの『白』とド被り!
まずは開発陣が明かした『EK』の設計意図について。長年ツアー担当を務めた高橋雅也氏によると「EXTRA KICK」頭文字の通り、【もう一押し】のパワーをボールに伝え、初速を極限まで引き出すことを目指して開発したとか。カラーリングはポルシェ「クレヨン」やアウディ「ナルドグレー」といった欧州車のトレンドでもある洗練されたソリッドグレーでアスリートにも評判のデザインだという。
設計面で特に注目したいのが、【手元側の剛性ではなく、ネジレをかなり抑えた】点になる。直近で既報の通り、フジクラの先中調子の新作『SPEEDER NX WHITE』でも同様に【手元側のネジレが排除されていた】が、奇しくも同時期に似た設計で被る結果になった。
グラファイトデザインは新技術【3D SPEED TORNADO】で、曲げ・ねじれ・つぶれの3軸の動きを最適にコントロールすることで、手元側の不要なバタつきをカット。さらに先端部を太く設計して剛性を高める【NEW SHAPE】や、つぶれを抑えるフープ層【AD SHIELD】を組み合わせることで「手元側は“硬い”ではなく“しっかり”で、中間から先端にかけてがしなやかに戻る」絶妙な味付けを施した。
これまでの同社の走り(ファストテーパー)系は、手元が硬く先が走ることで「切り返しでタイミングが取りづらい・暴れて左に巻き込む」と、多くの中元系を好む選手から敬遠されたそう。しかし『EK』は手元剛性は程々で、ネジレを排除することで【硬すぎず・粘り過ぎない】万人向けの切り返しフィールを実現。加えて、先太の芯金設計で叩きにいっても先端剛性が高めで分厚く押せる上、先中の大きなつぶれによるキック感でフェースが開かず鋭くオートマチックに戻る、押し感と右抜けしない程度の適度なつかまりの両立に成功した。
■元系の『DI』&『FI』愛用者たちが『EK』へ!
驚いたのがツアープロの移行状況だ。石川遼(GC)は「硬さはないが、手元側のねじれが非常に少ない。自分の打った感覚と球筋が一致する」とコメントし、長年『DI』だった松山英樹(FI)も「太さを感じるが、これまでにない打感でしっかり叩ける」と好感触を示してまさかの『EK』がスペア入り。さらにかつて『DI』ユーザーだった清水大成(GC)や大槻智春(DI)、篠優希(DI)らが『EK』に即スイッチし、女子ツアーでも元系だった都玲華(FI)や金田久美子(FI)が『EK』へ移行した。
ここで識者たちも首をひねったのが、「なぜ元系だった選手の多くがスムーズに移行できるのか?」という点だ。『DI』といえば復元の穏やかなスローテーパー系で手元も緩め。タメが作りやすくスチールシャフト『ダイナミックゴールド』と相性も抜群な不朽の名器だ。走り系の『EK』とは設計面で「対極」の存在だと言えるが、高橋雅也氏はこう解説する。
「最近のヘッドは高MOIで重心距離も長くなり、右へ滑ったり、スピンが減りすぎてつかまりきらない傾向の選手も増えています。長年『DI』を使ってきたパワーヒッターでも、最新ヘッドと組み合わせた際に『勝負どころで右に抜けたり滑ったりする』との声があるんですよ。松山英樹プロも元々右に滑るミスより左のミスの方が許容範囲と言っていて、元系だった人でも右に滑るミスを嫌がるのは、初速が落ちることも理由の一つですよね。
『EK』は手元のネジレを抑えてしっかり感は出しつつも“硬い”わけではないので素直に切り返せて、インパクト付近で動いて右抜けしない安心感がある。プロが嫌がる『滑り感』をかなり防げて、ボール初速を伸ばせます。しかも、つかまるのに左へ巻き込む程(チーピン系)の悪さもしません。だからこそ、実戦で『ナイスミス』に収まる信頼感から『DI』ユーザーのプロたちでもこの夏『EK』にトライできているのかなと思います」(高橋氏)
■横田英治&江澤亜弥も「初速が上がる」
女子プロコーチを務め「色々試しても結局は『DI』に戻ってしまってきた」横田英治プロは、自身が『EK』に移行できた不思議さを現代のスイング理論(Dプレーン理論や新球理論など)の観点から次のように話す。
「現代スイング理論では、インパクト前後でシャフトが余計な動きをしないことがグッドスイングの条件。動きすぎるシャフトはミスを誘発しますが『EK』はスイング中の余計な暴れが少ない。かといって『動かない=飛ばない棒のようなシャフト』ではなく、全体がしなやかに連動して程よいしなり戻りがある。動きすぎない安心感と飛距離性能が融合していて、コレこそ現代のど真ん中という感じ。なぜかクラブを軽く感じてHSと初速が1くらい上がるんですよ。元系だった人でも、数字で飛距離を見てしまうとそりゃ負けますよね」(横田プロ)
また、普段は『GC-5S』を使う江澤亜弥も『EK-5S』を試打。レンジボールモードとはいえ【キャリー233yd】という飛距離に目を丸くしていた。
「実は私、走るタイプのシャフトって切り返し初期で被る感じがして、ちょっと苦手意識があったんです。でも『EK』は手元側がしっかりなのに、強めに押し込んでも嫌な動き方をしない。先端はちゃんと戻ってくるのに、その戻り方が『すごく心地よくてちょうど良い』んです! 初速もパンと強く出てキャリーもしっかり稼げますし、右に逃げそうなミスヒットでも球が粘って耐えてくれますね」(江澤プロ)
■記者は『EK』で「つかまって上がる」結果
続いて、HS47m/sのローフェーダーの記者(GTS2 10.0度×24ベンタスブラック6Sがエース)やHS44m/sの営業担当者が実際に『EK』を試打したリアルな感想について。まず営業Oが感じたのは、スペック上の重量よりも「軽く感じた」という点だ。ブリヂストン『J815』の「ヘッドを軽く感じてしまうので、少し重めに替えたくなった」とのこと。営業Oはチーピン癖を持っているが中弾道フェードに変化し、ヘッドを軽く感じたせいか薄めの当たりが多かったものの「球が強いから距離が出る印象」とのことだった。
次に、元系しか選んで来なかった記者。結論から言えばまさかの「エース交代」で『EK-6S』は『GTS2』のポテンシャルを活かせて、持ち球のローフェードorローフック系のミス多発から、中弾道ドローor高弾道フェード系のミスになり、打点が外れた割には距離が落ちづらい結果に。直近で『SPEEDER NX WHITE』×『Qi4D』をインドア施設で試した際はつかまえきれなかったが、『EK』は真逆になった。
暑い屋外と条件が違うため比較にはならないが、手元側のネジレの少ない切り返しフィールは「似ている」と感じた。ただ『SPEEDER NX WHITE』は全体に張り感が強くパワー不足の人が軽快に弾き飛ばせるタイプなのに対して、『EK』は芯金の太さや先中のつぶれの影響か、少し間を取れて「自分で押せる」ため球持ち感もかなり長く感じた。(編集部M・K)
【製品概要】
製品名:TOUR AD EK
発売日: 9月4日(金)
価格:49,500円(税込)
調子:中調子
SPEC: ●EK-4/R2 (48g) / R1 (49g) / S (50g) / X (51g) ●EK-5/R2 (55g) / R1 (56g) / SR (56g) / S (59g) / X (64g) ●EK-6/S (66g) / X (68g) / TX (70g) ●EK-7/S (74g) / X (77g) / TX (78g)
