14年ぶり2度目の日本開催となった今大会は、太平洋クラブ御殿場コースが舞台。国内男子ツアーではおなじみ「三井住友VISA太平洋マスターズ」に加え、2001年の「ワールドカップ・オブ・ゴルフ」、今年4月にはDPワールドツアーの「ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!」など多くの国際大会を開催してきた名門コースで、10人の日本勢が躍動。次世代の若手がハイレベルな戦いを見せた。
日本勢10人、全員が決勝へ進出。そのレベルの高さを存分に発揮
09年から始まった「アジアアマ」は今大会で15回目を迎えた。歴代覇者には松山英樹、金谷拓実、中島啓太が名を連ね、日本人にとって相性のいい大会。さらに14年ぶりの日本開催で10人のサムライが4日間を戦い抜いた。
開幕前日の水曜日には、松井琳空海(まつい・りうら/香川西高)、佐藤快斗(東北福祉大)、本大志(もと・たいし)の3人が記者会見に登場し、それぞれが今大会への思いを話したが、14年ぶりの日本開催を好機と捉えていた。
「日本人としてチャンスだと思います。出場できなかった選手の分、頑張っていきたいです」(本)、「今年は日本開催ということもあるので、最後まで優勝争いに絡んでいきたいです」(佐藤)。さらに、松井は「自分を信じて、仲間を信じて頑張りたいです」と今大会に並々ならぬ思いを持って挑んだ。
その言葉通り、3選手はもちろん出場10選手全員が決勝ラウンドへ駒を進めた。しかし、決してラクな展開ではなかった。今大会は天候に翻弄された4日間となり、初日は午前中に青空が広がったものの、午後には次第に雨が降り始め、目まぐるしく天候が変わった。さらに2日目は濃霧の影響でスタートが6時間半の遅れ。さらに午後5時22分に日没サスペンデッドが決定し、ほとんどの選手がホールアウト、さらにスタートすらできない選手も出た。
2日目はコースで待ちぼうけを喰らった選手も多く、丸尾怜央(まるお・れお/日章学園高)もその一人。「ホテルでゆっくりしていました」と体を休めながらスタートまでの時間を過ごすなど、進行の遅れが選手のパフォーマンスにも影響をおよぼした。
初出場で、御殿場コースのラウンド自体も初めての丸尾は「いつもテレビでプロの大会を見ていたのですが、思っていたより難しい感じがします。もっと平らなイメージがあったのですが、アップダウンもあって、富士山からの傾斜も難しいです」と口にしていたが、しっかりとその実力を発揮。最終的には首位と3打差のトータル9アンダー・4位と日本勢2番手となる好成績をおさめた。今年6月には「全英アマ」にも出場し、世界の舞台へ挑戦する17歳の可能性が感じられた一戦となった。
さらに、3日目は一日を通して雨が降りしきるコンディションとなったが、今回が2回目の出場となる隅内雅人(日大)も追い上げをみせて、順位を上げた。
茨城県出身でジュニア時代から存在感は抜群。高校2年時にはプロトーナメントで最年少ホールインワンを記録も打ち立てた。昨年はJGAナショナルチームのメンバーにも入り、海外試合にも出場して腕を磨き、2年前のタイ開催の本大会では5位タイに入っている。
「1回目より気合が入っています」と力を込めて臨んだ今大会は、第1ラウンド、第2ラウンドと伸ばしきれなかったものの、日曜の朝までかかった第3ラウンドで上位戦線に浮上。最終ラウンドでは4日間の自己ベストとなる「66」をマークし日本勢3番手、トータル7アンダー・5位に入った。日大ゴルフ部の活動拠点でもある三島から目と鼻の先、いわば“ホーム”で最後の最後に意地を見せつけた。
日本のトップランカー・中野麟太朗は単独首位で決勝へ進むも…
日本のエース・中野麟太朗(早大)は、悪天候により順延続きと不規則な毎日のなか、第1ラウンドを終えて2位タイ、第2ラウンド終了時点では単独首位に躍り出ていた。
レギュラーツアー開幕戦「東建ホームメイトカップ」に出場した際、「アジアパシフィックアマチュア選手権で優勝すること」を目標に掲げていると、シーズン当初からこの大会で栄冠をつかむことを思い描いてきた。強い意志を持って今大会に挑んだ。
練習日には「ゴルフの調子はいいと思います。ショットは自分の打ちたい球が出ているので、いい感じです。その半面、ドライバーが少しちらかっている」と不安要素も感じていたようだが、それを払拭するかのようなプレーを予選ラウンドでは見せた。
しかし、第3ラウンドでは「70」のイーブンパー、2打差の3位に後退。迎えた運命の最終Rは、前半で2つ落としたものの、後半は5つのバーディを奪う追い上げを見せたが、2打届かず敗戦に涙を呑んだ。
「皆さんをがっかりさせたかもしれない」。母国で期待も高かっただけに、その悔しさは計り知れない。「ショットが良くなりつつあると思っていたのですが、マスターズやアジアの一番がかかった大会でまだその精度はない。こういう場所に来ないとわからないことです」と、言い訳はせず素直に実力不足を認めた。ただ、母国で見せたその雄姿は多くの人の心に刻まれたはず。「また頑張り直したい」とこの敗戦を糧に、前を向いた。
ベテラン達が見せた雄姿
出場選手のほとんどが10~20代のフィールドの中、特別招待枠で10人目の枠に入った47歳の豊島豊も奮闘を見せた。「日本ミッドアマ」で通算5勝、2021年からは3連覇を果たしている実力者。「(日本勢)10人が全員通過しなければいけないという義務もありますし」と、国内では有名な“社会人ゴルファー”が、大学生や高校生、アジアの強豪にまじり、踏ん張った。
第1ラウンドは「71」と奮闘を見せたが、第2ラウンド以降は「74」、「74」、「78」と苦しい展開となり、結果は日本勢で10番手の56位タイで大会を終えることとなったが、「最後の枠で選んでいただけたのは光栄なこと」と充実の4日間を過ごしたベテランの表情はどこか清々しかった。
さらに、今大会の出場選手で最年長はなんと66歳。レバノンから来たラシッド・アクルという選手だ。トランスポーテションサービスを展開する会社経営の傍ら、国内唯一となるゴルフ場、レバノンゴルフクラブのメンバーで週5日間、9ホールをプレーし、毎日100球のアプローチとパッティングの練習で腕を磨く、ゴルファーだ。
初来日でその実力は発揮できず、惜しくも予選落ちに終わったものの、陽気で明るい性格のアクルは「ゴルフに年齢は関係ない。何歳になってもゴルフをプレーすることができるし、自分自身もゴルフをしていると健康だな、パワーがあるなと思えるので、すごく幸せなんだ。ゴルフの調子が良くも悪くも、自分は幸せであるっていうメッセージを送りたい」とゴルファーに向けてこんな言葉を残した。10~20代の若手の中で懸命にプレーする大ベテランは、出場120人の中で誰よりもゴルフを楽しんでいた。
数多くのスポーツを支える「ロレックス」が大会をサポート
スイスの腕時計ブランド「ロレックス」は、さまざまなゴルフプレーヤーや大会とパートナーシップを結び、ゴルフの発展に貢献している。熱い戦いが繰り広げられた今大会のスポンサーも務め、富士の麓で輝くゴールドのベゼルのクロックが、その格式の高さを感じさせた。
正確性、優れた機能性、知名度の高さ、どれをとっても世界ナンバー1。ロレックスとゴルフの関わりは半世紀以上にも及ぶ。アーノルド・パーマーとのパートナーシップを結んだことをきっかけに、ジャック・ニクラウスやゲーリー・プレイヤー、さらにタイガー・ウッズやアニカ・ソレンスタム、松山英樹ら、時代を彩るトッププレーヤーたちをテスティモニーとしてサポートしている。
また、男子の4大メジャー、女子の海外メジャー、米国選抜と欧州選抜の対抗戦の「ライダーカップ」など、世界規模の数多くの大会のタイムキーパーを務め、パートナーとなっているロレックスのサポートは、米国ジュニアゴルフ協会やアマチュアの大会にまで及び、将来有望な新世代の選手たちも支援している。
2025年はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイにあるエミレーツゴルフクラブのマジュリスコースが舞台となる「アジア太平洋アマチュアゴルフ選手権」。ゴルフの卓越性を永続させるため寄り添い続けるロレックスは、今後も、才能あふれるアマチュア達のサポートをしていくことだろう。