昨今、値上がりの激しい海外メーカー製ドライバー。今年も新作を購入して「合わなかった」と嘆く人は少なくないはずだが、それを防ごうとする専門店がある。ヴィクトリアゴルフを中心とした『VGFS』設置店だ。クラブに精通したフィッターかつ人材教育担当でもある藍川朋久氏に聞くこの連載。
『VGFS』とはVictoria Golf Fitting Systemの略で、クラブにセンサーを付けて試打するフィッティングシステムのこと。ゴルファーの【日替わりの調子】に左右されず、一人ひとりの振り方やフェース開閉のクセを可視化し、合うヘッドとシャフトを推奨。ヘッドもシャフトも物性を捉えた膨大なデータベースを持ち、そこからヘッド・シャフト・スイングのマッチ度を総合的に「%」で表示する仕組みだという。
今回は7月10日に発売されるプロギア『RS DUO』シリーズの初速性能と重心データの変遷について、藍川氏に熱く語ってもらった。トラックマンのエラーを疑うような「ミート率1.52」が連発した驚きと、前作との違いについて詳しく訊いた。
■「複合フェース」の構想は約10年前から!?
今年は3層のキャロウェイ『QUANTUM』や、2層のミズノ『JPX ONE』を中心にした「異素材複合・多層フェース」の高初速による飛びが話題。一見するとプロギアもそのトレンドを見て追従したかのように見えるが、藍川氏は「プロギアさんこそ、複合フェース研究が最も早かったメーカーです!」と熱く語りだす。
「今回の表面にカーボンを使う4層フェースは『どれくらい前から着想したか?』を開発の方に聞くと、考え方としてはカーボン複合を広めた初代『DUO』の時(2003年)から既にあったって。23年も前ですよ!? 当時は技術的に耐久性がクリアできなかったらしいですが、研究自体はずっと重ねていたみたいです」(藍川氏)
発売は他社に数ヶ月先を越されたが、20有余年をかけ温めてきた「積層フェースへの魂」。今回は親会社も巻き込み、特殊な接着剤の技術で製品化にこぎつけたという。カーボンフェースの多くは耐久性のため分厚くなり、打点感覚がボヤけがちなのに対して『RS DUO』は薄肉の複合構造フェースで払拭。
中間層に「ナイロンメッシュ」を挟み、表面はわずか10層の薄いカーボンで覆う4層構造だ。他社製では数千発で割れることもある中、徹底的な耐久テストで10層でも耐久性に自信をのぞかせる理由が、親会社である横浜ゴムの「先進技術部門(航空宇宙部門)」の接着剤(3層目)だった。
■ 硬化後も“たわむ”魔法の接着剤で初速◎
「通常の接着剤は硬化したらパキッと硬くなって、最内層のチタンをいくら薄くしても1枚の板が入るような状況になって反発を阻害します。逆に柔らかい接着剤はインパクトのエネルギーを吸収してしまう。そこで、エネルギーロスの発生しづらい特殊な柔らかい接着剤を使用することで、カーボンもたわむし内層のチタンもたわむ。そこが跳ね返すので、初速性能も上がる。この“たわみ”は我々でも打った【打感】ですぐ感じ取れますよ」
と、実際に打って説明する藍川氏。表面はカーボンでもフルチタンと遜色ない音が響き、驚きはその試打データだ。打点がトウや上下にバラついたにもかかわらず、トラックマンのミート率「1.52」が表示され続ける。わざとヒールや下に大きく外すとようやく1.42や1.43に落とせたが、広範囲で1.50以上の初速性能をマークした。
「いや、本当に1.52しか出ない(笑)。真ん中を外したり、インテンショナルにトウや下に外して打ってもコレですからね。普通ならミート率が1.45以下に落ちる当たりで1.5に近い表示には驚きです。これだけ初速性能のスマッシュ(ミート率)が出てしまうと、他のドライバーには戻れないかもしれません…」
この初速性能は、プロギアの代名詞でもあった「深重心」から転換し、「重心深度を前作より全体的に浅くした」ことも大きな理由だという。
■やや “浅重心”への転換もダブルで効く
「今回のモデルって、前作より重心深度が全体的に浅いんです。これまでのプロギアって“深重心でやさしくつかまって上がる”イメージもありましたが、今作は一転して浅い。ただつかまえるだけじゃなくて、各モデルで徹底的に距離を出しに行くための設計変更なんだな、と詳細計測で見えてきました。カーボンの表面もブラスト処理とスコアライン加工がされていて、様々な環境で安定したスピン性能が得られるような工夫がされていますね」
浅重心化は、お尻が落ちてロフトが寝る挙動を抑え、前に押せるため強弾道になりやすいと説明する藍川氏は、DUOフェースとの相乗効果で初速が出ると解説。ただ、浅重心と聞くと「難しくなる」「つかまらなくなる」と先入観が頭をよぎるが「そこが今まで緻密な重心設計をやってきたPRGRの凄さ」と太鼓判を押す。
「浅くなった≒難しいじゃなく、開閉が緻密に考えられていて全然つかまります。距離を最大化するため重心を深すぎないようにしつつ、重心距離と重心角の絶妙なバランスでやさしくスクエアに戻ってくれます。前作はノーマルの『RS』も『RS MAX』もつかまり寄りでしたが、今回は3つを均等配置して選びやすくした印象。ヘッド体積も445➡450➡460とフローしていますし」
この均等配置を「VGFS」側としても、いちフィッターとして歓迎する藍川氏は、計測データでも「3つがどれだけ最適化されたかが分かる」と説明していく。真ん中にくる『RS ドライバー』は、前作の『RS』に比べて重心距離が1ミリも変わらず。ほぼ近い振り感を維持しつつも、重心角は前作より約2度小さくなったとか。
■ 3つのヘッドを「均等に」再配置した
「前作は『RS MAX』とつかまり具合が近く、『RS』自体がかなりつかまり寄りでした。今作は『RS MAX』はしっかりつかまらせる位置で、『RS』はニュートラルになり、つかまり寄りの真ん中という感じですね。私も前作『RS F』を使用してきましたが今作は『RS』を選びます。シャフト次第で幅広く使えますから」
やさしい位置づけの『RS MAX ドライバー』はどうか。シリーズ最大級の直進性を誇る慣性モーメントの大きなモデルだが、前作に比べて製品特性が一番大きく、良い方向に変わったという。
「前作は『一番つかまりますよ』とは言いつつも実は重心距離が長く、ある一定層には返しづらいシビアさもありました。今作はそこを2㍉ほど短くし、逆に重心角を大きく変更。前作の弱点だった『一部への戻りにくさ』を消し、安心感はそのままにラクにハイドローが打てます。それでいてウェイト変更である程度打てる人にも使える汎用性もあります」
アスリートモデル『RS F ドライバー』は、しっかり叩けるフェードバイアス&フラットライの限定作だが、さらに左を消せる仕様に。「今作は一気に小ぶり(445cc)にして操作性を高めています。重心角も前作より3度以上小さい25度と『GT4』的なつかまらせない設計。低スピンの高速フェードを求める人がぶっ叩いていけますね」
「1.52連発はトラックマンの設定によるものではないのか?」としつこく問うものの、否定する藍川氏。実は店舗移転に合わせて機材も一新されており、「数字が甘くなる類の設定はしていません」と胸を張る。ミート率の真偽はお近くのVGFS設置店でぜひ確かめてほしい。
◎取材協力/ヴィクトリアゴルフ イオンスタイル碑文谷店
