日本勢が苦しんだ名門ロイヤル・メルボルンGCの風とグリーン 課題を胸にそれぞれの道を歩む【アジアパシフィックアマチュア選手権ルポ】
オーストラリアの名門 ロイヤル・メルボルンGCに挑んだアジアの精鋭アマチュア。難コースに苦戦を強いられる中、ゴルフのサポートを続けるロレックスが4日間、「頑張れ!」と温かく見守るような大会でもあった。
配信日時:配信日時: 2023年11月3日 00時00分
Round 4 | ||
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順位 | Sc | PLAYER |
1 | 1 | ジャスパー・スタッブス |
2 | 1 | ディン・ウェンイー |
2 | 1 | サンプソン・ユンヘ・ジェン |
4 | 2 | チュアンタイ・リン |
4 | 2 | マックス・チャールズ |
6 | 4 | カズマ・コボリ |
7 | 6 | グエン・アン・ミン |
7 | 6 | マーカス・リム・パン・チュエン |
9 | 7 | ジェフリー・グアン |
10 | 8 | ビリー・ダウリング |
過去に「プレジデンツカップ」が行われたこともある、オーストラリアの名門 ロイヤル・メルボルンGCで開催された第14回「アジアパシフィックアマチュアゴルフ選手権」。優勝者には翌年の海外メジャー「マスターズ」と「全英オープン」の出場権が付与されることもあり、各選手が優勝を目指し奮闘したが、難コースを前に大苦戦。大会史上初めて優勝スコアがオーバーパーとなる我慢大会となった。
優勝候補・杉浦悠太と関西学生王者・下家秀琉が難コースを攻略できず予選落ち
2009年から始まったアジアアマは今大会で14回目。歴代覇者には松山英樹、金谷拓実、中島啓太が名を連ね、日本勢4人目の快挙達成を目指し、8人が出場した。
9月のABEMAツアー「ダンロップフェニックストーナメントチャレンジinふくしま」にて優勝し、今大会出場選手で世界アマチュアランキングトップに立つ杉浦悠太(日大4年)。優勝の先にある「マスターズ」出場を目標に掲げて、今大会に挑んでいたものの、傾斜がきつく、12フィートを超える高速グリーンを前に、ショットでチャンスにつけてもスコアを伸ばしきれなかった。これを決めれば予選通過という18番でのパーパットを外し「こういうパットを決めないと…」と唇をかんだ。
今年の「関西学生ゴルフ選手権」を制し、「日本アマ」でも4位タイに入るなどの結果を残していた下家秀琉(しもけ・すぐる、大阪学院大4年)も、グリーンに対応しきれなかった。「初めてコースに打ちのめされました。今の実力だと思います。いい経験でした」と、世界で戦う厳しさを痛感。再来週のセカンドQTでの再起を誓って、オーストラリアを後にした。
昨年3位の鈴木隆太、「日本アマ」チャンピオン中野麟太朗も苦戦
昨年のアジアアマで日本勢最高位3位タイに入った鈴木隆太(日体大3年)、日本アマを制した勢いそのままにオーストラリアに乗り込んだ中野麟太朗(りんたろう、早大2年)も、難コースを前に苦戦を強いられた。
鈴木は「攻め過ぎて空回りしました」と、4日間トータル24オーバーで59位タイ。「あと少し手前に落ちていれば(転がって戻って)チャンスだった」と、2段グリーンの上につけてスコアを崩す場面が目立った。あとわずかのズレを調整するショット力、そしてマネジメント力を磨き、リベンジに燃える。
中野は初日に1ホールで12打を打つ苦しいスタート。最終日に1アンダーのゴルフを披露したが、28位タイと不完全燃焼に終わった。「もっといろいろなショットを打てないとこういう舞台では戦えない」と、自分のやるべきことが明確になった4日間。「自分が大学生のときに日本でアジアアマが開催されるのはラッキー。最高の成績で終えたい」と、すでに太平洋クラブ御殿場コース(静岡県)で開催される2024年大会に意識は向いている。
日本勢最上位11位の山下勝将だが「調子が良くてもスコアを伸ばせない」と悔しさ明かす
昨年大会では35位タイと悔しい結果に終わった山下勝将(まさゆき、近大3年)は、この1年、プロで姉の美夢有とショートゲームを磨き、上位進出を目標に掲げ大会に臨んだ。
初日は「73」とまずまずの滑り出しを見せた山下は、2日目に「70」をマークしてトップ10に浮上。「今日イーブンで回れればトップ5は見えてくる」と挑んだ3日目だったが、強風の中で「風を読み切れなかった」とグリーンをとらえきれず、「76」で12位に後退。
目標とするトップ5に3打差の位置でスタートした最終日は、焦りからのマネジメントミスに加えてアンラッキーもあり「74」。トータル9オーバーの11位。日本勢最上位でのフィニッシュとなったが、「ショットの調子がいいのに、スコアを伸ばせなかった」と悔しさも残る大会となった。
佐藤快斗、松井琳空海、大嶋港の高校生トリオが躍動
初日を日本勢トップの9位タイでスタートした埼玉栄高校3年生の佐藤快斗。初めての海外での試合となったが、冷静に、淡々とプレーし続けた。それでも強風とグリーンの難しさに悩まされ、トータル18オーバーの41位タイでのフィニッシュ。「ドロー以外の球もないとダメ」と、どんなコースにも対応できる選手を目指し、松山英樹らを輩出した名門・東北福祉大学の門を叩く。
日本勢最年少の松井琳空海(りうら、香川西高2年)は、トータル10オーバーの12位タイフィニッシュ。4日間で12個のバーディを奪う活躍を見せたが、20ボギー・1ダブルボギーという結果に「インポジション(バンカーや池を気にすることなく狙える位置)にボールを置くことの大事さが、より分かった」と、日本ではなかなか経験できないコースで学びを得た。「来年は本気で獲りに行きます」と、今大会で得た経験値を力に変え、日本開催でのアジアアマ制覇を目指す。
「日本男子ツアーのQT の結果によって、今年が最後のアジアアマになるかもしれない」と話していた大嶋港(関西高3年)は、松井と同じく12位タイで今大会を終えたが、「もっと上を目指していたので悔しいです」と正直な心境を吐露した。大嶋のスコアの明暗を分けたのはショットの安定感。初日と3日目は「左のミス」が出てしまった。「簡単にボギー、ダボを打ってしまうところはまだまだ」と反省し、来週の「マイナビABCチャンピオンシップ」、再来週のセカンドQTに挑んでいく。
各選手が口をそろえて「もっと上にいきたかった」と話す結果となった今大会。選手たちは、それぞれが今後戦うために磨くべきもの、新たに身につけるべきものがはっきりと見えた4日間となったはずだ。この悔しさ、経験を糧に、どんな成長を遂げるか楽しみにしたい。
ゴルフ界を支える「ロレックス」が大会をサポート
「マスターズ」や「全英オープン」といった最高峰の試合で目にするスイスの腕時計メーカー「ロレックス」の大きなクロックが、「アジアパシフィックアマチュア選手権」のティイングエリアでも選手たちを見守った。正確な計時、優れた機能性、知名度の高さ、どれをとっても世界ナンバー1。これがあるだけで、大会の雰囲気が引き締まる。
そんなロレックスは、精度の高いプレーを追求するというゴルフの本質に親和性を感じ、半世紀以上にわたってサポートを続けている。きっかけはゴルフ界が生んだスーパースターのアーノルド・パーマーとの絆。それに続いてジャック・ニクラスやゲーリー・プレーヤー、さらにタイガー・ウッズ、アニカ・ソレンスタム、松山英樹ら時代を作るトッププレーヤーをサポートしてきた。
また、男子の4大メジャーや女子の海外メジャー、米国選抜と欧州選抜の対抗戦「ライダーカップ」など、世界規模の数多くの大会のタイムキーパーを務め、パートナーとなっているロレックス。将来有望な選手たちをサポートする目的で、「アジアパシフィックアマチュア選手権」のスポンサーにもなっている。
今後も、ロレックスはゴルフの卓越性を永続させるため寄り添い続ける。今大会に出場した8人が、悔しさを胸に道を進み続ければ、いつの日かテスティモニーとして名を連ねるかもしれない。そして、日本開催の2024年も、太平洋クラブ御殿場コースでロレックスのクロックが選手たちを見守るだろう。
アジアパシフィックアマチュア選手権
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