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飛距離と精度…山下美夢有が海外で乗り越えた“葛藤” 子どもたちへメッセージも「技術を高める練習をすれば…」

山下美夢有が海外ツアーで抱えた葛藤を明かした。

所属 ALBA Net編集部
間宮 輝憲 / Terunori Mamiya

配信日時:2025年8月6日 08時25分

先週行われた「AIG女子オープン」(全英女子)を制し、5日に凱旋帰国を果たした山下美夢有は、「小さい頃からの夢だった」というメジャー優勝を振り、笑顔を浮かべた。ただ、今季から米国ツアーに主戦場を移したことで抱えた“葛藤”についても、取材で明かした。

【写真】帰国会見では涙を流すシーンも

「飛距離を伸ばしたいと思ったこともあった」。日本で通算13勝を挙げ、2022、23年には年間女王にも輝いた山下の生命線といえば、22年に75.1543%でツアー1位に輝いたパーオン率などにも表れるショット力と、小技をはじめとした精度の高いプレー。米国でも79.79%で現在4位のフェアウェイキープ率や、62.75%で2位のサンドセーブ率など、“らしさ”が伝わる数字を並べている。

一方で、身長150センチと体は決して大きくなく、昨年の日本ツアーでもドライビングディスタンスは236.36ヤードの53位。圧倒的パワーをもつ海外勢のなかだと、今季は平均245.22ヤードという数字を残すが、その順位は146位になっている。

そして前述したように、米国では“飛距離”を求めようとした時期もあったという。しかも、それは今シーズンの話。今まで以上に負荷の強いトレーニングで汗を流し、「10ヤードくらい伸びたらいいなとか思っていましたね」と、“海外仕様”を求めたことを明かす。しかし、続けていくなかで、こんなことを感じたという。

「いろいろ考えてしまう部分がありました。それ(飛距離への取り組み)がマイナスになっていた部分…、少なくともプラスにはなっていなかったですね。人それぞれ体もコンディションも違う。今できることをやるのが大事だなって」

この転換期については7月のメジャー「エビアン選手権」前だったことも明かす。つまり、先月までは飛距離と精度の葛藤の真っただ中にいたことになる。それを乗り越えるには、コーチを務める父・勝臣さんの言葉も大きかったという。『もう少し違う方向性で考えたほうがいい。どうやったらバーディが取れるか、とか』。この言葉で、自らのスタイルを貫く決心がついた。「そんなにすぐ(飛距離は)伸びるものでもない。ここから少しずつ伸びてくれたらいいな、くらいの気持ちになれました」。今後、上げていきたいスタッツ面について聞かれると、今でははっきりと「ショートゲーム」と答える。

優勝した全英は、まさに山下らしさが詰まった勝ち方でもあった。強風のなかでもドライバーをフェアウェイに置き、そこから安定したショットでチャンスを作り出す。最終日の13番パー5は、ティショットをバンカーに入れ、2打目は出すだけ。さらに3打目もグリーン乗らず、アプローチでも8メートルと寄せきれなかったが、それをねじ込みパーを拾うしぶとさが光った。飛距離のビハインドなど感じさせない、そんなゴルフだった。

山下は5日に行われた空港での取材、さらに夕方に出席した日本記者クラブの会見で、ゴルフに熱中している子どもたちや、今後プロを目指す選手たちに、以下のようなメッセージを送った。

「飛距離ではなくて、違うことを練習していけば絶対に勝てると思った。子どもたちもプロを目指している子も、飛距離だけではなく、技術を高めるため、ショートゲームなど細かい部分を練習すれば優勝に近づけると思います」

それは、一度は飛距離に傾倒しそうになりながら、それでも自分のプレースタイルに立ち戻りメジャーで勝ったという事実により説得力が増す。今回のメジャー優勝と、これまで達成してきたことの違いについては、こう話している。「(最終日の)18番のフェアウェイを歩いている時、ギャラリーの多さも違うし、やっぱりメジャーって違うなって思える景色でした。絶対に忘れないなと感じました」。自らを貫いたことで、その美しい光景にたどり着くことができた。(文・間宮輝憲)

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