<リゾートトラスト レディス 最終日◇31日◇グランディ那須白河ゴルフクラブ(福島県)◇6500ヤード・パー72>
「さっきのは“ソク”ですか? “キャク”ですか?」。2日目終えて首位に立った都玲華は取材の輪が解けた後、顔なじみの記者にこんな質問をされた。都が口にした「私はもともとアシを使って打つタイプ」を文字にするなら、足首から先の「足」なのか、太モモから下の「脚」なのかという問いだ。ゴルフの世界ではよく聞く「アシを使う」「アシで打つ」という言葉をどちらのイメージで使っているのか、試合を終えた選手たちに聞いてみた。
まずはこの疑問のきっかけとなった都から。こちらの問いかけに「そんな難しいこと聞かないでくださいよ」と苦笑いしつつも、アドレスの体勢を取り、軽く体を動かして答えを探してくれた。「私は(テークバックで)右サイドを全部引き上げて、それを開放する感覚なんです。引き上げる時は右の太モモとかお尻の筋肉を使っているとも思うので“脚”ですね」。冒頭の記者には今さらながら“キャク”と答えを返しておこう。
しばらく考えて“足”という答えをひねり出してくれたのは大西翔太コーチ。「感覚的な言葉なのでどちらが正解ということはないと思うんですけど、個人的には足の方がしっくりきます。もっといえば、足の裏。“脚を使う”だと左右にスエーしそうなイメージがありますね」。足は縦の動き、脚は横の動きを連想させるようだ。
一方、安田祐香、吉田鈴からは「両方」という答えが返ってきた。「上体だけでスイングしないようにする時は脚を意識するんですけど、同時に足も使っていますね」(安田)、「足の指から神経が伝わって、脚全体に広がっていくイメージなので、両方大事だと思っています」(吉田)。話を聞いていた時はなるほどと思っていたが、文字にすると難解さが増す。
「アシを使う」意識がまったくないという選手もいる。今回話を聞けた中ではむしろ多数派だった。優勝した河本結は「軸で回転すれば、アシは勝手に使われる」、原江里菜からは「腕を振れば、アシは勝手に使われる」とかなり似た表現。今大会でドライビングディスタンス1位だったアマチュアの後藤あいもアシを使う意識はなく、足か、脚かという問いには答えようがないという。
さらに原は続けて「強いて言えば、太モモを使って左の腰を後ろ(背中側)に引くのが私にとってのアシを使うなので、自分のときは“脚”。でも、アシを使う選手というと右で蹴るイメージなので、自分以外の話なら“足”ですね」。原は現役でありながら解説者デビューを果たしており、2つの目線を持ち合わせているのかもしれない。
こうなると外国人選手の感覚も気になるところ。ウー・チャイェンは「台湾でも“アシで打つ”って言いますよ。ヨン・ジャオが“アシで”という意味です。足も脚もジャオなので、どっちかは考えたことがないですけど」。漢字で書くと「用脚」なのだが、日本語の脚と同じ意味ではないらしい。
それならば、英語はどうだろう。足は「foot」、脚は「leg」と区別があるはずだ。オーストラリアで生まれ育ち、アメリカの大学に進んだ肥後莉音に聞いてみると「スイングの話をしている時はfootもlegもほとんど出てきません。よく使うのはlower body(=下半身)です」。どちらかといえば、脚に近そうだが、これも同じとは言い難い。
話を聞いて分かったのは、ほとんどの選手にとって、しばらく考えなければ答えられない質問だということ。プロの繊細な感覚を完全に言語化するには、足と脚、2つの言葉では足りないのかもしれない。(文・田中宏治)
