2024年限りでツアーから撤退した上田桃子や、2025年のプロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花らが所属する「チーム辻村」。そのチームを率いるプロコーチ・辻村明志氏に、素振りの重要性についてじっくり話を聞いた。
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自分のスイングを動画で撮影し、それを見ながら練習している人も多いでしょう。また、YouTubeなどの動画サイトでは、一流選手のスイングを手軽に見ることができます。私がゴルフを始めた1970~80年代は、練習場の鏡や雑誌に掲載された一流選手の連続写真を参考にスイングを作っていました。弾道計測器の普及も含め、ゴルフの練習環境は大きく変わりました。
ただ、私が思うに、自分の動画を撮影し、それを参考に練習して本当に上達している人はどれくらいいるでしょうか。あくまで私の肌感覚ですが、せいぜい2割程度です。もちろん、スマホで簡単に撮影できる時代の練習法を否定するつもりはありません。しかし、プロの指導者として言わせてもらえば、上達する人が少ないのであれば、その活用法に問題があると言わざるを得ません。
録音した自分の声を聞いて、「自分ってこんな声だったの?」と感じた人は多いはずです。撮影したスイング映像も同じだと思います。「自分ってこんな変なスイングだったの?」と驚く人は少なくありません。中には「こんなの自分じゃない!」と怒る人も実際にいました。それは、自分のイメージとのギャップを感じるだけでなく、悪い癖ばかりに目が向いてしまうからではないでしょうか。
これはツアープロでも同じです。例えば上田桃子プロは、雑誌などに掲載された自分の連続写真を極力見ないようにしていました。嫌な癖ばかりが目につき、ときには落ち込んでしまうことがあるからです。名前は伏せますが、連続写真を見たことがきっかけでイップスに陥った一流プロもいました。
もちろん、悪い癖を修正することは重要です。しかし、一方で自分の良いところに目を向け、それを伸ばすことも上達には欠かせません。親がジュニアを指導するケースも多いですが、怒るだけでは子どもの可能性を狭めてしまいます。スイングの粗探しは指導ではありません。もっと子どもの良いところに目を向けるべきです。これは、自分のスイングを動画で撮影しているアマチュアにも同じことが言えます。
本当に良いスイングは、目に見える形だけではなく、目に見えない多くの要素に支えられています。具体的には、リズム、バランス、力感、エネルギーのリリース、体幹の使い方などです。
故・荒川博先生が上田プロを指導していた頃、ビデオ撮影をしていた私によく、「ツジ、今のスイング動画を残しておけ!」と言われました。それは、先生が納得したスイングだけを残せ、という意味です。納得できないスイングを何度も見返すのではなく、良いスイングだけを頭と体に焼き付けろ、という教えでした。
以前、王貞治さんに荒川先生の指導の素晴らしさについて尋ねたことがあります。私は具体的な指導法を期待していましたが、王さんはこう答えました。
「荒川さんは、いつもボクを気持ちよくグラウンドに送り出してくれました。すごいコーチだったと思います」
選手がコーチに助言を求めるのは、多くの場合、自分のプレーに納得できない時です。試合後、王さんは「荒川道場」と呼ばれた先生の自宅で、バットや日本刀を振り続けました。その際、先生は「よっしゃ!」「いいねぇ!」という言葉を何度も掛け、良いイメージができたところで練習を終えていたそうです。選手を前向きな気持ちにして送り出すことこそ、コーチの役目だと考えていたのでしょう。
もうひとつ付け加えるなら、良いイメージのスイングは、ボールを打たない時に生まれることが多いものです。つまり素振りです。実際にボールを打つと意識がボールに向き、リズムやバランスといった「目に見えないもの」が少しずつ崩れやすくなります。プロでもそうなのですから、アマチュアならなおさらです。
だからこそ、良い感覚でできた素振りを動画に残し、それを自分のバイブルにするのも一つの方法でしょう。
また、一流プロのスイング動画を参考にするなら、まずは年齢や体格が自分に近い選手を選ぶことです。そして、形だけではなく、リズムやバランスといった目に見えない部分にも注目してください。「山下美夢有プロはリズムがいい」「古江彩佳プロはバランスがいい」と感じるポイントを一つずつ取り入れることが、上達への近道です。素振りのように打つ選手の力感を真似するのもいいと思います。
最後に、荒川先生の言葉で締めくくります。「見えるものだけを追っかけてたら、人生、半分は損ぞ!」。氣もまた目には見えませんが、とても大切なものなのです。
■辻村明志
1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも指導。2025年は千田萌花、藤本愛菜をプロテスト合格へ導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフ指導に取り入れている。元ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』934号より抜粋し、加筆・修正しています
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