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藤田寛之の“右腕”が10年ぶり出場で予選通過 生涯獲得賞金42万円の50歳・難波健太朗のシニアデビュー物語

シニアデビュー戦の難波健太朗。これまでの軌跡を振り返る。

所属 ALBA Net編集部
小高 拓 / Hiromu Odaka

配信日時:2023年10月8日 09時49分

<日本プロゴルフシニア選手権 3日目◇7日◇サミットゴルフクラブ(茨城県)◇7023ヤード・パー72>

ゴルフ界においては世界的に50歳以上が参加を許されるフィールド、それがシニアツアーである。レギュラーツアー時代に活躍した往年の選手の“第二の舞台”という一方、レギュラー時代は無名だった選手が脚光を浴びることができる舞台でもある。多くのプロゴルファーは40代に入るとシニアツアーを目標にするが、今大会で“夢”のでシニアデビューを飾ったのが難波健太朗、50歳だ。

飯島宏明は決意の2ミリカット【写真】

2012年のレギュラーツアー「とおとうみ浜松オープン」以来、11年ぶりにトーナメントの舞台に立った。初日「73」で回ると、2日目は「72」でまとめてトータル1オーバー、42位タイで見事に決勝ラウンドに進出。上位進出を目指した3日目は「81」と崩して60位タイに後退した。

インから出た10番からパー、パー、バーディと順調な滑り出しを見せたが、左ドッグレッグの13番パー4で「ティショットを左の崖に落としてしまってダボ。次のホールも林に入れてダボ、次はショートパットを外してボギー…」。メジャーセッティング、決勝ラウンドの厳しいピン位置もあって、悪い流れを止められなかった。「アンダーで回りたかったんですけどね」と肩を落とすが、その表情からは少しばかりの充実感もある。

専修大学出身の難波は、2001年にプロ転向。04年の「日本プロゴルフ選手権」でツアーデビュー。しかし、厳しい戦いの場でなかなか芽が出ない。35歳の頃、「40歳までにシードを取りたい」と大学の3学年上でレギュラーツアー通算18勝の藤田寛之の門をたたいた。

当時の藤田は最も勢いに乗っている時期。同じフェードヒッターだが「自分とは全然違った」。藤田の教えを地道に取り組むと、ミニツアーや地区オープンで優勝をすることも増えたが、レギュラーツアーで活躍するまでには至らなかった。「(藤田の教えは)完全にはつかんでいなかった。もともと40歳までと思っていた」と39歳でツアー撤退の決意を固めた。

レギュラーツアー最後の試合となったとおとうみ浜松オープンでは、初日16位タイで発進するなど好感触。「少し前にやっとつかんだんです。でもやめると決めていたので…」。藤田の教えをつかみかけていたが、後ろ髪ひかれる思いで第二の人生を歩み始めた。レギュラーツアーは10年で12試合に出場し、生涯獲得賞金は42万円余りの戦績しか残せなかった。

もともと個人でレッスン活動を行っていたが、藤田の縁で「ヤマハジュニアゴルフスクール」の立ち上げに携わり、今はヘッドコーチを務める。また、藤田がオーナーを務める「BKコーポレーション」の社員として、藤田の右腕となりさまざまな事業に従事。競技といえば年に1回、地元の「静岡県プロゴルフ選手権」に出場するだけだった。

50歳が近づいてくると“シニア”の世界が輝いて見える。「50歳になったら少しでもいいから出たい」と今季の出場権をかけた予選会を受験して67位。通常のトーナメントは20位前後までの選手しか出場できないが、メジャーの今大会は120名と出場人数が多く下位の順位まで出番が回ってくる。難波は「2週間ほど前におりてきた」と、ひそかに準備を進めてきた。

藤田の教えを今は「つかめている」が、「再現性はないです。年とともに体がついてこない(笑)」と予選ラウンドは藤田譲りのステディなゴルフを見せたが、決勝ラウンドに入ると「少し力が入ると曲がりますよね」と苦笑いを浮かべる。

トーナメント仕様に作られたゴルフ場は「やっぱり雰囲気が違います。いつ味わってもいいですよね。ずっとこの場でプレーできたら最高だと思います」。10年ぶりのトーナメント会場で同級生のみならず先輩たちと顔を合わせる。「ちょっとでも見かけたら最敬礼。50歳にしてルーキーなので、こういうのもシニアならではですよね」と笑う。

予選を通過して久しぶりにSNSに投稿すると「すごい数のコメントが来ました。ずっと応援してくれている方なので、恩返しというか、喜んでもらえるのもうれしい」と目を細める。最終日は「しっかり修正してアンダーパー、60台を出したい」と気持ちを切り替えた。

10年ぶりのトーナメント。「やっぱりプロゴルファーである以上、夢の場。夢でもあり、自分の職場ですね。やっぱり試合に出たいという思いは強いです」。もちろん来年の出場権をかけた予選会にも出場する。「いつか藤田さんと同じ組でプレーしたいです」と50歳の新人はうれしそうに目標を話した。(文・小高拓)

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