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前年より60ヤード短縮 “時代に逆行”したコースが選手にもたらした“恩恵”は?【現地記者コラム】

先週の国内女子ツアーは、距離が前年よりも短くなった。それがもたらした効果は?

所属 ALBA Net編集部
間宮 輝憲 / Terunori Mamiya

配信日時:2025年8月20日 15時00分

池からほど近い地点からグリーンを狙った最終日の18番。コース全体としても昨年よりも60ヤード短縮されたコースで選手が感じたことは?
池からほど近い地点からグリーンを狙った最終日の18番。コース全体としても昨年よりも60ヤード短縮されたコースで選手が感じたことは? (撮影:福田文平)

柏原明日架が6年ぶりの優勝を手にした先週の国内女子ツアー「NEC軽井沢72ゴルフ」は、年々、飛距離が伸び、パワーゴルフ化が続くプロトーナメントにおいて、コースの総距離が昨年の6685ヤードから6625ヤードに変更されていた。実に60ヤードも短くなったことになる。

〈連続写真〉6年ぶりV 柏原明日架が軽井沢で260ヤード超えを連発できた理由は?

あくまでも“平均”と前置きするが、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)によると、パー72の大会の平均総距離は2014年の6486ヤードから、昨年が6585ヤードと、ここ10年で実に“99ヤード”も延びている。その流れを汲むと、“時代に逆行する”と言ってもいい。では、これが選手たちに何をもたらしたのか?

ここまでのシーズンで行われた全21戦を見ると、最も総距離が短かったのは「ヨネックスレディス」の6339ヤード。それ以外にも、軽井沢より短いコースはもちろん多いし、昨年の平均飛距離よりも長い。だが15ヤード短くなった2番や(555ヤード→540ヤード)、10ヤードの差があった13番(545ヤード→535ヤード)といったパー5など、18ホール中5ホールで距離が5~20ヤード短くなった。7番パー4は410ヤードから390ヤードと、負担が軽減されることになった。

もちろん、ゴルフは上がってなんぼ。必ずしも“距離が短い=飛ばし屋が有利”とはならないのが面白い部分でもあるが、高地で普段よりも飛距離が伸びること、フェアウェイ、グリーンともに地面がやわらかく、ティショットであまりランが期待できない状況だったことも踏まえ、青木瀬令奈のキャディ兼コーチを務める大西翔太氏は、試合前に「圧倒的に飛ばし屋、キャリーが出る選手が有利」とも話していた。実際、優勝した柏原は計測ホールで3日間平均262.833ヤード(全体3位)を誇った。

ただ、選手たちはよりメリハリのあるマネジメントを意識することができたのも事実だったようで、距離が短くなったコースでは、今季苦しんできた、“飛距離を武器にしない選手”の活躍も目立った。

そのひとりが尾関彩美悠。プロ1年目の22年に初優勝を挙げ、その後もシードを守ってきたが、今年は不振が続き、この試合前までメルセデス・ランキング101位と低迷していた。だが、ここで今季初トップ10入りとなる8位タイ。「自信を取り戻すことができました」と久々に笑顔で会場を後にすることができた。

最終日のラウンドを終えた尾関に、距離が短くなったことで“恩恵”を感じたことがあったかと聞いてみると、「ありました」と大きくうなずいた。「ショートアイアンで勝負できる試合というのが、ここ最近はあまりなかった。今週はショートアイアンが冴えてくれたのも良かったんです」。そう言ってニコリと笑ったのが印象的だ。

尾関のキャディバッグを覗くと、14本のクラブのうち4本をUTが占めている。これは今季のドライビングディスタンスが235.75ヤード(63位)と「飛ばないほう」を自認するなか施している“距離対策”でもある。ただ、「アイアンで勝負できるとチャンスも多くなる。UTだと守りのゴルフになってしまうので、その差は大きいですよね。ずっとUTを握るのはプレッシャーも続きますし」というのも本音。“適性距離”で勝負できるのは、やはりメリットになる。

この他、最終日こそ「74」と落とし40位タイに終わったものの、この試合前の出場20試合で16試合の予選落ちと、こちらも不調にあえいでいた吉本ひかるも、初日を7位で飛び出すなど復調の兆しをつかんだ選手。今回、コースの距離を前年よりも短くした意図としては、お盆休みのトーナメントだったこともありバーディ合戦への期待が込められていたというが、伸ばし合いにも臆せず立ち向かえた。

以前、女子ツアーのコースセッティングを担当する中野晶から、「いろいろな特色を持ったコースに合ったセッティングで、選手たちに力をつけていって欲しい」というのが協会の考えの根底にあるという話を聞いた。“特色”を見極め、“戦略”につなげる対応力を選手に求めているというわけだ。そして、それを個々のレベルアップにつなげて欲しいというのが願い。前述した選手の声も加味すると、長いシーズンにおけるバリエーションのひとつとして機能していた。

ただ、最終日の18番ホール(385ヤード)はティイングエリアが30ヤード前方に出されていたのだが、個人的には、ここは選手とコースとの、より“がっぷり四つ”の勝負が見たかった、とも感じた。このホールはグリーン左に池が待ち構え、さらに最終日は池サイドの左にピンが切られている。だが、ティを前方に出すことでティショットがその池近くまで飛び、スリルはやや控え目なようにも感じた。優勝した柏原と、2位に終わったルーキーの寺岡沙弥香は、ここを1打差でプレー。もちろん過剰な演出をする必要はないが、コース特性の妙で手に汗を握る場面が生まれるのも、またゴルフの醍醐味だ。その絶妙な塩梅を今後も楽しみたい。(文・間宮輝憲)

【国内女子ツアー・今季ここまでの大会と総ヤード】※すべてパー72
6610ヤード:ダイキンオーキッドレディス(琉球GC)
6668ヤード:Vポイント×SMBCレディス(紫C すみれC)
6538ヤード:アクサレディス(UMK CC)
6475ヤード:ヤマハレディースオープン葛城(葛城GC 山名C)
6585ヤード:富士フイルム・スタジオアリス女子オープン(石坂GC)
6565ヤード:KKT杯バンテリンレディス(熊本空港CC)
6751ヤード:パナソニックオープンレディース(浜野GC)
6675ヤード:ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ(茨城GC 東C)
6489ヤード:Sky RKBレディス(福岡雷山GC)
6642ヤード:ブリヂストンレディスオープン(中京GC 石野C)
6585ヤード:リゾートトラスト レディス(グランディ鳴門GC36) 
6339ヤード:ヨネックスレディス(ヨネックスCC)
6558ヤード:宮里藍 サントリーレディス(六甲国際GC)
6594ヤード:ニチレイレディス(袖ヶ浦CC・新袖C)
6688ヤード:アース・モンダミンカップ(カメリアヒルズCC)
6766ヤード:資生堂・JAL レディス(戸塚CC 西C) 
6688ヤード:ミネベアミツミ レディス 北海道新聞カップ(真駒内CC空沼C)
6642ヤード:明治安田レディス(仙台クラシックGC)
6503ヤード:大東建託・いい部屋ネットレディス(ザ・クイーンズヒルGC)
6642ヤード:北海道meijiカップ(札幌国際CC島松C)
6625ヤード:NEC軽井沢72(軽井沢72GC北C)

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