2024年でツアーから撤退した上田桃子や今年プロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花が在籍している「チーム辻村」を率いるプロコーチの辻村明志氏。2024年にクローズスタンスでアプローチを打つマスターズの名手たちを直で見て、驚きを隠せなかったという。
2024年マスターズを観戦したときに気付いたことがあります。そこで優勝したスコッティ・シェフラーを筆頭に、PGAで多くの選手がやっているのが、クローズスタンスのアプローチでした。マスターズの練習ラウンドでは、松山英樹プロと久常涼プロに付きました。久常プロが真剣な表情で質問し、松山プロが伝授していたのも、このアプローチだったと思われます。
これは23年に配信された『ALBA TV』で中島啓太プロが『松山英樹直伝のアプローチ』と題して紹介した打ち方でもありました。ボクも観てはいましたが、正直に告白すれば半信半疑でした。
ところが24年にマスターズに行ってみると、ほとんどの選手がこの打ち方なのです。さらに正直に告白すれば、ボクが習ったアプローチとはまったくの正反対。オープンに構えボールは真ん中、高く上げたければ少し左寄りに置き、カットに入れてフェース面を斜めに長く使って、高さとサイドスピンでボールを止める、というのが教科書的な教えでした。
しかし、クローズスタンスで、ボールはセンターから、ときにはやや右寄り、さらに左足体重で。繰り返しますが、ボクの習ったゴルフとは何から何まで、まったくの正反対なのです。後頭部をハンマーで殴られたような衝撃もありました。
確かにボールを真ん中に置き、左足体重で「最初から当てておく」という打ち方が昔からなかったわけではありません。ただ、その場合、ロフトが立って低く出るピッチ&ランでした。しかし、マスターズで名手たちがやっていた打ち方は、ボールを体の真正面に置いて、ロフト通りの高さできれいなタテ回転のスピンを効かせて止める、という方法です。
フェースに球を乗せてスピンをかける打ち方ができない左足下がりや、平坦なライでも硬いグリーンや下りのグリーンでボールを止めたいときに使っていました。マスターズに限らず、高速で傾斜の強いグリーンが当たり前、思い通りに止める高い技術が求められるのでしょう。ちなみにタイガー・ウッズも昔から左足下がりではクローズスタンスで打っています。
クローズスタンスの方が左に壁ができてシャローに振れる。結果、フェースに球を乗せて打てるメリットが生まれます。オープンスタンスでダウンブローに入れると、距離感が合わないデメリットがあります。状況によっては、右足を左足の半分まで後ろに引き、ほぼ左足1本で立って打つ選手もいました。
最後に「アプローチは遊びで覚えろ」と、昔からいわれたものですが、マスターたちは練習ラウンドでいろんな状況からいろんなボールを打ちます。それだけ複雑な状況も多く、引き出しが求められているのだと思います。
この辺はアマチュアのみなさんも、ボール位置や重心位置を変え、またヘッドのいろんな入れ方を試しながら、どんなボールが出るかを確認するのも楽しいでしょう。その一歩として半足クローズを試してみてください。チャックリの悩みは、確実に消えるはずです。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。2025年は千田萌花と藤本愛菜をプロテスト合格に導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』894号より抜粋し、加筆・修正しています
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