PGAツアーで多くの勝利に貢献した『Spider』がリニューアル
2008年の登場以来、パターの定番モデルとして定着し、多くのプロが信頼を寄せるシリーズがテーラーメイドの『Spider』だ。米国男子ツアーの2026年シーズンにおいても、すでに6つの勝利に貢献している。
『Spider 』シリーズの使用者は、今季の海外男子メジャー「マスターズ」で連覇を達成したローリー・マキロイを筆頭に、世界ランク1位のスコッティ・シェフラー、昨季のフェデックスカップ年間王者に輝いたトミー・フリートウッドなど、ゴルフ界を代表するビッグネームがズラリと並ぶ。多くのトッププロに選ばれ、勝利という結果を残してきたことが、『Spider』のパターとしての性能の高さを証明している。
テーラーメイドはそんな『Spider』シリーズを2026年モデルに刷新。ヘッド仕上げを風合いのあるブラウンカラーの「トーチドPVD」に変更。定番モデルである『Spider TOUR』、『Spider TOUR X』のヘッド形状を残しつつ、今回新たに『Spider TOUR V』と『Spider TOUR F』をラインナップに追加した。
新しい『Spider』シリーズは、どのような進化を遂げたのか。東京都神田にあるインドアゴルフサロン「PUTTSALON TOKYO」のヘッドコーチを務める小出遼に解説してもらった。
構えやすさと安定したコロがりで“ラインに乗せる”打ち方に合う
『Spider TOUR TORCHED』シリーズのパターには大きく3つの特徴がある。
1つ目はストロークの「安定性」だ。
『Spider』のヘッドは、比重の異なる複数の素材を組み合わせる「マルチマテリアル構造」を採用。中心部を軽く、周辺部に重量を配分することで慣性モーメントを高め、ストローク中のヘッド軌道が安定し、狙い通りのラインにボールを打ち出しやすくなっている。
2つ目はボールの「直進性」だ。
『Spider』のフェースには、テーラーメイド独自の『PURE ROLL™』インサートが搭載されている。下方向に45度の角度を付けた溝を配置することで、ボールに強い順回転がかかり、直進安定性が向上。狙った方向に対して伸びるようなコロがりが得られ、距離感の正確なコントロールが可能となる。
3つ目は狙い通りのラインに構え、打ち出せる「方向性」だ。
『Spider』シリーズのヘッド形状は、独自のデザインでターゲットに対する構えやすさにこだわって設計されている。『Spider TOUR』や『Spider TOUR X』に搭載される「トゥルーパスアライメント」は、目標に正しくセットできることに加えて、ボールの芯を捉えやすくなる効果もある。デザインも機能の一部になっているのだ。
小出は『Spider』の持つ3つの特徴が、現代のパッティング技術にマッチしていると分析する。
「今、PGAツアーの選手のストロークを見ると、強くヒットするよりも“ラインに乗せていく”打ち方が主流になっています。ラインを厚めに読み、ジャストタッチから30センチオーバーの強さで打つことで、3パットを防ぎながらカップイン率を高めているのです。『Spider』はヘッド挙動が安定し、勝手に順回転のコロがりになってくれるので、ラインに乗せる打ち方と相性が抜群です。だからこそ、世界のトッププロたちが『Spider』を信頼し、愛用するのでしょう」(小出)
最新シリーズはフィッティング性の高さが魅力
新たに2つのヘッド形状が加わった新『Spider』。小出は、「パターを選ぶ上でまず大切になるのは、自分に合うヘッドを見つけることです。『Spider』は重心位置や慣性モーメントの異なる4種類のヘッドがあり、ネックバリエーションも豊富に用意されています。
『Spider TOUR』や『Spider TOUR X』など、従来からある形状はヘッド後方にウェイトが配置され、深重心かつ高慣性モーメントに設計されていた。一方、新たにラインナップに加わった『Spider TOUR V』と『Spider TOUR F』はフェース寄りにウェイトを配置することで、『Spider』らしい安定感を持ちながら、操作性を強調した性能に調整されている。
「重心が深いから必ずしもやさしいとは言い切れず、ゴルファーによって相性の良い重心位置は異なります。ブレード型のように重心がフェース寄りにあった方がスムーズにストロークできる人もいますので、『Spider TOUR V』や『Spider TOUR F』のような選択肢が増えたのは非常にありがたいですね。今まで『Spider』を使ったことのない人にとっても、最新シリーズは移行しやすいものになっています」(小出)
ちなみに自分に合う重心位置のヘッドを見極めるには、「バックスイングの引きやすさ」をチェックするのがおすすめです。スムーズにヘッドを引けるものはラウンド中、プレッシャーがかかる場面でも、自信を持ってストロークできる。一方、合わない重心位置だと、テークバックでヘッドが揺れたりと動きが悪くなる。自分に合うヘッドを決めた上で、最適なネック形状を選べば、パッティングの質は間違いなく向上する。
アマチュア2名が「パターテスト」 『Spider』に替えるだけでPGA選手並みの数値が出た!
最新『Spider』の性能を検証するため、とある実験を行った。それは「PUTTSALON TOKYO」で導入している最新ARパッティングシステム「TOURPUTT(ツアーパット)」を使用した「パターテスト」だ。
「TOURPUTT」では、1〜2メートルの距離で上り・下り・スライス・フックをさまざまに組み合わせたラインをランダムに16回打つことで、個人のパッティングスキルを数値化する「パターテスト」を行うことができる。今回は2人のアマチュアゴルファーに、マイパターと『Spider』で「パターテスト」を行い、数値の変化をチェックした。
テストに協力してくれたのは、藤井亮さんと小野紀美さんだ。
まずは藤井さんが「パターテスト」に挑戦。ステンレス削り出しのセミマレット型で、ベンドネックのマイパターでは、カップインの「成功率」が「62.5%」とまずまずの結果だった。
「短い距離は合わせて打つと絶対に入らないので、薄く読んで強く打つようにしています。ただ、ショットの持ち球がスライス系なこともあって、フックラインがすごく立ちにくいです。特に2メートルの大きく曲がるフックが難しく感じました」(藤井さん)
「PGAプロの1.8メートルのパットの成功率が約70%ですので、62.5%は決して悪い数字ではありません。実際、ラインを薄く読んで強めのタッチで打つという傾向は一貫していました。ただ、外れた場合の『平均リターン距離』が『64センチ』と長めでした。潜在的に3パットのリスクが高いと言えるでしょう。また、正しいラインよりも左に打ち出す傾向がありますので、引っかけにくいネックを選ぶことでラインに乗せやすくなるはずです」(小出)
続いて、使用するパターを『Spider』に持ち替えてテスト。小出のアドバイスを受けながら藤井さんがチョイスしたのは、新しいヘッド形状の『Spider TOUR V(クランクネック)』だった。
『Spider TOUR V』を使う藤井さんは、先ほどまでの強気なタッチが嘘のようにジャストタッチの回数が増え、苦手意識のあったフックラインも克服。成功率は「87.5%」まで大幅な上昇を見せた。
「『Spider』はコロがりが良いので、自然に柔らかいタッチでカップを狙うようになりました。狙ったラインに構えやすいですし、ヘッドの重みで勝手に動く感覚があって、すごく楽。今、使っているのが小さめのヘッドなので、『Spider TOUR V』のサイズ感だと違和感なく移行できそうです。あれだけイヤだったフックラインも自信を持って狙えましたし、これはコースで使ったら間違いなくスコアアップできそうです」(藤井さん)
「まるで別人のようなパッティングになりましたね。今までよりもジャストタッチが増え、しかもカップイン率が向上したのは『Spider』の性能の賜物でしょう。勝手に強いコロがりになるのでパチンと打つ必要がありませんし、ヘッド軌道の安定でブレも小さくなります。『平均リターン距離』の『34センチ』はかなり理想に近い数値ですし、このタッチなら長い距離でもしっかりカップに寄せていくことができるでしょう」(小出)
続いて、女性アマチュアの小野さんが「パターテスト」に挑戦。ベンドネックのマレット型パターを使用し、慎重にボールをセットしてカップを狙った小野さんは「平均リターン距離」が「37センチ」と距離感はバッチリ。一方で、カップインの「成功率」は「56.3%」に止まりました。
「オーバーして3パットをするのがすごく嫌で、入らなくてもいいからカップ近くに止まってほしいと考えて打っています。ただ、どうしても引っかけるイメージが出てしまって、狙いよりも左にボールが出てしまうことが多いです」(小野さん)
「小野さんは距離感がすごく良くて、ライン的な得意・不得意のないバランス型です。一方で、正しいラインよりも左に打ち出す傾向が強いことや、ラインを薄く読んで弱めのタッチで打つ傾向が見て取れます。打ち出しを整えて、ラインが合ってくるとカップイン率が上がるはずです」(小出)
続く「パターテスト」で小野さんがチョイスしたのは『Spider TOUR F(クランクネック)』だった。カップ付近にボールが止まる正確な距離感をキープしながら、カップインの成功率が大幅な上昇を見せた。
「しっかりコロがってくれる安心感があるので、すごく集中できました。しっかりしつつも、吸い付くような打感も心地良かったです。私はボールのラインをターゲットに合わせてからパターをセットします。『Spider』はデザイン的にすごく構えやすいので、ボールのライン合わせに慎重にならなくても大丈夫でした。コロがりの良さと方向安定性で、ここまで良い変化が起きるとは驚きです」(小野さん)
「もともとタッチの合っていた小野さんですが、『Spider』に替えてからは、さらにジャストタッチの割合が増えました。それだけイメージ通りの強さで打ちやすくなったということでしょう。ライン読みは先ほどと変わらず薄めでしたが、コロがりの強さで曲がる前にカップインしていました。順回転のコロがりはそれだけでカップイン率を高める効果があります」(小出)
「TOURPUTT」は本来、パッティングスキルを可視化することで課題を明確にし、レッスンに役立てるツールだ。しかし、パッティングは練習だけでなく、使用するパターによって大きな変化が起きる。そして、『Spider』にはゴルファーそれぞれのパッティングスキルを大幅に引き上げ、ストロークの質そのものを高める実戦的な性能が備わっていることが今回の実験によって証明されたと言えるだろう。
“パット・イズ・マネー”という格言が示すように、パターはスコアを決定づける重要なクラブだ。だからこそ、1打に鎬を削るプロたちはパッティングを大事に考え、パター選びに強くこだわる。そんな中で長年に渡って選ばれ続け、結果を残す『Spider』には、パターに必要なあらゆる性能が詰まっていることは間違いない。パターに悩んでいる人も、より向上させたいと願う人も、ぜひ一度『Spider』を手に取ってみることをおすすめする。ストロークそのものが向上するその性能に驚くはずだ。