最終戦「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」だけはコーライグリーンに苦戦したものの、PING契約の佐久間朱莉が今年は飛躍。4月の初優勝から4勝を重ね、最終戦を待たずに年間女王を決める、圧倒的な活躍でシーズンを締めくくった。昨年までのシルバーコレクターを返上した理由に「パッティング」を挙げる。
平均パットが1.7613(4位)に
年間女王を決めた際「(成長できた部分は)パッティングのおかげだと思う。良いストロークができていて、今年はだいぶシビアなパッティングを決めることができた」と話した佐久間。昨年の平均パット数(パーオンホール)は1.7745(11位)だったが、今季は1.7613(4位)に改善した。
また、昨年は平均パット数(1ラウンド当たり)も29.4775(32位)だったが、今季は29.0042(7位)。1ラウンドで0.4打もパッティングでスコア改善を図れれば、全てに効いてくるのは自明。今季は平均パーディ数も3.8987で1位だった。(昨季は3.7027の8位)それに伴い、パー4とパー5の平均スコアの両方で1位に。
メンタル面も充実した。以前は周囲の選手と比較することも多かったが、今季は「今は本当に自分のことに集中して、他人は他人、私は私という精神で戦えるようになった」。4月の「KKT杯バンテリンレディス」で念願のツアー初優勝を挙げ「自分に自信が出て勝てると思ってプレーした」結果、あっという間に計4勝を挙げた。
技術面では「オフに、フェース向きのチェックをするようになって、そこからストロークが良くなってきて、悩みながらのストロークをすることがなくなったのが大きく変わったと思う」と具体的な改善を明かす。そこに大きく影響したのが、PING『スコッツデールDS72』パターだ。➡➡今季の女子ツアーでシリーズ最多勝タイ!PING『スコッツデール』パターが強い理由
スコッツデールでフェース真っすぐ
PINGのプロ担当・塩谷竜太氏は、佐久間の春先から夏にかけての怒涛の勝利に「スコッツデールDS72の影響は大きい」と、昨季との違いを明かす。「以前のDS72はクランクネックでしたが、佐久間プロの『スコッツデール』はダブルベンドにしてオフセットが少なくなり『構えた時に左を向いてる気がしない』となりました。実際、コーチの方がフェース向きを機械で測ってみても、左を向かなくなった経緯があります」(塩谷氏)
また、今年は異常な暑さが長く続いてグリーンコンディションが重くなりがちな所に『スコッツデール』の新しいPEBAXインサートが効果を発揮。「ソフトな打感なのに初速が出て球が伸びる」と性能が完全に合致した結果、佐久間4勝、髙井愛姫、鈴木愛と『スコッツデール』で勝利し、最多勝パターシリーズに。
佐久間自身「打感がすごく好みで、ようやく好みの打感と転がりのパターに出会えました。『すぅーッ』という言葉の通り、思ったよりも前に転がってくれる感じです。『DS72』はとにかくラインに出しやすいイメージが湧いて、アドレス時の安心感と方向性の出しやすさがとても気に入っています」と話す。このパターが年間女王戴冠に最も貢献したと言っても間違いなさそうだ。
ショットはフェードでも、苦手なラインは「スライスライン」。塩谷氏は「苦手なスライスラインを今季こそ克服しようと、アライメントや体の向きなどに気を配ってはいましたが『完全には克服できていない様子』」だと言う。それでも女王戴冠に繋がったのは、グリーンの傾斜をつかむ平衡感覚のため入念なウォーミングアップを徹底したことや、高MOIでミスヒットに強い『スコッツデール』も寄与したよう。
キャリア初の5番アイアン投入でパー3のスコア改善
ショット面の課題については夏以降で「ギアで改善を図った」のが印象的だ。今季はパー4とパー5の平均スコアが1位だが、「AIG女子オープン」での苦戦をきっかけに課題のパー3(約170~175yd)の改善を図った。当初は6Uを作るなどしたが、日本シャフトとPINGのサポートの結果、キャリア初の「5番アイアン」を採用。最終的にパー3平均スコアは30位前後➡22位に改善した。
➡➡佐久間朱莉は『i240』で課題解決、いざ女王へ! コレは他も追随する新トレンド!?
ヘッドはPINGの最新作『i240』で、シャフトは6Uに試したことから好感を持った『N.S.PRO MODUS³ HYBRID G.O.S.T HL』(S)を採用。同時に、たゆまぬ努力で体幹をいじめ抜いてきた結果、自身のヘッドスピードアップから今季は長年使った『N.S.PRO 850GH』(S)を『N.S.PROプロトタイプ』(S)にも変更した。
「自分の中では右に抜ける球が減って(N.S.PROプロトタイプは)しなりが手元寄りな感じがあります。8月末くらい前に替えました。それまで『N.S.PRO 850GH』を使っていましたが、振り遅れる感覚があったんです。自分が振れるようになってきたので、しなりが手元寄りのタイプに替えたことで、右へのミスが減りました」(佐久間)
シャフト変更多々でも成績◎
今季4勝目の「マスターズGCレディース」では、それまで3勝していた日本シャフト『レジオフォーミュラB+』(S55)から『同MB+』へ変更。このように、FWやUTの変更も合わせれば、シーズン当初と全く違うギアに変更しつつも、不動の『スコッツデールDS72』を軸にパフォーマンスを落とさず完走した佐久間。
一昨年の2023年は、ドライビングディスタンスが242.04yd(33位)だったが、今季は250.29yd(10位)でHS43m/s前後にパワーアップもはたしている。この勢いのまま、さらなるスケールアップを図る材料として約2年以上変更していない1Wヘッド『G430 MAX 10K』の存在も気になるところ。
今季は男女ツアーでPING勢の多くの選手が軒並み『G440』シリーズに変更して飛距離アップをはたしているが、佐久間はこの恩恵を受けずに年間女王になった。オフに『スコッツデール』にして覚醒した今季と同様、この冬にどんな強化が図られるのか。今季が終わったばかりだが、来年の春が今から待ち遠しい。
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