国内女子下部のステップ・アップ・ツアーで、2010年からスポンサーを務めてきたBPカストロール株式会社。「カストロールレディース」は、同ツアーを代表する古参大会の一つとして、ツアーの盛り上がりとともに歩んできた。
同社は福嶋浩子をはじめ、昨年の年間女王・佐久間朱莉ら14人のプロゴルファーとスポンサー契約を結んでいる。そんな契約選手たちに、同社の小石孝之名誉会長が常に伝えていることがある。それは、ゴルファーとして結果を残すことだけではない。(取材・構成/齊藤啓介)
■契約選手への向き合い方
カストロールレディースでは、朝の1番スタートホールで行われる選手のスタートアナウンスを、小石氏自らが担当する。今では大会の“風物詩”の一つとなっている。
遊び感覚で始めたというスタートアナウンスだが、スカイAで中継が始まってからも『続けてほしい』とリクエストがあり、現在まで続いている。
特に契約選手のスタートとなれば、小石氏のアナウンスも一層熱を帯びる。倉田珠里亜には「きのう、焼肉はいつもの5分の1に抑えました」と愛のある“いじり”を交え、昨年レギュラーツアーのシードを手放した野澤真央には「あなたの居場所はここではありません」と檄(げき)を飛ばすこともあった。
そこには“チームカストロール”の仲の良さがにじむ。ただ、小石氏が契約選手と向き合う上で最も重視しているのは、成績ではなく“人柄”だ。
「プロアマではお客様と回ってもらうこともあります。そういうホスピタリティができるコミュニケーション能力があるかということ。今は、通信制の高校で、団体生活に加わらないこともあります。あいさつや人柄を一番に見ています」
17年に下部3勝を挙げた野澤との出会いについても、こう振り返る。「最初はすごく人見知りで、とにかく先輩たちに対するあいさつや礼節はしっかりしなさい、と伝えました」。
実際に契約選手たちを取材すると、皆がはきはきと、そして明るく受け答えしてくれたことが印象に残る。小石氏が大切にするあいさつも、ただ言葉を交わせばいいというわけではない。相手の目を見て、しっかりと思いを伝えること。選手である以前に、一人の人間としてどう振る舞うのか。そんな小石氏の思いは、契約選手たちに受け継がれている。
■契約選手に求めるもの
契約選手たちに今大会への意気込みを聞くと、『小石会長に恩返しがしたい』という言葉を口にする選手も多い。もちろん、ホステスプロとして大会で優勝したいと考えるのは自然なことだ。
ただ、小石氏は「プレッシャーをかけなくても、選手自身がすでにかかっているから」と話す。スポンサーとして過度な期待を口にするのではなく、選手が自然体でプレーできることを願っている。
昨年は、契約プロの佐久間が年間女王に輝いた。現時点で海外ツアーへの本格参戦は明言していないものの、海外メジャーには積極的に出場している。そんな佐久間の将来についても、小石氏の考えは明快だ。
「海外に行きたいのであれば行けばいい。日本でやりたいのであれば日本でやればいい」
選手の意思を尊重し、温かく見守る。そんな小石氏の姿勢が、選手たちの『恩返しがしたい』という思いを生んでいるのかもしれない。その一方で、勝負の世界で生きる以上、訪れたチャンスをつかむことの重要性も話す。
「ステップでもレギュラーでも、ここで勝つかもしれないという時期が選手にはある。そこで取らないと、その後、勝てない選手もたくさんいる。チャンスは自分で掴み取らないといけない」
勝負の世界で生きる選手たちには、計り知れないプレッシャーがある。長年、ゴルフの世界を見てきた小石氏は、その厳しさもよく知っている。だからこそ、選手に求めるのは結果だけではない。むしろ、その根底にある人柄を何よりも大切にしている。
