そして、今年のパナソニックオープンでの最終日。11月にUAEで行われるアジアアマでの優勝争いを見据え、決めた。「14回ドライバーを振り切る」というテーマに集中して、冷静さを失わなかった。ただ、プレーオフのバーディパットはさすがに緊張感が伝わってきた。短く息を吐いて打った球は、カップの右に逸れて入らず、ちょっと顔をしかめる。ウィニングパットを決めてもノーアクション。グリーンを降りるときに控えめにガッツポーズ、仲間からウォーターシャワーを浴びてグリーン脇のテントに入ると、やっと感情があふれ出す。バスタオルに顔を埋めて号泣、きっとこれが本来の中島啓太だ。
コースを降りれば、ちょっと涙もろい世界1位。「目標はアジアアマと、来年の海外メジャー。もっともっと強くなりたい」と、また別人のようにきゅっと表情を引き締めた姿は、立派なゴルファーのそれだった。(文・谷口愛純)
