2024年でツアーから撤退した上田桃子や今年プロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花が在籍している「チーム辻村」を率いるプロコーチの辻村明志氏。グリップの基本は両手がケンカしないことだという。その真相を聞いた。
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グリップについては、いろんな考え方があります。フックやウィークといった握りの形について、あるいは『しっかり』とか『緩く』とか握りの強さもあるでしょう。ただボクが考えるグリップの基本は、『右手と左手がケンカしないこと』の一語に尽きます。逆に考えればゴルフが難しいのは、クラブを両手で握り、両手で操作するからなのかもしれません。となるとなおさら、ひとつの手であるかのようなフィット感は理想であり重要です。
フィット感の作り方の前に、ボクは形については「自分に合ったもの」と教えています。フック、スクエア、ウィーク、ロングサム、ショートサム、オーバーラッピング、インターロッキング、10フィンガーなど、どんな握り方にも強い一流プロはいます。となれば、自分に合った形こそが最高のグリップであるということ。ついでに言えば、グリップはそのゴルファーの印象に大きく影響を与えますから、キレイであるに越したことはありません。
ただ、ここで注意したいのが、形ばかりを気にすることで、最も重要な両手のフィット感が失われかねないことです。これは握りの強さにも影響するのですが、形ばかりにとらわれるとより強く握ってしまう傾向にあります。
総じてアマチュアはグリップを強く握りがちですが、強く握れば握るほど道具の重さは感じられません。道具を自在に扱う大前提は、道具の重さを感じることであり、道具の重さを意識すれば、自ずと道具を持つにふさわしい『必要最小限の力』で握るものです。
これは料理に例えれば、分かりやすいでしょう。料理上手な人に比べ、料理が得意でない人は包丁をギュッと握っているものです。上手に切りたいという気負いや、手を切ったらどうしようという不安がそうさせているのだと思います。包丁をクラブに変え、『切る』を『飛ばす』や『打つ』に言い換えれば、そのままゴルフに当てはまります。『グリップは小鳥を潰さないように』という格言がありますが、握りの強さについてはその通りです。両手にフィット感があり、道具の重さを感じられるようになれれば、結果として小鳥を潰さない握りの強さとなるはずです。
その意味では普段からボールを打たなくてもクラブを握り、腰の高さに浮かして重さを感じるクセもつけたいものです。
さて、ボクが指導している選手たちに、よくやらせる練習があります。男性だとボール5個、手の小さな女性やジュニアだとボール4個。これを両手で優しく包むように握り、この状態でシャドースイングをします。
どういう選手にやらせるかといえば、まず手をコネるタイプ。必要以上にフェースローテーションを行い、上手く当たってもチーピン、少し振り遅れれば右プッシュという人も少なくないでしょう。
そうしたタイプは、例外なく右手と左手がケンカしています。両手にフィット感がないからです。一般に右利きの人は、利き手である右手が強いもの。右手の自己主張が強く、それがスイング中の『コネる』という動きにつながっています。
そこでボールを4〜5個握らせるのですが、この状態では強く握れません。グリッププレッシャーが優しくなることに気が付くはずです。優しく握れ!ではありません。優しく握るしかないのです。グリッププレッシャーは握手をするくらいの力加減でいいと思いますが、ちょうどそのくらいの力になっているはずです。
手の中の4〜5個のボールを一直線に並べると、もうひとつ重要なことに気が付きます。それは両手指の第二関節が、ボールと同じように一直線にきれいに並んでいることです。いわゆるこれがきれいに映るグリップで、勝手にきれいになり、美しい握り方はゴルファーの好印象にもつながります。
それはさておき、この状態をキープしたまま振ることで、左右の手のフィット感とともに、両手がケンカしないスイングが作れます。右手が強い人は、どうしても右手の中にあるボールが内側に動いてしまいます。目に見える、『コネる』という動きです。
ボクは「束ねたパスタが折れないように振りなさい!」と、選手に教えることがあります。実際に袋入りのパスタの乾麺を買ってきて、それを握らせて振らせることもあります。もう説明する必要もないでしょうが、これも右手と左手がケンカせず、手と手首に『余計な動きをさせない』ための練習です。グリップで重要なのは握る形や力よりも左右のフィット感、道具の重さを感じることに加え、この『余計な動きをしない』ことも付け加えておきましょう。
ボールの代わりに、例えばノートを体の真正面で両手で挟み、それでアドレスをしてみましょう。すると体のセンターに軸が生まれることが理解できます。このようにボールを打たなくても、上達する練習はたくさんあることも一緒に覚えておいてください。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。2025年は千田萌花と藤本愛菜をプロテスト合格に導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』897号より抜粋し、加筆・修正しています
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