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第3回/ジャンプアップの危険性(床反力打法の弊害)

元日本プロゴルフ協会A級ティーチングプロ、現在アメリカの日本食レストランチェーンCEO。異色の経歴を持つTOSHI HIRATAが30年のレッスン経験の集大成を語る。超DEEPな骨太スイング論をアメリカからお届け!

配信日時:2017年2月20日 12時30分

08年の全米オープン、左ヒザの痛みに顔をしかめるタイガー(撮影・村上航)
08年の全米オープン、左ヒザの痛みに顔をしかめるタイガー(撮影・村上航)

タイガーの左ヒザはジャンプアップで壊れた

08年のタイガー・ウッズのドライバー連続写真(撮影・村上航)
身体が捻転されるため、頭の位置は下がる
シッティングダウンと呼ばれる沈み込む動きとともに切り返していく
切り返し初期では沈み込み、クラブが腰の位置からジャンプアップが始まる
インパクトから振り抜きで左ヒザを上方に引き伸ばす。結果、高速回転に
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08年のタイガー・ウッズのドライバー連続写真(撮影・村上航)
 Hi! TOSHI HIRATAです。前回【爪先立ちジャンプアップ】は間違いなく飛ぶ! しかも、腕力がなくても飛ばせるとメリットをお伝えしました。しかし、それは前にも述べた通り「劇薬」でもあるのです。今回は、ジャンプアップの危険性についてお伝えしていきたいと思います。

 ジャンプアップをスイングに採り入れた際、一番危険な場所は腰、そして左ヒザです。身体が柔らかく、体重も軽いジュニアプレーヤーと皆さんは違います。いや、そのジュニアプレーヤーでさえ危険ではないとは言い切れません。

 タイガー・ウッズが、左ヒザの手術を何度も受けているのはご存知ですよね? 皆さんの脳裏に刻まれたのは、彼の最後のメジャー優勝(14勝目)である、08年の全米オープンでしょう。ロッコ・メディエイトとの19ホールものプレーオフでは、ドライバーを打つ度に顔をしかめ、歩行も困難だったほど。試合を終えたあと、タイガーはシーズン2度めの左ヒザの手術を余儀なくされ、その後の08年のシーズンを棒に振ったのです。

 そう、いま彼が抱えている腰や背中の怪我よりもっと前から左ヒザに何度もメスを入れているんですね。そして、私はこうなることを十数年前から予測していて、当時ゴルフチャンネルでも再々発言してきました。もちろん、私の意見など彼の耳に入るはずもありません。ですから、私の息子のクリスにはジャンプアップを早い段階で治す努力を続けてきたのです。

ジャンプアップすると、プッシュアウトしやすい

右手のフリップを巧みに使うビジェイ・シン(写真・Getty Images)

右手のフリップを巧みに使うビジェイ・シン(写真・Getty Images)

 ジャンプアップのもう一つの欠点として、アキュラシー(方向性)に問題があると再三再四述べました。この理由ですが、ジャンプアップをすれば当然アドレスよりも高い位置に腕が通ります。つまり、ハンドアップ(クラブと腕の角度の差がなくなること)でインパクトを迎えてしまうのですが、これではナチュラルなフェースローテーションが困難になります。

 通常はプッシュアウトになりますが、こういったプレーヤーはリストのローテーション、若しくは右手リストのフリップ(インパクトで右手を手のヒラ側に折ること)でこれを防ぎます。ドライバーではタイミングさえつかめばそれほど問題はありませんが、アイアンに於いてはスクエアなインパクトが望めません。

 では、ジャスティン・トーマスやレキシー・トンプソンはどう対処しているのでしょうか?

 彼らはショートアイアンになるとジャンプアップはほとんど見せません。また、フルショットを必要としない傾斜面や悪いライでも見事に足の動き、特に右足カカトの蹴りを抑えてきます。つまり、クラブや状況によってスイングを最適に変えてくるわけです。そして、少しでも遠くへ飛ばしたいロングアイアンやドライバーになると、またジャンプアップが復活してくるわけです。

 皆さんはこんなに複雑なことは出来ませんよね? いや、プロでもこの動きは複雑すぎるのです。調子の波が激しくなる恐れさえあります。では、ここでのポイントである【なぜ、右足の動きを抑える必要があるのか?】それを皆さんも理解しなければ先に進めません。

曲げないためには右足カカトの動きを抑えるべき?

正確性を求める場合は右足カカトをベタ足にするレキシー・トンプソン(撮影・福田文平)

正確性を求める場合は右足カカトをベタ足にするレキシー・トンプソン(撮影・福田文平)

 右足は蹴った方がいいのか、それともベタ足の方がいいのか?

 実際、ティーチングプロでも大いに意見の別れるところです。ただ昨今は右足の動きを抑えるレッスンが大勢を占めていますね。

 では、そのベタ足の利点から検証していきましょう! 右足カカトの動きはスイングプレーンに影響します。スイングロボットは大地にどっしりと根を下ろして全く動きません。もしその土台が簡単に動いてしまうなら、ロボットといえどもボールコントロールがままならぬことは想像に難くないです。人間はロボットと同じはないのですが、この右足カカトを蹴り上げてしまうことにより、腰と肩のプレーンが歪んでしまうのです。もちろん、それに伴いシャフトプレーンを大きく外れ、プレーンアウトしてしまうのは言うまでもありません。

 スイングに於いて、プレーンとは大まかに分けて、【シャフトのプレーン】【腕のプレーン】、そして【肩と腰のプレーン】があります。肩と腰はほぼ連動しているので、ここでは同じと考えて差し支えありません。右足を蹴らずにインパクトまでカカトの蹴りを抑えることは、スイングプレーンの安定に欠かせないものなのです。ですから多くのティーチングプロは、アキュラシー(方向性)重視の右足の蹴りを抑えるレッスンを採り入れたがります。

 つまり、飛距離とアキュラシーを両立させることは、非常に難しいと思われてきたわけですね。以前のティーチングプロ時代の私も含めて。そして現実にドラコンチャンピオンのスイングは、ツアープロのそれとはかけ離れている。でも、私はこれから、その難しい両立を可能にできるレッスンを行っていきます。

 その理論の解明には少々時間が掛かった(といっても30年……)が、これから少しずつ話して行こうと思います。この理論を発表する前に、同様のことをティーチングプロたちが言及しているか調べてみました。すでに理論展開がされているのかいないのか。そこで見つけた何人かのティーチングプロのジャンプアップについての解説は、私のそれと一致する部分もある。ただし、ジャンプアップをどの様な方法で採り入れ、それぞれのスイングに最適化するかは解説されていないし、処方箋までは出されていなかったのです。私の結論は最終的に「逆転の発想」でこれを解決します。その逆転の発想とは……。SEE YOU SOON!

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