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「落ちるところまで落ちた」隆盛極めた20代…31歳になった鈴木愛が抱いていた“葛藤”  後輩たちに届けたい“次なる目標”

ツアー通算21勝目を挙げた鈴木愛。永久シードへの熱意を改めて語った。

所属 ALBA Net編集部
高木 彩音 / Ayane Takagi

配信日時:2025年9月1日 09時49分

ツアー21勝目を挙げた鈴木愛。目標の永久シードへ突き進む
ツアー21勝目を挙げた鈴木愛。目標の永久シードへ突き進む (撮影:佐々木啓)

<ニトリレディス 最終日◇31日◇北海道カントリークラブ 大沼コース(北海道)◇6955ヤード・パー73>

2019年大会覇者の鈴木愛が、13位で迎えた最終日にボギーなしの5バーディで「68」をマークし3打差を逆転。トータル12アンダーで今季初優勝、ツアー通算21勝目を飾った。優勝会見の席に現れると報道陣からの大きな拍手を浴び、満面の笑みを見せる。

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この勝利は昨年の「Vポイント×ENEOS」で年間2勝目を挙げて以来。そこからも「KKT杯バンテリンレディス」、「フジサンケイレディス」などで優勝争いを演じていたが、なかなか花を咲かすことはできなかった。「昨年は早々に優勝して、そこからチャンスもありましたけど、一番悔しかったのはエリエール。毎年勝てなくて、エリエールで勝てていれば気持ちよく今シーズンを迎えられたと思うんですけど…」。

徳島県出身の鈴木にとって、同じ四国の愛媛県で行われる「大王製紙エリエールレディス」は特別な大会のひとつ。プロとして初出場した2014年の2位を含め同順位の成績を6回残しており、優勝への想いも強まる一方だ。ただ、昨年も2位で悲願成就はならず。それでも「今シーズンに入ってからはすごくモチベーション高くできてましたし、ゴルフに対してもいつも以上に自分に期待している部分もあった」と、すっかり気持ちは切り替わっていた。

31歳を迎えた今年の誕生日(5月9日)翌日にはトレーニングの量を増やしていることを話していた。「年齢を重ねてきてトレーニングも若い時以上にやらないとついていけなくなってきている。そのぶん、ケアなども増やさないといけない。周りの子に追いつかなくなってきている部分もあります」。年齢を重ねるたびに感じている心の内を打ち明けていたが、そこからもトレーニングは続けている。

成長への意欲も高まり、「練習にもすごく打ち込めていた」と心境の変化も明かす。ただ、「量に関してはあまり多くなかった。質は良かったけど。練習量が足りてないなって、周りから言われて確かにそうだなって思って」と“量より質”のスタイルになっていることに気づいた。そこで質の高い練習の量を増やしたという。

「いいところに行っても、勝てそうな気があまりしなくて。いいゴルフは最終日の前日まではしているんですけど、その夜になると、あした行ける気がしないっていうのがあって…。『練習量足りないよ』って言われて今までだったら、『いや足りてるわ』って思っていたんですけど、今は『確かに足りてないよな…』って、素直に受け止められるぐらい自分でも足りていないって思ったんです」

そんな“指摘”を、首位と3打差で最終日を迎えるも勝てなかった今年6月の「アース・モンダミンカップ」で受けた。これまでは練習ラウンドを1日行うと、プロアマ戦に参加して本戦を迎えるスタイルだったが、いまは「練習ラウンドが2日間あるうち2日行ったり」と準備の時間を増やした。「それからちょうど2カ月ぐらい。すぐに結果が出るとも思っていなかったですし、『ようやく勝ててよかった…』っていう気持ちが大きい。でも思ったよりも早く結果は出たなって思っています」と新しいスタイルが導いた優勝でもあった。

昨年の優勝は3月で、5月に30歳を迎えた。今回の勝利は30代として初めてのもの。「20代はすごく突っ走ってきた10年だった。初優勝から10年で20勝は、なかなかあげられないと思う。自分の中でもすごく10年間いろいろありました」としみじみ語る。

「10年で20勝して30代からなかなか勝てないのは、やっぱり自分的にも嫌。スポンサーさんによく迷惑をかけているので、やっぱり恩返ししたいなっていうのはありましたし、『そろそろ優勝、そろそろ優勝…』というのはいろんな方から言われていました。なかなか結果に結びつかないことは多かったので…。いいゴルフをしようっていうことを心がけたので、最終的に優勝につながったかなと思います」

メジャー大会「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」(名称は当時)で初優勝したのは20歳だった2014年。そこから勝利を積み上げ、17年、19年には賞金女王にも輝いた。ただ最近は20代のころと比べて、「年々優勝するのって難しいと思うようになりました。『何を考えて最終日に挑んでたんだろう』とか、『最終日はどうやってゴルフをやっていたんだろう』というのも、自分の中で思い出せないくらい」と苦しむ時間も増えていた。

「コロナ禍に入ってから、自分のイメージが全て悪くなってしまっていた。それまでは正直落ちるところまで落ちると思っていなかったし、ずっと良い状態をキープできていた。優勝もたくさんできる気はずっとしていたので、20年から23年くらいがすごく自分の中で苦しいシーズンでしたね。本当に落ちるところまで落ちた。体的にも気持ち的にもすごく落ちた3年間だった」

それでも「そこより下に行くことはないだろう」と思いながら戦い、これまでの成功、辛い経験から「今はすごくポジティブにできています」と内面の変化があった。

「いろんな人に『ネガティブじゃなくて、ポジティブな言葉を発したほうがいいよ』って言われていた。意外とすごいネガティブなんですよ。なのでラウンド中とか、『ダメだもう追いつかない…』ってすぐ諦めちゃうんですけど、『ポジティブに』考えるようになったと思いますし、先週は最終日にひどいゴルフではあったんですけど、それでも最後まで“怒らず諦めず”に、最後の1打までできたのはすごく成長できた1日だったと思う。残りのシーズンまだたくさんあるし、残りの試合にかけようという思いで、毎週切り替えて、うまく次の週に臨めてはいると思います」

20代で通算20勝を挙げ、30代に突入し、永久シード獲得となる通算30勝に向けて1歩踏み出した。「不動さんから永久シードの選手が出ていないですし、なかなか永久シードを取れるところまでいく選手が少なくなってきているのかなと思う。“不動さんの次に自分が…”という思いもありますし、下の子たちがまたそこ(永久シード)を目指してくれるような選手になりたいなと思うので、(通算)30勝を目標にやって、その目標を達成できたら、また、いい選手がどんどんそこを目指してやってくれると思う。自分がまず最初に30勝に行けたらなと思っています」。

世界の舞台への挑戦意欲が増す選手が増え、今季は13人の日本勢が米国女子ツアーを主戦場にしている。そのなかでも鈴木は「永久シード」という国内ツアーでの“快挙達成”を狙う姿勢はブレない。鈴木のような信念を貫く姿勢は、後輩たちにとって大きな刺激となるはずだ。(文・高木彩音)

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