2024年でツアーから撤退した上田桃子や25年プロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花が在籍している「チーム辻村」を率いるプロコーチの辻村明志氏。今回はスコアメイクに直結するパッティングのコツについて聞いた。
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ゴルフ界を生き抜こうという若い女子プロにとって、特にパットの技術は命綱になることは間違いありません。もっとも若い選手に共通しているのは、昔の選手と比べるとパッティングが上手いことです。上手いというより、悩みがないと言った方が適切かもしれません。ならばそんなに練習しなくても、と思う方もいるでしょう。しかし、感覚的に上手に打っている選手も、やがて思うようにコロがらない、入らないと悩む日が訪れます。時に年齢や知識、経験が増えれば、その悩みが生まれ、深刻になりがちなのがゴルフだからです。その悩みを克服するには、戻るべき基本がなければなりません。では、その基本とはどんなものでしょうか?
深刻な悩みの究極はイップスです。イップスはいうまでもなく心理的な要因によって、体が思うように動かず、思い通りのプレーができない症状です。
ざっくりと体と書きましたが、思うように動かないのは筋肉です。ゴルフ歴を重ねるごとに増える失敗の経験などから、脳が発する不安などの負のメッセージは筋肉へと伝達されます。ショートパットで手が震えるなどのイップスの症状は、あくまでも筋肉の反応です。
ところが同じ体であっても、脳からの負の信号に反応しない部位があります。それは骨であり、関節です。ちなみに関節には記憶センサーがありますが、筋肉にはそれがないそうです。筋肉で打とうとすれば、当然、毎回違う動きとなり、それが悩みとなってイップスの種になるのです。ならば記憶センサーのある関節にいい動きを覚え込ませ、成功体験を増やし続けることが重要です。骨である関節の記憶センサーが要因です。これを「コツ(骨)」と呼ぶことは、師匠である故・荒川博先生から教わりました。
さて、なかなかパットが上達しない人は、小手先やヘッドの動きばかりに意識が集中しています。小手先は人間の体の中で最も器用ですが、逆に言えば最も脳の信号に反応しやすい筋肉でもあります。パットは小手先ではなく、「骨で打つ」ものなのです。
まずはその第一歩として、意識を小さな筋肉から大きな筋肉へと変えます。というのも、関節を意識しろと言っても数が多すぎて難しいからです。
そこで具体的には体幹などの大きな筋肉を意識させます。そのために、ロングパットの練習を数多く取り組むことが大事になります。ロングパットは必然的に小手先ではなく、大きな筋肉で打つようになるからです。ロングパットの練習は、距離感とリズムが良くなることにもつながります。パットの名手とは、1日のラウンドをいい距離感とリズムで打ち続けられる人のことです。
次のステップとして意識させるのが、両肩とヘッドを結ぶ二等辺三角形です。具体的にはアドレスでできたこの二等辺三角形を、崩さないように打ちます。
チームではボクが開発した練習器具(ボディローテーションMAX)を両ワキに挟んだ状態で打たせます。クラブを両ワキに挟んでもOK。鈴木愛プロがよく行っているドリルですね。究極は手元の意識をなくすことです。これを練習すれば、小手先が敏感に反応してパンチが入る・緩む動きが激減します。
さて、皆さんはヘッドの重さを感じて打っているでしょうか。小手先やヘッドの動きを意識するばかり、ヘッドの重さを見失っている人の多いこと。道具を自在に操るのはその重さを知っているからであり、重さは関節が記憶するものです。普段からパターを握り、ヘッドを浮かせてその重さを感じてください。さらにヘッドにボールをコツンコツンと当て、耳元で芯に当たる音を聞いてください。
パッティングでは、ボールを打たなくても上達する方法は山ほどあります。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。2025年は千田萌花と藤本愛菜をプロテスト合格に導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』913号より抜粋し、加筆・修正しています
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